気管支内軟骨破裂の症例

 こんな症例、初めて読みました。まだまだ勉強が足りないと思っていたら、外傷性以外では世界で初めての報告のようです。これを機に頭に入れておきたいですね。

Dasa O, et al.
Endobronchial Cartilage Rupture: A Rare Cause of Lobar Collapse.
Case Rep Pulmonol. 2016;2016:8178129.


 気管支内軟骨破裂(Endobronchial cartilage rupture)は、まれな事象であり、重症の気腫肺がある患者が突然の呼吸困難感を訴える。われわれは突然の呼吸困難感を主訴に救急受診した62歳の男性の事例を報告する。胸部レントゲン写真では、肺の過膨張がみられた。胸部CTでは中葉が虚脱していた。気管支鏡を実施すると、中葉が無気肺になっており、気管支内に軟骨が破裂脱落していた。咳嗽によって惹起されたものと推察された。

※論文中に気管支内に突出した軟骨の写真があります。気管支鏡を普段扱う医師は、是非ご覧いただきたいと思います。


# by otowelt | 2016-08-25 00:23 | 気管支鏡

好酸球数が少ないCOPD患者は肺炎リスクが高い?

e0156318_1633480.jpg GSKの援助を受けた研究ですが、COPD+ICS→肺炎リスクという知見に一石を投じる内容です。

Ian D Pavord, et al.
Blood eosinophil count and pneumonia risk in patients with chronic obstructive pulmonary disease: a patient-level meta-analysis
Lancet Respiratory Medicine, 2016 in press.

背景:
 吸入ステロイド薬(ICS)はCOPDにおける重要なマネジメントであるが、中等症~重症COPD患者では肺炎のリスクを上昇させる。血中好酸球数比率が2%以上の患者では、2%以下の患者よりもICSへの反応性が良好であるため、血中好酸球数がCOPD患者の肺炎リスクに影響を与えるかもしれない。このpost-hocメタアナリシスにおいて、われわれは血中好酸球数比率2%の閾値が、肺炎リスクの異なる患者をICS治療の有無にかかわらず同定することができるかどうか調べた。

方法:
 GSK社の試験レジストリから、COPD患者のランダム化二重盲検試験を抽出した。適格試験は、ICSアーム(フルチカゾンプロピオン酸/サルメテロールあるいはフルチカゾンフランカルボン酸/ビランテロール)およびコントロール群(フルチカゾン非吸入)が設定され、ランダム化前と少なくとも24週間後の血中好酸球数データが観察されているものとした。血清好酸球数比率(白血球数の2%未満vs 2%以上)によって層別化し、肺炎イベントを有した患者数をデータとして記録した(ICS使用の有無は問わない)。

結果:
 1998年~2011年に10試験が登録された。血中好酸球数データが得られたCOPD患者10861人が対象となった。4043人はベースラインの好酸球比率が2%未満で、6818人は2%以上だった。血清好酸球比率が2%未満の患者のうち149人(3.7%)が1回以上の肺炎イベントを、2%以上の患者のうち215人(3.2%)が1回以上の肺炎イベントを起こした(ハザード比1.31; 95%信頼区間1.06–1.62)。ICS治療を受けていない患者では、血清好酸球比率が2%未満の患者のうち40人(3.8%)が肺炎イベントを、2%以上の患者のうち48人(2.4%)が肺炎イベントを有していた(ハザード比1.53; 95%信頼区間1.01–2.31)。ICS治療を受けていた患者では、それぞれ4.5%、3.9%であったが統計学的な有意差はなかった(ハザード比1.25、95%信頼区間0.98-1.60)。

結論:
 血中好酸球比率2%を閾値に設定すると、COPD患者で好酸球数が少ない患者は、好酸球数が多い患者よりも肺炎リスクが高かった。このリスク上昇は統計学的に小さなものであるが、さらなる前向き研究で検討すべき知見である。


# by otowelt | 2016-08-24 00:59 | 気管支喘息・COPD

特発性NSIP患者の膠原病発症は予測困難

e0156318_16214955.jpg 目の前のNSIP患者さんが、将来膠原病を発症する“肺病変先行型”の症例なのかどうか予測する方法があればよいですね。

Kono M, et al.
Nonspecific interstitial pneumonia preceding diagnosis of collagen vascular disease.
Respir Med. 2016 Aug;117:40-7.


背景:
 この研究の目的は、NSIPと診断された患者がその後膠原病を発症する頻度と臨床的特徴を調べることである。

方法:
 外科的肺生検によってNSIPと診断された72人の患者を連続して登録した後ろ向き研究である(特発性NSIP:35人、膠原病関連NSIP:37人)。特発性NSIP診断後6ヶ月以内にACR基準を満たした患者はいなかった。

結果:
 特発性NSIPと診断された35人のうち、6人(17.1%)の患者がフォローアップ期間(5.5±5.0年)の間に膠原病を発症した。そのうち、3人が皮膚筋炎、2人がオーバーラップ症候群、1人が関節リウマチであった。膠原病診断までの平均期間は2年(6ヶ月~3.5年)だった。膠原病診断前NSIP同定患者、特発性NSIP患者、膠原病関連NSIP患者における臨床的特徴と生存期間には有意な差はなかった。加えて、初期診断時、膠原病診断前NSIP同定患者と特発性NSIP患者の間にIPAF (interstitial pneumonia with autoimmune features)のような基準を満たす頻度に差はみられなかった。

結論:
 特発性NSIP患者において膠原病の発症を予測することは困難であり注意深く観察する必要がある。


# by otowelt | 2016-08-23 00:39 | びまん性肺疾患

AVICA試験:小児喘息に対するアセトアミノフェンはイブプロフェンよりリスクは高くない

e0156318_10194314.jpg ようやく決着がつきましたか。

William J. Sheehan, et al.
Acetaminophen versus Ibuprofen in Young Children with Mild Persistent Asthma
N Engl J Med 2016; 375:619-630


背景
 小児において、アセトアミノフェン使用と喘息関連合併症との関連が報告されており、喘息小児にはアセトアミノフェンの使用を控えるようすすめる医師もいる。しかし、この関連を評価するための妥当なデザインの臨床試験はない。

方法:
 多施設共同前向きランダム化二重盲検並行群間試験において、軽症持続型喘息の小児300人(12~59ヶ月)を登録し、48週間、発熱時あるいは疼痛時にアセトアミノフェンを頓用する群と、イブプロフェンを頓用する群にランダムに割り付けた。プライマリアウトカムは、全身ステロイド投与の必要性がある喘息発作の回数とした。両群とも、同時に実施された関連試験で用いられた標準的長期管理薬を投与された。

結果:
 試験薬の投与回数は中央値5.5 回(IQR1.0-15.0)で、群間差は観察されなかった(P=0.47)。1人あたりの発作回数にも群差はなく、46週フォローアップ期間中、アセトアミノフェン群では平均0.81回、イブプロフェン群では平均0.87回だった(アセトアミノフェン群のイブプロフェン群に対する発作相対的比率0.94、95%信頼区間0.69-1.28、P=0.67)。喘息発作が1回以上みられた割合はアセトアミノフェン群49%、イブプロフェン群47%で、2回以上認められた割合はそれぞれ21%、24%だった。同様に、アセトアミノフェン群とイブプロフェン群で、喘息がコントロールされていた日数の割合(それぞれ85.8%、86.8%、P=0.50)、アルブテロール(サルブタモール)の発作時吸入(1週あたりそれぞれ2.8回、3.0回、P=0.69)、予定外の受診・入院(1人あたりそれぞれ0.75回、0.76回、P=0.94)、有害事象に有意差はなかった。

結論:
 軽症持続型喘息の小児において、アセトアミノフェンはイブプロフェンと比較して、喘息発作の発現率が高くなることとやコントロール不良との関連はなかった。


# by otowelt | 2016-08-22 00:08 | 気管支喘息・COPD

出版のお知らせ:あなたも名医!成人吸入薬のすべて 世は吸入薬戦国時代!

 2016年8月25日に「あなたも名医!成人吸入薬のすべて 世は吸入薬戦国時代! (jmed45)」を日本医事新報社から出版します。厳密には、これは書籍ではなく雑誌に区分されるようです。
 同じ日本医事新報社からは「気管支喘息バイブル」という書籍をすでに発売していますが、一部内容が重複している(せざるをえない)部分があるので、ご了承ください。とはいえ、COPDやインフルエンザの吸入薬も含まれており、そこまで重複したという印象はありません。
 また、本書では吸入薬をスコアリングしています。独断と偏見に基づくスコアリングであり、決してそれが全ての医療従事者・患者さんに受け入れられる見識ではないことをご了承いただきますようお願い申し上げます。
 ところどころに吸入戦国武将が登場し、研修医の猿飛医師と指導医の真田医師の会話をみて分かる通り、やや真田丸を意識した仕上がりです(笑)。
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(それぞれアドエア、スピリーバレスピマットの武将)

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発売日 : 2016年8月25日
単行本 : 176ページ
価格 : 3,500円 (税別)
出版社 : 日本医事新報社
著者 : 倉原 優 (国立病院機構近畿中央胸部疾患センター内科)

e0156318_13141310.jpgAmazonから予約/購入する (入荷がやや遅いかも)

e0156318_13141310.jpg日本医事新報社から購入する

 ―――私は,吸入薬のことが好きです。

 こんなフレーズを読むと,可憐な乙女の告白シーン(?)を想像するかもしれませんが,残念ながらこの本を書いているのは30代半ばのやさぐれた呼吸器内科医です。私が初期研修医時代にその使い方を患者さんから「教わる」ほど吸入薬について無知だったことが,逆に吸入薬に興味を持つきっかけとなったように思います。当時の私にとって,吸入薬を使って治療する喘息やCOPDは,未開拓のまぶしい世界に映ったのでした。そしていつしか,その有効性だけでなく,開発経緯や吸入法,ひいてはデザインにまで興味を持つようになりました。

 吸入薬は国によって採用している薬剤に違いがあり,海外の英語のガイドラインを読んでも,その種類を知ったり,使い方を習得したりすることはできません。また,同じ薬剤であっても海外では商品名が微妙に異なっていて,国を超えて呼吸器内科医同士がワイワイと吸入薬について語り合うこともなかなか難しいのです。そして,吸入薬はその種類の多さから,多くの日本のプライマリケア医から「難しい」 と敬遠されています。そんなことを知ってか知らずか,発売される吸入薬の数はどんどん増えています。

 ―――世は吸入薬戦国時代。吸入薬の世界は, 今まさに戦国時代の様相を呈しているのです。この本を持って,あまたの吸入薬が火花を散らす乱世へ飛び込んでみましょう!

 執筆に当たり,数年前に「吸入薬戦国時代」という天啓を私に授けて下さった公益財団法人結核予防会複十字病院呼吸器内科の大藤 貴先生に感謝します。


# by otowelt | 2016-08-18 00:56 | その他