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癌患者さんに余命を伝えるべきか

しばしばブログの主旨から逸脱するが、これは臨床医として一生悩むであろう命題である。

●余命の推定
 呼吸器内科医として余命の質問をされるのは、肺癌の患者さんからがほとんどであり、残りは一部の難治性疾患(特発性肺線維症やリンパ脈管筋腫症)である。
 経験上、癌患者さん本人よりも第一親等にあたる家族さんからの質問が多い。しかしながら、医師にとってこの質問に答えるのは非常に難しい。理由はきわめて単純で、「予想が難しい」からである。よくテレビドラマで「もってあと2年です」など告知するシーンがあるが、ああいった予想はおそらく癌の病期(ステージ)に基づいた数値と主治医の経験を組み合わせた発言だと思われる。ただ、医師は患者さん本人への配慮から余命を長めに伝えがちとも言われており、現状としては正確な余命はほとんど患者さんに伝えられていない。
 診断期・治療期の段階での余命推定は難しく、終末期・死前期になるほど余命推定がしやすいのは臨床医すべてに実感のあるところだろう。そのため、終末期の予後推定には客観的スケールが存在する。

●終末期の余命推定の客観的評価
 終末期には予後を推定するスコアがあるため、それを用いて伝えることが多い(もちろん個々の患者さんの状態に即して総合判断となるが)。具体的には、Palliative Prognostic Score (PPS)やPalliative Prognostic Index (PPI)である。いずれもPerformance Scaleを用いる。

・Palliative Prognostic Score (PPS)
 臨床的な予後の予測という項目があるため、主観的評価になりやすいのがデメリット。

・Kernofsky Performance Scale
 100 正常、臨床症状なし
 90  軽度の臨床症状があるが、正常の活動が可能
 80  かなり臨床症状があるが、努力して正常の活動が可能
 70  自分自身の世話は可能だが、正常の活動・労働はできない
 60  自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要
 50  病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要
 40  動けず、適切な医療および看護が必要
 30  全く動けず、入院が必要だが士は差し迫っていない
 20  非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要
 10  死期が切迫している
 0   死亡

・Palliative Prognostic Index (PPI)
 合計得点が6より大きい場合、患者が3週間以内に死亡する確率は感度80%、特異度85%、陽性反応適中度71%、陰性反応適中度90%である。


・Palliative Performance Scale

 上述したように1人の医師による予後推定は長くなってしまう可能性があるため、複数の医師とともに客観的指標に基づいて予後推定を行うのことが望ましいとされている。しかしながら、この予後推定はあくまで”推定”であり、患者さん個々の事例には当てはまらないことも少なくない。ゆえに、当該患者さんについて一番詳しい主治医の主観的評価に依存するところが大きいのが現実である。

●余命告知をすべきかどうか
 「癌に罹患したときに、患者本人やその家族にとって、予後を理解するということは非常に大切なことであり、特に癌が進行し、その後の治療をどのようにおこなっていくか、また療養する場所の選択についての、患者やその家族の意思決定過程の際に必要不可欠な要素となる。残された時間の使い方、家族などの大切な人たちとの過ごし方について考えることも含め、気持ちの準備をするためにも必要な情報である。
 上記の文面は『精神腫瘍学クイックリファレンス』(小川朝生・内富庸介編集、創造出版)の”予後の評価”という項で述べられている文章を一部抜粋したものである。癌患者さんにとって予後を知ることは非常に重要なのだが、それを知るべきかどうかという命題については言及していない。
 2007年の論文で興味深い報告があるが、余命について医師から具体的に教えてほしい患者さんは全体の40%、聞きたくない患者さんは10~20%と言われている。すなわち、患者さんの全員が余命の告知を希望しているわけではない(Sanjo M, et al.Ann Oncol 18(9):1539-1547, 2007)。一般的に、年齢が高くなるほど予後告知の希望は減少するとされている(滝沢昭利ら.臨床泌尿器科2004;58(2):137-141.)が、いきなり告知をされてパニックや急性ストレス障害に陥る患者さんもいる(宮森正.JIM 2011;(9):730-735.)。
 日本の文化が、余命推定だけでなく癌告知そのものを是としてこなかった歴史を孕むため、こういった風潮はまだ根強い。そのため、いわゆる”お茶を濁す”ことで言及を避ける手法がとられていることもある。すなわち、診断・治療期には具体的な余命の言及を避け、終末期・死前期に「あと数日かもしれません」と具体的な言及をする。
 余命についてのbad news tellingだけでなく、医療従事者として何が”できる”か、というポジティブな説明をすることが患者さんの不安を軽減できるとも考えられている(Morita T, et al. Ann Oncol 2004;15:1551–1557.)ため、症状や苦しみを取ることができるという情報を積極的に与えることで余命告知の精神的ダメージをある程度軽減できる可能性はある。
 ただ実際の現場では、余命まで伝えるかどうかはきわめて繊細な判断であるため、客観的な指標があってどれだけ推定が可能になろうとも、それを伝えるか否かは主治医の裁量に任される。余命告知をすべきかどうかという命題には、EBMやデータからは答えは出せない。余命告知をしたことで、生命保険の前借りが可能となり夫婦でヨーロッパへ旅行することができた患者さんもおられたし、余命告知をしたことで希望を失ってしまった患者さんもおられた。どのような理由で告知するにせよ、余命の告知は患者さんの人生あり方を左右する重い言葉であることを私たち臨床医は肝に銘じておかねばならない。

# by otowelt | 2012-05-29 12:58 | 肺癌・その他腫瘍 | Trackback | Comments(0)

進行認知症患者に対する胃瘻は利益がないだけでなく褥瘡リスクを高める

 胃瘻を作る理由に自信を持って答えられない状況ならば、私は「とりあえず」という理由で患者さんに胃瘻をすすめることはない。逆に、明確な理由があれば胃瘻は作ってもよいと思う。
 胃瘻を作るのは簡単かもしれないが、それは患者さんや家族の人生にとって極めて重い決断であることを医療従事者は認識すべきである。

Joan M. Teno, et al.
Feeding Tubes and the Prevention or Healing of Pressure Ulcers
Arch Intern Med. 2012;172(9):697-701


背景:
 進行性の認知症患者に対して、経管栄養によって褥瘡を改善できるかどうかのエビデンスは乏しい。percutaneous endoscopic gastrostomy (PEG)が介護施設に入院している進行認知機能障害advanced cognitive impairment (ACI)患者の褥瘡の予防や治癒に効果があるのかどうか、国内のデータを用いて評価をおこなった。

方法:
 進行認知症患者を対象に、介護施設ケアのアセスメントツールであるMinimum Data Set(MDS)データとメディケア受給者の請求情報を利用し、胃瘻による経管栄養の褥瘡管理における利益とリスクを評価した。
 入院して胃瘻栄養療法を受けた患者と、入院したが胃瘻チューブを挿入しなかった患者の褥瘡の状態を比較。施設入所者は、MDS認知機能のレベルCognitive Performance Scale 6(最重症)になった段階で当該コホートに組み入れ、その後1年以内に1回以上入院した患者18021人を分析の対象にした。胃瘻チューブの挿入を受けた患者1人あたり、コントロールとしてpropensity-scoreがマッチする胃瘻チューブ未挿入患者を3人まで選択した。propensity-scoreはロジスティック回帰モデルを用いて計算した。
 アウトカムは、褥瘡がなかった患者にstage 2以上の褥瘡が現れることと、褥瘡のある患者の褥瘡の改善とした。

結果:
 Cognitive Performance Scale 6に到達した進行認知症患者でこのスタディに組み込まれた患者は、合計18021人であった。そのうち入院時に褥瘡がなく、胃瘻チューブを挿入された患者は1124人(6.2%)であった。コントロール(非褥瘡非胃瘻患者)は2082人選ばれた。両群のベースラインの健康状態やリスク因子に差はなかった。また、30日死亡率にも差はなかった。初回MDS評価の時点でstage 2以上の新規褥瘡の割合は、胃瘻挿入群35.6%、非挿入群19.8%で、挿入群のORは2.27(95%CI1.95-2.65)だった。stage 4の褥瘡の発生については、OR 3.21(95% CI 2.14-4.89)で有意差がみられた。
 入院時に褥瘡があった上に、胃瘻を挿入された患者は461人(2.6%)で、コントロール群として754人が選ばれた。両群のベースライン患者特性には有意差はなかった。初回MDS評価時に、既存の褥瘡に改善があった患者の割合は、挿入群27.1%、非挿入群34.6%で、挿入群の褥瘡改善のORは0.70(95% CI, 0.55-0.89)であった。

結論:
 胃瘻チューブ挿入による栄養療法は、進行認知症患者の褥瘡リスクを高める可能性がある。

# by otowelt | 2012-05-28 17:41 | 内科一般 | Trackback | Comments(0)

アスピリン100mg/日の内服により静脈血栓塞栓症の再発リスクが低下

分野を問わず、内科医にとっては重要な論文だろう。

Cecilia Becattini, et al.
Aspirin for Preventing the Recurrence of Venous Thromboembolism
N Engl J Med 2012; 366:1959-1967


背景:
 明らかな誘因がないと考えられる静脈血栓塞栓症患者のおよそ20%は、ビタミンK拮抗薬による経口抗凝固療法を中止そた後2年以内に再発することが多い。抗凝固療法を延長することで再発は予防されるとされているが、出血リスクが増加する。現時点では、静脈血栓塞栓症の再発予防におけるアスピリンの利益は明らかでない。われわれは、the Warfarin and Aspirin (WARFASA)試験をおこなうことで、静脈血栓塞栓症再発リスクの軽減と安全性の評価をおこなった。

方法:
 WARFASA試験は、多施設共同研究者主導型ランダム化プラセボ対照二重盲検試験である。明らかな誘因のない静脈血栓塞栓症をはじめて発症し6~18ヶ月間の経口抗凝固療法(ビタミンK拮抗薬をINR2.0~3.0になるよう治療)を終了した18歳以上の患者を、アスピリン100mg/日群と、プラセボ群にランダムに割り付け、2年間投与した。試験治療は延長可能とした。プライマリアウトカムは静脈血栓塞栓症の再発で、安全性アウトカムは重大な出血で検証した。ヘモグロビン2.0g/dl以上の低下や全血あるいは赤血球輸血を要した患者についても出血の定義に組み入れた。

結果:
 2004年5月から2010年8月までの間、合計403人の患者がアスピリン群とプラセボ群に割りつけられた。静脈血栓塞栓症が再発した患者は、アスピリン群205人中28人で、プラセボ群197人中43人であった(6.6% vs. 11.2% per year; hazard ratio, 0.58; 95% CI, 0.36 to 0.93) (median study period, 24.6 months)。

 治療期間中央値23.9ヶ月の間、アスピリン群23人、プラセボ群39人で再発がみられた(5.9% vs. 11.0% per year; hazard ratio, 0.55; 95% CI, 0.33 to 0.92)。各群1人に重大な出血がみられた(アスピリン群:bowel angiodysplasia、プラセボ群:胃潰瘍)が、有害事象は群間差はなかった。死亡はアスピリン群(1.4% per year)、プラセボ群(1.3% per year)ともに同等であった。

limitations:
 ・当初予定していたよりも試験期間が長くなってしまった(6年)
 ・虚血性心疾患や脳血管疾患に対するアスピリン効果を検証するにはunderpowered
 ・症状のある動脈硬化症患者は除外されていること

結論:
 抗凝固療法を中止した明らかな誘因のない静脈血栓塞栓症患者に対する1日1回のアスピリン投与によって、静脈血栓塞栓症再発のリスクは低下した。


# by otowelt | 2012-05-28 12:44 | 内科一般 | Trackback | Comments(0)

イレッサ高等裁判所判決について

 分子標的薬は現在の癌治療に欠かせない薬剤ではあるが、イレッサの問題は根深い。
 ゲフィチニブ(イレッサ)の副作用をめぐって、2011年2月に大阪地裁はアストラゼネカに「製造物責任法上の指示・警告上の欠陥」があったとして,同社に対し賠償責任を認めた。
 大阪地裁の言い渡しを不服とした同社は控訴し、大阪高裁での争いとなった。
 しかし2012年5月25日、大阪高裁は大阪地裁の判決を取り消し原告団の請求を棄却した。アストラゼネカ社に対し「間質性肺炎に関する注意喚起について欠陥はない」との判決を下した。また,国に対しても責任を認めなかった。なお東京高裁においても2011年11月に患者遺族らの請求を棄却し「国と企業に全く責任ない」との判決を言い渡している。

●イレッサ訴訟、大阪も原告全面敗訴…高裁判決(読売新聞:)
http://osaka.yomiuri.co.jp/e-news/20120526-OYO1T00231.htm?from=top
 肺がん治療薬「イレッサ」(一般名・ゲフィチニブ)服用後に副作用の間質性肺炎で死亡した患者の遺族ら11人が、国と輸入販売元の製薬会社「アストラゼネカ」(大阪市)に計約1億円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁は25日、ア社のみに賠償を命じた1審・大阪地裁判決を取り消し、原告側の請求を全面的に退けた。原告側は「副作用の注意喚起が不十分だった」と主張したが、渡辺安一裁判長は「注意喚起に関する添付文書の記載に欠陥はなかった」と述べた。
 イレッサの副作用を巡る訴訟では東京高裁に続く2例目の高裁判断で、いずれも国とア社の責任を否定した。東京訴訟の原告側は上告しており、大阪訴訟の原告側も上告する方針。
 大阪訴訟の原告は、死亡した患者3人の遺族計10人と、同肺炎を発症した男性。
 判決で渡辺裁判長は、イレッサの有効性・有用性を認めたうえで、臨床試験段階で副作用として報告された同肺炎の死亡例11件のうち、服用との因果関係が比較的明確なのは1件だったとし、「従来の抗がん剤より副作用が重篤だと予測するのは困難だった」と述べた。
 その上で争点とされた「ア社がイレッサ販売開始時の添付文書で同肺炎を『重大な副作用』欄の4番目に記載したことが注意喚起の方法として適切だったか」について、「肺がん治療医が読めば同肺炎が死亡につながる可能性を認識できる」と指摘し、問題はなかったとの判断を示した。
 輸入・販売を承認した国についても、イレッサ自体に問題がない以上、責任はないと結論付けた。
 昨年2月の大阪地裁判決は、添付文書で同肺炎の記載位置に問題があったとし、ア社に対し、原告のうち9人に計約6000万円を賠償するよう命じていた。(2012年5月26日 読売新聞)

●イレッサ訴訟原告「結論ありきの内容」 逆転敗訴判決に怒り(日本経済新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG25057_V20C12A5CR8000/?at=DGXZZO0195583008122009000000
 25日のイレッサ訴訟の大阪高裁判決後、原告側は記者会見し、原告で唯一の患者、清水英喜さん(56)は「『起きてしまったものは仕方がない』と言っているようにしか聞こえない」と声を荒らげた。
 判決の瞬間は失望のあまり脱力したといい、「イレッサに何も問題がないというなら、亡くなった人々の苦しみは(副作用被害をなくすための)教訓にならない」と怒りをあらわにした。
 原告側弁護団の永井弘二弁護士は、判決について「副作用発生の要因を医療現場に押しつけるもの。結論ありきの内容だ」と批判。支援者らは判決直後に開いた報告集会で「最高裁に向けてもう一度がんばろう」と上告の決意を表明した。
 アストラゼネカの代理人弁護士は同日、別の会見で「我々の主張が受け入れられ、公正で妥当な判決」と評価した。「今後の新薬開発の現場で不必要な萎縮効果が出ることを避けられた」と語った。(2012年5月26日 日本経済新聞)

●イレッサ訴訟:原告側が逆転敗訴 大阪高裁判決(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/news/20120525k0000e040271000c.html
 肺がん治療薬「イレッサ」に重大な副作用の危険があるのを知りながら適切な対応を怠ったとして、遺族や患者ら11人が国と輸入販売元のアストラゼネカ(大阪市)に賠償を求めた訴訟で、大阪高裁は25日、ア社に賠償を命じた1審・大阪地裁判決を取り消し、原告逆転敗訴を言い渡した。渡辺安一裁判長は「イレッサには有用性があり、副作用の警告方法にも欠陥はない」と述べた。原告側は上告する。同種訴訟の東京高裁判決も原告の請求を退けており、高裁段階ではいずれも原告側が全面敗訴した。
 イレッサは02年7月の輸入販売承認後、間質性肺炎を発症する患者が多発し、遺族らは東京、大阪両地裁に提訴した。訴訟では、承認当時の初版添付文書(医師向け説明文書)の副作用に関する記載は適切だったか▽輸入販売を承認した国に違法性はなかったか−−が主な争点となった。(2012年5月25日 毎日新聞)

# by otowelt | 2012-05-27 20:55 | 呼吸器その他 | Trackback | Comments(4)

COPDの呼吸困難に対して鍼治療が有効

 先週からかなり議論を呼んでいるが、サンフランシスコのATSの速報ばかり気になって読めていなかった論文。メジャー医学雑誌であるArch Intern Medに掲載された。もっと大規模であれば説得力があるのだが、なぜ68人しか登録できなかったのだろうか。
 科学者の目でこの論文を読むと、鍼の医学的メカニズムについての記載が不足していると思うが、非常に興味深い。

Masao Suzuki, et al.
A Randomized, Placebo-Controlled Trial of Acupuncture in Patients With Chronic Obstructive Pulmonary Disease (COPD)The COPD-Acupuncture Trial (CAT)
Arch Intern Med. 2012;online first:1-9. doi:10.1001/archinternmed.2012.1233


背景:
 労作時呼吸困難(DOE)は、COPDにおける主症状であり、コントロールは難しい。このスタディは標準治療を受けているCOPD患者に対して鍼治療がプラセボに上回るかどうか検証したものである。

方法:
 2006年7月1日から2009年3月31日までの間、68人の関西COPD患者が標準治療に鍼治療を加える群(鍼治療群)と標準治療にプラセボ(偽鍼)鍼治療を加える群にランダムに割り付けられた(それぞれ34人ずつ)。1週間に1度の鍼治療を受けるように両群とも設定され、12週間継続された。プライマリエンドポイントは、6分間歩行試験後の改訂Borgスケールである。
 偽鍼は、実際には背中の皮膚を通したあと鍼をtelescopedしたものである(いわゆる浅い鍼で非経穴部への鍼ではない)。また、治療者が本物の鍼かプラセボの鍼かが分かった上で治療を行っている。

結果:
 12週間後、6分間歩行試験後のBorgスケールは有意に鍼治療群において改善がみられた(mean [SD] difference from baseline by analysis of covariance, −3.6 [1.9] vs 0.4 [1.2]; mean difference between groups by analysis of covariance, −3.58; 95% CI, −4.27 to −2.90)。COPD患者で鍼治療を受けた患者は6分間歩行距離の改善も確認された。
 QOLについては、SGRQが鍼治療群で-16U減少(Jonesらの4pointsを上回るCOPD.2005;2(1):75-79.)。
 BMIと血清プレアルブミンが測定されたが、12週間の鍼治療期間後では、BMIとプレアルブミンはともにプラセボ群と比較して鍼治療群では有意に改善が確認された。呼吸機能検査においても差がみられた。

呼吸困難を軽減させるメカニズム:
 COPDにおける労作時の呼吸困難は筋疲労などが関与しているが、潜在的に虚血性が関与している可能性がある。Kawakitaらは、鍼治療が筋肉の電気的活性を抑制することを報告しており(Kawakita K, et al.Experimental model of trigger points using eccentric exercise. J Musculoskeletal Pain. 2008;16:29-35.)、筋緊張度を軽減することが今回の結果につながった可能性がある。

limitatsion:
 ・試験期間が短い。アウトカムを評価するには早い可能性がある。
 ・すでに治療を受けているCOPD患者を対象にしたことから、鍼治療のみによる改善効果とは言い切れない。
 ・治療者が本当の意味でmaskされていたのかどうか、確実性はない(治療者が本物の鍼かプラセボの鍼かが分かった上で治療を行っているため)。

結論:
 このスタディにより、COPD患者における呼吸困難感の改善に針治療が有用であることが示された。

# by otowelt | 2012-05-26 09:53 | 喘息・COPD | Trackback | Comments(0)

ATS 2012:顕微鏡的多発血管炎の肺合併症として気管支拡張症が多いかもしれない




気になるポスターから。

H. Tashiro, et al
An Analysis Of Pulmonary Manifestations In 45 Patients With Microscopic Polyangitis
ATS 2012, poster session


背景:
 顕微鏡的多発血管炎 (MPA)は、まれな全身性疾患である。間質性肺炎やびまん性肺胞出血などは頻度の高い肺合併症である。われわれは、MPAの肺合併症の予後への影響を明らかにするためレトロスペクティブ試験をおこなった。

方法:
 佐賀大学病院に2004年から2011年に入院したMPA患者の診療録をレトロスペクティブに検索した。

結果:
 MPA45人のうち、19人が男性、26人が女性だった。年齢中央値は69.8歳であった。HRCTで最もよくみられた所見は、interstitial pneumonia [IP]が20人, びまん性肺胞出血が4人,気管支拡張症が8人、炎症性瘢痕が3人であった。10人は肺合併症が同定できなかった。45人中42人がステロイド、シクロホスファミド、シクロスポリンAを含む免疫抑制剤を投与されていた。12人(26.7%)が死亡したが、IPやびまん性肺胞出血による呼吸不全で3人が死亡、感染症で2人が死亡。7人がMPA以外の疾患で死亡した。

結論:
 過去に報告したように(Takahashi et. al. Lung 2005)、気管支拡張症はMPAの主たる肺合併症である。MPAのアウトカムは過去の報告よりも良好であり、診断治療の改善に起因しているかもしれない。IPやびまん性肺胞出血は重要な治療戦略であると示唆される。

# by otowelt | 2012-05-26 08:55 | びまん性肺疾患 | Trackback | Comments(0)

ATS 2012:BAEに関する患者特性




ポスターで興味深かったもの。

A. Adlakha, et al.
Long-Term Outcome Of Bronchial Artery Embolisation (BAE) For Massive Haemoptysis
ATS 2012, poster sesssion


背景:
 多量の血痰に対する気管支動脈塞栓術(BAE)は、短期~中期的には低い失敗率で潜在的に生命予後を良くするものである。われわれは、BAEを要した患者特性を調べ、長期的な治療成功と再BAEを要するリスクなどを調べた。

方法:
 レトロスペクティブに1994年から2007年にBAEを施行された全ての患者を同定した。アウトカムは総死亡率、再BAEを要する血痰とした。

 
結果:
 158人が208のBAEを受けた。85人(54%)が男性であり年齢中央値は54歳(IQR: 41-67)であった。もっともよくみられた基礎疾患はアスペルギローマであり(n=38; 24% of patients)、以下、気管支拡張症(n=24; 15%), 同定できなかった疾患(n=17; 11%)、慢性結核(n=14; 9%), 活動性結核(n=12; 8%) 、嚢胞性線維症(n=11; 7%)と続いた。1ヶ月および3年時の総死亡は5.3%、29.7%であり、再BAEを要したのは4.7%、30.7%であった。3年時の再BAEの原因は、50%がアスペルギローマであり活動性結核は0%であった。3年死亡率は嚢胞性線維症において最も高く(40%)、同定できなかった疾患で最も低かった(7.7%)。塞栓血管数や血管部位によって死亡や再BAEに関与することはなかった。

結論:
 BAEについてレトロスペクティブに調べると、疾患によって再BAEや死亡に差異がみられた。

# by otowelt | 2012-05-26 08:40 | 呼吸器その他 | Trackback | Comments(0)

ATS 2012:ALK陽性腺癌患者にEGFR、MET遺伝子変異を合併することがある




J.M. Boland, et al.
MET And EGFR Mutations Identified In ALK Rearranged Pulmonary Adenocarcinoma: Molecular Analysis Of 25 ALK-Positive Cases
ATS 2012


背景および方法:
 肺腺癌患者の5%の症例においてALK再構成がみられるとされており、クリゾチニブが治療選択肢として近年注目を集めている。われわれは、ALK陽性患者における他の遺伝子変異の合併例を検索した。
 FISHによりALK再構成がみられた25症例において、他の遺伝子の合併がいないかを調べた。10の遺伝子:EGFR, KRAS, BRAF, ERBB2, JAK2, AKT1, AKT2, KIT, MET、PIK3CAを検索。遺伝子シークエンスにより陽性結果を確定させた。

結果:
 25人のALK陽性症例のうち5人(20%)に追加で遺伝子異常がみつかった。1人は(4% of ALK+ cases)はEGFR del L747-S752であり、他の4人(16% of ALK+ cases)はMET遺伝子変異でそのうち2人がMET N375S、残りの2人がMET R988Cであった。他の遺伝子変異合併はみられなかった。

結論:
 ALK陽性腺癌患者においてMETやEGFRの遺伝子変異を合併する症例がみられたが、KRAS, BRAF, ERBB2, JAK2, AKT1, AKT2, KIT,PIK3CAについては確認されなかった。EGFRよりもMET変異の方が多かった。ALK陽性患者にMET遺伝子変異を共存するような場合の治療戦略を考慮する上で、さらなる研究が必要であろう。
 この報告は、ALK阻害薬の耐性がいずれ出現した時に役立つ報告となるだろう。

# by otowelt | 2012-05-25 18:11 | 肺癌・その他腫瘍 | Trackback | Comments(0)

ATS 2012:間欠的鎮静中断によってICU入室患者のアウトカムは有意差みられず




S. Mehta, et al.
SLEAP: A Multicenter Randomized Trial Of Daily Awakening In Critically Ill Patients Being Managed With A Sedation Protocol
ATS 2012,


背景:
 集中治療領域におけるプロトコール化された鎮静と鎮静を日中に一旦中断する手法は、いずれも人工呼吸器装着期間やICU在室期間を減らすとされている。このスタディの目的は、これらの鎮静法を組み合わせた場合に人工呼吸器装着期間をプロトコール化鎮静に比べて改善することができるかどうか検証するものである。

方法:
 このプロスペクティブランダム化非盲検多施設共同試験は、内科的・外科的患者においてオピオイドの静脈内投与and/orベンゾジアゼピンが投与された患者をプロトコール化鎮静単独と、プロトコール化鎮静と日中の間欠的な鎮静中断を組み合わせた群に割りつけた。登録された全患者は、さまざまな専門チームによって定められた看護師主体のプロトコールによって鎮静がおこなわれた。時間ごとにSedation Agitation Scale (SAS)あるいはRichmond Agitation Sedation Score (RASS)によって鎮静の深さが確認され、薬物治療SAS 3~4、RASS 0~-3となるよう看護師によって調節された。
 併用手法群に割りつけられた患者は、毎朝鎮静薬投与を中断された。両群ともに毎日SBTをおこなわれた。ITT解析が用いられた。

結果:
 2008年1月から2011年7月までカナダおよびアメリカにおける16施設420人の患者が登録された。207人がプロトコール化鎮静単独群、213人が併用群に割りつけられた。ベースラインの患者特性は両群とも同等であった。およそ80%が内科的疾患であり残りは外科手術・外傷患者であった。最も多かった疾患は肺炎(20.5%)で、次に多かったのは敗血症(18.1%)であった。
 抜管成功までの日数、ICU在室日数、死亡率について両群に差はみられなかった。気管チューブの位置異常の頻度、胃管トラブル、その他のデバイスの抜去について両群とも同等のアウトカムであった。

結論:
 間欠的な鎮静中断による集中治療管理は、人工呼吸器装着期間やその他のアウトカムに影響を与えなかった。

# by otowelt | 2012-05-25 16:07 | 集中治療 | Trackback | Comments(0)

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