胸膜癒着術における早期肺拡張は予後に関連しない


癌性胸膜炎に対して、胸膜癒着術を行うことがしばしばある。
呼吸器内科医なら誰しもが経験していることと思う。

<レクチャーレビュー>
http://pulmonary.exblog.jp/9637489/

肺拡張速度が早すぎると、再膨張性肺水腫のリスクになると言われているが
陰圧をかけない自然ドレナージであれば、1日に何リットル抜いても
問題ないとも言われている。
 Ann Thorac Surg 45:340-345, Mar 1988

胸膜癒着の際、-15~-20cm水柱の陰圧をかけることが多いが、
この肺拡張速度は速い方がいいのか、それともゆっくりした方がいいのか
どっちでもいいのかという疑問が生じる。

CHESTに、肺完全拡張を急速に行うことが結果には
対して影響しないという内容の論文が掲載されていた。

Is Full Postpleurodesis Lung Expansion a Determinant of a Successful Outcome After Talc Pleurodesis?
CHEST August 2009 vol. 136 no. 2 361-368


目的:
 タルクによる胸膜癒着後の肺拡張について、VATSあるいは胸腔ドレーンによる
 拡張を比較して臨床的アウトカムに関連するかどうかを検討。
 (VATSでもタルクを使用)
 セカンダリエンドポイントとして、効果、安全性、QOL、生存率を設定。

方法:
 プロスペクティブ無作為化試験に登録したのは60人(女性45人、男性15人、
 平均55.2歳)。いずれも再発性の悪性胸水で、2005年1月から2008年1月までの
 症例で検討された。彼らはいずれもVATS+タルク散布群、
 ドレーンからのタルク注入群にランダム化された。
 肺拡張はCTにて0、1、3、6ヶ月後に判定された。
 合併症、ドレナージ時間、院内滞在時間、QOLも解析された。

結果:
 2群にプライマリエンドポイントで差が出なかった。早期肺拡張(90%以上)が
 27人(45%)でみられたが、VATS群の方でよく観察された。(60% VS 30%, p=.027)
 フォロー期間中、71%の患者で肺拡張の不変ないし改善が認められた。
 また9人(15%)の患者で、新たな手技を必要とした。
 (VATS群:5人が再発、癒着群:4人が再発)(p = 0.999)
 合併症に差はみられなかった。その他合併症、ドレナージ時間、院内滞在時間、QOL
 に差はみられなかった。

結論:
 急速な肺拡張は胸膜癒着後にしばしばみられる現象だが、
 それによる臨床的アウトカムの改善は特にみられない。

by otowelt | 2009-08-20 08:42 | 肺癌・その他腫瘍

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