酸素投与で二酸化炭素が蓄積する理由


CO2ナルコーシスの患者に大量の酸素投与を行うと
さらなる高二酸化炭素血症を引き起こすことは知られているが、
私たち呼吸器内科の一般診療でもCOPD急性増悪患者では
酸素投与をなるだけ控えるようにしている。

あまり知られていないのが、
なぜ酸素投与で二酸化炭素が蓄積するかという医学的根拠である。
酸素吸入によるPaCO2の増加に関しては、その成因をめぐっては議論がある。
これはさまざまな原因が考えられている。
Malhotra A, Schwartz DR, et al: Treatment of oxygen-induced hypercapnia. Lancet 2001; 357:884-5

①二酸化炭素感受性の低下
 中枢神経系の二酸化炭素感受性が低下している場合、
 低酸素の刺激により呼吸が維持されているため、酸素吸入により
 低酸素の刺激が消失すると、二酸化炭素感受性が低下している
 状態であるため、PaCO2が上昇する。

②睡眠
 増悪時の低酸素血症による不眠が酸素吸入による改善に伴って改善し、
 入眠による低換気のためにさらに二酸化炭素血症が悪化する。

③二酸化炭素排出の減少
 低VA/Qユニットで、酸素吸入による肺胞O2の増加により
 低酸素性肺血管攣縮(hypooxic vasoconstriction)が解除され、
 血流が増加し、高い低VA/Qユニットの血流は低下し、二酸化炭素の排出が減少。

④Haldane効果
 PaO2の増加によるHbCO2よりのCO2排出によるPaCO2が増加。
 肺胞毛細血管膜をはさんでCO2の拡散はO2の拡散と比べて遥かに速い。
 溶解下CO2はO2の20倍程の速さで肺胞に排出される。
 CO2のa-v間差の60%を占めるHCO3は、炭酸脱水酵素の働きによって
 CO2となり拡散される。カルバミノ結合によりHbに結合されているCO2は
 Hbが酸化されることによってHbから離れ肺に拡散される。
 これをHaldane効果という。発音は、ホールデン効果。

文責"倉原優"

by otowelt | 2009-09-01 15:39 | レクチャー

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