肺ヒストプラズマ症

・ヒストプラズマとは
 ヒストプラズマは菌糸系と酵母系の二つの形態をとる二相性真菌である。
 自然環境下で菌糸系のヒストプラズマの胞子を経気道的に吸入した場合
 肺に病変が生じることがあるが、生体内ではヒストプラズマは酵母系の形態を
 とり、感染性はないとされている。
Principles and Practice of Infectious Diseases. 6th ed. The United States
of America : Churchill Livingstone, 2005 ; 262 : 3012―3026.


 肺ヒストプラズマ症は,Histoplasma capsulatum の胞子を吸入することに
 よって主として肺に病変を引き起こされる深在性真菌症である。
 の流行地として米国ミシシッピー川流域、中南米アマゾン川流域、東南アジアの
 メコン川流域がある。
 
 3種類の原因菌があり、それぞれの感染により病名は
 ・カプスラーツム型ヒストプラズマ症(histoplasmosis capsulati)
 ・ズボアジ型ヒストプラズマ症(histoplasmosis duboisii)
 ・ファルシミノースム型ヒストプラズマ症(histoplasmosis farciminosi)
 と呼ばれている。ただし、カプスラーツム型とズボアジ型との違いは、
 後者がアフリカ大陸でみられ、感染組織内の酵母細胞が前者のそれに
 比べて大きく(直径8~15μm)、組織内に多数の巨細胞が出現してくる
 という以外は、分離菌の間に菌学的(形態的)な違いはない。
 また、ファルシミノースム型はウマ、ロバ等四足獣の病気である。


・ヒストプラズマの臨床
 大量の胞子を吸入した場合,10~18 日の潜伏期の後
 急性肺ヒストプラズマ症として約80% の症例で発熱、頭痛、筋肉痛、咳嗽、胸痛
 などのインフルエンザ様症状を呈する。
 免疫不全や基礎に肺疾患が存在しなければ、ほとんどの場合2~3 週間で自然治癒。
 免疫不全の患者では、播種性の病変を来たし易く致命的である場合が多い。
 AIDSおける合併症として重要であるが、近年は日本においてもAIDS 症例での
 播種性ヒストプラズマ症の死亡例が散見されている。

 非AIDS 症例ではわずか0.001~0.05% のみが播種性ヒストプラズマ症に進展する
 と推測されているが、AIDS 症例においてはその割合は85~96% とも言われる。
               Am J Med 1985 ; 78 : 203―210.

 検査所見は特異所見に乏しく、白血球数異常、軽度の貧血、肝酵素の上昇、
 アルブミンの低下等が認められる程度である。

 1 .急性肺ヒストプラスマ症 acute pulmonary histoplasmosis
   一過性にインフルエンザ様症状を呈し、自然治癒する。
 2 .慢性肺ヒストプラスマ症 chronic pulmonary histoplasmosis
   結核に似た症状を示す。特に、形成された空洞は結核との鑑別が難しい。
 3 .全身性ヒストプラスマ症 systemic histoplasmosis
   急性型は小児に発症しやすく、死の転帰を取ることが多い。
   H. capsulatum が繁殖している洞窟や納屋に入り、多量の分生子を
   吸入した結果起こる。慢性型は細胞性免疫不全の患者に発生しやすい。
 4 .眼ヒストプラスマ症 ocular histoplasmosis
   血行散布により二次的に発症する。特に乳頭部周辺および網膜が侵されやすい。


・ヒストプラズマの画像所見
 肺ヒストプラズマ症の画像所見として、5 mm~30 mm 程度の結節影
 (孤立性が多発性より頻度は多い)や、単発あるいは多発性の境界の
 はっきりしないair space consolidationが多いとされている。
Histoplasmosis : Diagnosis of diseases of the chest 4 th ed.W.B. Saunders, Pennsylvania 1999 ; 876―890.

 重篤なものでは、均一な非区域性の実質陰影を呈することもある。
 縦隔・肺門リンパ節の腫大をしばしば伴うが、胸水は稀。
 急性期に空洞形成がみられることも報告されている。
 肺実質影は2~8 カ月たってから完全に消退するか、線維化して瘢痕を残す。
 また、数年後に多数の石灰化した小結節影としてみられることもある。

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・ヒストプラズマの診断
 血液・骨髄・髄液・気管支洗浄液・喀痰などの検体からH. capsulatum が
 分離培養されれば価値は高いが、一般に急性ヒストプラズマ症における
 培養陽性率は10% 以下と低く、また発育に2~4 週間以上を要する。
               Ann Intern Med 1982 ; 97 : 680―685.

 血液の特異抗体または特異抗原の検出は、ヒストプラズマ症の診断および
 治療のモニタリングとして有用。急性肺ヒストプラズマ症の約80~90%の
 症例では、感染後4~6 週間で抗体価の上昇を認め、それが数か月間持続する。

 補体結合反応による抗体価では、シングル血清の場合、抗体価32 倍以上で
 あればヒストプラズマ症が強く示唆され、8~16 倍でも本症の可能性が疑われる。
 ペア血清における抗体価の4 倍以上の上昇、あるいは感染後期であれば
 4 倍以上の下降は臨床的に有意であると判定される。


・ヒストプラズマの治療
 急性ヒストプラズマ症の軽症~中等症では症状がなければ経過観察。
 症状があればイトラコナゾールで治療を行う。
 重症ではamphotericin B でまず治療を行い、その後イトラコナゾールによる
 治療へ移行する。慢性ヒストプラズマ症の軽症~中等症では症状に関係なく
 イトラコナゾールの治療を行う。重症では急性と同様にamphotericin B で
 まず治療を行い、その後イトラコナゾールによる治療へ移行する。
 histoplasmoma の治療は経過観察で良いと記載されている。

文責"倉原優"

by otowelt | 2009-11-23 17:55 | レクチャー

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