肺コクシジオイデス症

・肺コクシジオイデス症
 コクシジオイデス症は米国西南部、メキシコ西部、アルゼンチンのパンパ、
 ベネズエラのファルコン州の半乾燥地域の風土病である。
 半乾燥地帯の限られた地域の土壌中にCoccidioides immitisが生息し、
 その分節型分生子は強風や土木工事などで空中に舞い上がり、これら
 分生子を吸入することにより肺に感染を起こす。
 患者の約0.5%は全身感染に波及し、その半数が致死的となる。

 
・肺コクシジオイデス症の臨床
1. 原発性肺コクシジオイデス症 primary pulmonary coccidioidomycosis
 無症状。40%で感冒症状を認める。約10%の患者(女性に多い)に
 結節性紅斑が見られる

2. 原発性皮膚コクシジオイデス症 primary cutaneous coccidioidomysosis
 まれに皮膚に初発病巣が生じる。刺傷あるいは外傷により感染し、発症する。
 潰瘍を形成し、花キャベツ状の腫瘤となる。

3. 良性残留性コクシジオイデス症 benign residual coccidioidomycosis
 原発性コクシジオイデス症の2~8%の患者の肺に、空洞が形成される。
 病巣は進行せず、感染の恐れもない。自覚症状はほとんどなく、X 線撮影で
 発見される。別名コクシジオイドーマ。

4. 播種性コクシジオイデス症 disseminated coccidioidomycosis
 coccidioidal granulomaとも言う。肺の初感染病巣が進行し、
 血行性に全身に散布する。原発性肺コクシジオイデス症の患者の約0.5%に発生、
 そのうち約半数が死の転帰をとる。免疫不全の患者に起こることが多い。
 皮膚、皮下組織、骨、関節、肝、腎、およびリンパ組織が侵される。
 なお、急性の場合、髄膜炎(coccidioidal meningitis)を併発することが多い。

・肺コクシジオイデス症の画像
 原発性での画像所見の特徴は1 つないし複数の区域性・肺葉性の浸潤影や
 多発結節が約75%、ついでリンパ節腫大、胸水が約20% とされている。
         Radiographics 1995 ; 15 : 255―270

・肺コクシジオイデス症の診断
 病理組織内でC. immitis は、内生胞子を内蔵した球状体、および球状体から
 放出された内生胞子、各種発達段階にある球状体として観察される。
 染色はPAS およびGMS を推奨する。
 病理学的特徴は肉芽腫性炎症と化膿性炎症の混じり合った像であるが、
 どちらが主になるかは病型および菌の寄生形態に左右される。
 肺の初感染巣は主に肉芽腫炎症像を示すが、急性全身感染の場合は
 化膿性炎症像が強くなる。また、球状体の発育段階によっても組織反応は異なってくる。

 免疫反応用抗原としてコクシジオイジン(coccidioidin)および
 スフェルリン(Spherulin)が開発されている。
 ベータ‐1,3 ‐グルカン(β‐1,3‐glucan)を検出するキットも
 コクシジオイデス症に反応するといわれている。
 
 一方、コクシジオイデス症における血清抗体も種々の方法で検出されている。
 沈降抗体は通常感染1週間から3週間の間に出現する。

 本症に伴う好酸球増多は約25%の症例に、また血清IgE 値の増加は
 約35%に認められる。
          West J Med 1988 ; 149 : 419―421. 

・肺コクシジオイデス症の治療
 急性の経過や播種性コ症でAMPH-B を使用するが、
 慢性進行性肺コ症の第一選択薬はFLCZ,ITCZである。
        Clin Inf Dis 2005 ; 41 : 1217―1223.

 播種性コクシジオイデス症の治療は困難である。
 現在イミダゾール系の抗真菌剤(ケトコナゾール、ミコナゾール、イトラコナゾール)
 およびフロル化ピリミジン化合物の一種である5‐フルオロシトシン(5‐FC)が
 実用に供されているが、古くから使用されているアムフォテリシンB が
 依然として唯一の確実な治療薬である。
 

by otowelt | 2009-11-24 11:38 | レクチャー

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