ICSによるCOPD急性増悪減少は誇張されすぎかもしれない
2010年 02月 08日
COPD患者への吸入ステロイドは是か非か。
今週のCHESTの論文も、それほどでもないという結論にとどめている。
”それほどでもない”が、少しでも効果があるのであれば、
エエやないかと思うのはダメなのだろうか?
ICSによる肺炎リスクはやはりあるのだろうか?
まだ結論は出ないと考えてよいだろうか・・・。
COPDに対する吸入ステロイドは、呼吸器内科医の間でも議論の
わかれるところであった。それは、結果の異なる報告が複数あるためかもしれない。
2008年に、JAMAからICS療法は安定期COPD患者の全死因死亡リスクを低減せず、
肺炎リスクが有意に上昇するというメタ分析が報告された。これは11のRCT
(14426人)のメタ分析によるもので、2008年の論文で発表されている。
Inhaled Corticosteroids in Patients With Stable Chronic Obstructive Pulmonary Disease
JAMA. 2008 Nov 26;300(20):2407-16.
しかしながら、オランダのRCTでは中等度~重症のCOPDにおけるICSが
肺機能の低下を遅らせるとの結果が示された。
Effect of Fluticasone With and Without Salmeterol on Pulmonary Outcomes in Chronic Obstructive Pulmonary Disease: A Randomized Trial
Ann Intern Med 2009; 151: 517-527
呼吸器学会からのCOPDガイドラインには以下の記述がみられる。
%FEV1が50%未満のCOPDで増悪回数の多い症例では、吸入ステロイド療法が
増悪の回数を減らし、患者QOLの悪化速度を抑制すると報告されている。
COPDに対する吸入ステロイド薬の用量反応性の検討は少ない。これまでの大規
模トライアルの報告では、高用量の吸入ステロイドが用いられている。
今週、CHESTに新しいメタ分析の報告が掲載されていたので特記しておく。
Inhaled Corticosteroids vs Placebo for Preventing COPD Exacerbations A Systematic Review and Metaregression of Randomized Controlled Trials
CHEST February 2010 vol. 137 no. 2 318-325
背景:
吸入ステロイド (ICS) は、COPD急性増悪を減少させるといわれている。
しかしながら、もともとの肺機能とICSによる急性増悪減少が
どのように関連しているかはわかっていない。
方法:
PubMed、EmBase、Cochrane Central Database of
Controlled Trials databases (1988-2008)を解析し、
ICSとプラセボによる効果の差を検証。
これにより、risk ratio (RR)と95%CIを2群間で抽出。
結果:
11試験、8164人の患者を抽出。
ICSは急性増悪の減少と関連していた(RR, 0.82; 95% CI, 0.73-0.92)。
しかしながら、有意な統計学的hetergeneityを認めるが、出版バイアスの根拠はなし。
FEV1 < 50% の患者においては、ICSは有意な利益を持っていた
(RR, 0.79; 95% CI, 0.69-0.89)。
これも統計学的heterogeneityを認める。
メタ回帰において、急性増悪リスク減少は、COPD重症度にかかわらず不変と
考えられた。(一秒量解析による)
結論:
現在言われているICSによるCOPD急性増悪減少は、誇張されすぎかもしれない。
今週のCHESTの論文も、それほどでもないという結論にとどめている。
”それほどでもない”が、少しでも効果があるのであれば、
エエやないかと思うのはダメなのだろうか?
ICSによる肺炎リスクはやはりあるのだろうか?
まだ結論は出ないと考えてよいだろうか・・・。
COPDに対する吸入ステロイドは、呼吸器内科医の間でも議論の
わかれるところであった。それは、結果の異なる報告が複数あるためかもしれない。
2008年に、JAMAからICS療法は安定期COPD患者の全死因死亡リスクを低減せず、
肺炎リスクが有意に上昇するというメタ分析が報告された。これは11のRCT
(14426人)のメタ分析によるもので、2008年の論文で発表されている。
Inhaled Corticosteroids in Patients With Stable Chronic Obstructive Pulmonary Disease
JAMA. 2008 Nov 26;300(20):2407-16.
しかしながら、オランダのRCTでは中等度~重症のCOPDにおけるICSが
肺機能の低下を遅らせるとの結果が示された。
Effect of Fluticasone With and Without Salmeterol on Pulmonary Outcomes in Chronic Obstructive Pulmonary Disease: A Randomized Trial
Ann Intern Med 2009; 151: 517-527
呼吸器学会からのCOPDガイドラインには以下の記述がみられる。
%FEV1が50%未満のCOPDで増悪回数の多い症例では、吸入ステロイド療法が
増悪の回数を減らし、患者QOLの悪化速度を抑制すると報告されている。
COPDに対する吸入ステロイド薬の用量反応性の検討は少ない。これまでの大規
模トライアルの報告では、高用量の吸入ステロイドが用いられている。
今週、CHESTに新しいメタ分析の報告が掲載されていたので特記しておく。
Inhaled Corticosteroids vs Placebo for Preventing COPD Exacerbations A Systematic Review and Metaregression of Randomized Controlled Trials
CHEST February 2010 vol. 137 no. 2 318-325
背景:
吸入ステロイド (ICS) は、COPD急性増悪を減少させるといわれている。
しかしながら、もともとの肺機能とICSによる急性増悪減少が
どのように関連しているかはわかっていない。
方法:
PubMed、EmBase、Cochrane Central Database of
Controlled Trials databases (1988-2008)を解析し、
ICSとプラセボによる効果の差を検証。
これにより、risk ratio (RR)と95%CIを2群間で抽出。
結果:
11試験、8164人の患者を抽出。
ICSは急性増悪の減少と関連していた(RR, 0.82; 95% CI, 0.73-0.92)。
しかしながら、有意な統計学的hetergeneityを認めるが、出版バイアスの根拠はなし。
FEV1 < 50% の患者においては、ICSは有意な利益を持っていた
(RR, 0.79; 95% CI, 0.69-0.89)。
これも統計学的heterogeneityを認める。
メタ回帰において、急性増悪リスク減少は、COPD重症度にかかわらず不変と
考えられた。(一秒量解析による)
結論:
現在言われているICSによるCOPD急性増悪減少は、誇張されすぎかもしれない。
by otowelt
| 2010-02-08 22:57
| 気管支喘息・COPD