挿管後気管狭窄

最近、気管切開後の患者様が、抜管3ヶ月で呼吸困難を訴えてきたので
レントゲン・CTを撮影したが、特に問題なかった。
呼吸器内科医にとって、挿管後気管狭窄というのははナーバスになる疾患の1つである。
抜管した後に起こることが多いのだが、病名はあくまで挿管後気管狭窄、である。

●挿管後気管狭窄概論
 原因として、気管挿管・気管切開後の瘢痕性狭窄がまず挙げられる。
 過去2年以内に挿管・気管切開を受けた患者で呼吸困難を呈する場合に
 まずは気管狭窄を疑わなければならない。
               J La State Med Soc. 2000; 152: 276-80.
 挿管あるいは気管切開後の気管狭窄は、抜管後2か月以内に出現するが
 2年以上経過して出現することもあり得る。
 報告例では10年以上たって、という報告もあるが、本当に挿管が影響したのか
 もはや謎の年月とも言える。
               Br Med J 2001, 322, 362.
 最近では気管挿管チューブの材質が向上し、低圧カフへと改良され
 抜管後に気管狭窄を来す頻度は減少している。

●挿管後気管狭窄の分類
 A proposed classification system of central airway stenosis
 Eur Respir J 2007; 30: 7–12

 挿管後気管狭窄を含めた中枢気道狭窄病変の分類については
 上記ERJの論文がよくまとまっている。
e0156318_23435743.jpg
e0156318_2344182.jpg
a) Intraluminar tumour or granulation; b) distortion or buckling; c) extrinsic compression; d) scar stricture; e) scabbard trachea; f) floppy membrane; g) abrupt transition (web stenosis); h) tapered transition (hour glass stenosis)

●挿管後気管狭窄の発生機序
 挿管時の気管軟骨の損傷が気管軟骨周囲炎を起こすことによって
 二次感染あるいは肉芽組織形成を惹起する。
 これによる気道狭窄が本態と考えられている。
 ただ、インパクトファクターを考慮しても、1953年のNEJMの論文しか
 こういった考察がなされていないのが現状である。
                N Engl J Med.1953; 248: 1097-9.
 気管チューブが気管壁を持続的に刺激すること、過剰なカフ圧による局所循環不全
 なども考えられているが仮説に過ぎない。
 ただ、挿管した期間と狭窄に関しては20人の患者を検討した論文があるが、
 関連性はないとされている。
                Surg Radiol Anat 2002, 24, 160-168.

●挿管後気管狭窄の症状
 症状を認めるほどの抜管後気管狭窄の発生率は0.1%とされている。
                Eur Respir J. 1999; 13; 888-93.
 軽度の狭窄においては、反復性肺炎、労作時呼吸困難、
 あるいは成人発症喘息と誤診されることもしばしばみられる。
                Semin Thorac Cardiovasc Surg. 1996; 8: 370-80.
                Am J Respir Crit Care Med. 2004; 169: 1278-97.

 Stridor は気管内径が5mm以下にならないと出現しないため、
 絶対的な指標とするには問題があるだろう。
 また、チアノーゼは狭窄が長期におよび、末期症状として出現するものである。

●挿管後気管狭窄の診断
 胸部レントゲンなどの画像診断を行うことが優先される。
 気管支鏡や喉頭ファイバースコープなども有用である。

●挿管後気管狭窄の治療
 抜管後気管狭窄に対する治療法として、
 レーザー焼灼、ステント留置、バルーン拡張術や根本的外科的治療法がある。
文責"倉原優"

by otowelt | 2010-05-24 23:22 | 救急

<< ALIと集中治療における200... 非喫煙者にみられた小細胞肺癌の2例 >>