いわゆる、びまん性肺胞出血は原因を問わず入院死亡率24.7%

肺胞出血の大規模なレトロスペクティブスタディがERJから出た。
レトロスペクティブなので、診断基準があやふやなものが混ざっているかもしれない。
死亡率をプライマリエンドポイントにおいて、おおむね予後は同等との結論だった。
個人的にはANCA関連のDAHと、特発性DAHに実臨床でかなり差を感じるのだが・・・。
GGOの改善、臨床症状の改善というエンドポイントも設定してほしかった。

Diffuse alveolar haemorrhage: factors associated with in-hospital and long-term mortality
Eur Respir J 2010; 35: 1303–1311


背景:
 びまん性肺胞出血(DAH)は、免疫あるいは非免疫的にも発症する疾患である。
 予後は不良であり、入院死亡率は20%から100%と考えられている。
 早期発見が適切な治療開始に有用な予後因子かもしれない。

方法:
 われわれはレトロスペクティブに1980年から2008年まで大学病院の
 すべての患者チャートを解析した。入院に関連した項目および長期死亡率は、
 ロジスティック回帰モデルおよびKaplan–Meier法を用いておこなわれた。
 免疫抑制患者は除外した。

結果:
 97人の患者がこのスタディに登録した。入院死亡率は24.7%であった。
 免疫学的肺胞出血は、35人。
  ・血管炎 25人
  ・抗基底膜抗体疾患 4人
  ・膠原病 6人
 非免疫学的肺胞出血は、62人。
  ・肺胞毛細血管圧上昇 26人
  ・その他 22人(感染6人、薬剤6人、塞栓性疾患4人、人工呼吸器関連4人、癌2人)
  ・特発性肺胞出血 14人
 入院死亡率に関連していたのは、
 ショック (OR 77.5, 95% CI 8.9–677.2)、
 GFR 60mL/min未満 (OR 11.2, 95% CI 1.8–68.4)
 血清LDHレベルが正常の2倍をこえるもの(OR 12.1, 95% CI 1.7–84.3)
 であった。退院した患者の死亡率は16.4%であり、フォローアップ期間中央値は
 34ヶ月であった。長期死亡率を増加させる因子としては、60歳をこえる患者(p=0.026)、
 心血管合併症患者(p=0.027)、末期腎不全血液透析患者(p=0.026)であった。
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 ↑ 免疫学的肺胞出血と非免疫学的肺胞出血のK-M曲線

結論:
 免疫的肺胞出血あるいは非免疫的肺胞出血のいずれも同等のアウトカムであった。
 早期のアウトカムは、肺以外の臓器不全に関連していた。
 後期のアウトカムは、年齢、心血管合併症、血液透析に関連していた。
by otowelt | 2010-06-04 18:32 | びまん性肺疾患

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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