Acinetobacter

感染症学会雑誌に耐性Acinetobacter baumanniiの肺炎の報告が
なされていた。MDRPのVAPで難渋することはあるが、まだAcinetobacterの
VAPには出会ったことがない。CRBSIでも注意すべき感染症の1つである。
SPACEの1つであるAcinetobacterについて勉強したことを記録しておく。

●Acinetobacter
Acinetobacter属はブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌で、
自然界の土壌や水系に存在する。病院だけでなく家庭の洗面台など
湿潤な室内環境から検出されるが、しばしば健常人の皮膚にも常在する。
人工呼吸器を使用している患者において肺炎、血管カテーテルを
挿入している患者において菌血症を起因することがあり、
手術部位感染、尿路感染、敗血症、髄膜炎、心内膜炎などの起因菌となる。
                Clin Microbiol Rev 1996;9:148-165.
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グラム染色では陰性球桿菌のように見えるのが特徴的である。
一見するとH.influenzaeに似ているのだろうか?

国内において、グラム陰性桿菌は22034 検体の血液培養で分離されており
その中の約1.6%がAcinetobacter spp.であった。
院内肺炎の起因菌としては、日本では0.7%と低率である。
しかし、アメリカではICU で発症した肺炎に対するAcinetobacter肺炎は
1975年では1.5%、1986年では4%、2003年には7.0%と上昇してきている。
nosocomial CRBSIの起因菌としては1%である。
                Clin Infect Dis. 2004 Aug 1;39(3):309-17
肺炎のリスクファクターとして、アルコール、喫煙、COPDが報告されている。
                Clin Infect Dis 1992;14:83―91
CR-BSIのリスクファクターとしては以下の表が挙げられる。
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●Acinetobacterに対する抗菌薬
 抗菌薬治療として、広域β―ラクタム抗菌薬、アミノ配糖体、フルオロキノロン、
 カルバペネム薬が使用されるが、多剤耐性菌が報告されている。
 欧米ではコリスチンの選択肢があるが日本にはない。
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 世界的にも院内の耐性率が上昇してきているのは明らかである。

●Acinetobacter耐性機構
 細胞壁に存在するporinのチャネルやエフラックスポンプの変化によって
 β ラクタマーゼ配合抗菌薬の耐性を生じたり、gyrA ・parC 遺伝子変化により
 標的の変異が生じてアミノ配糖体系抗菌薬の耐性を獲得などの
 報告がある。耐性獲得機序として伝達性プラスミド上のトランスポゾンが重要と
 いう報告もある。
                 N Engl J Med 2008;358:1271―81.
                 Clin Infect Dis 2006;42:692―9.

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by otowelt | 2010-06-05 10:26 | レクチャー

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