呼吸器系におけるカルチノイド腫瘍

金子哲雄様のご冥福をお祈り申し上げます。(追記2012年10月3日)

●肺~気管支カルチノイド
 肺癌の中でも比較的稀な低悪性度の腫瘍として扱われている。肺癌100人に対して頻度としては0.5~1人程度であり、呼吸器科医が1年で1人か2人診察することがあるくらい。臨床的に進行が遅いが、局所浸潤やリンパ節転移、血行性転移を起こすことがあるため悪性腫瘍に準じて取り扱われている。気管支上皮基底部に存在する神経分泌顆粒を持つkulchitsky細胞由来の腫瘍と考えられる神経内分泌腫瘍に分類される。細胞の核分裂像と壊死巣の有無により定型カルチノイドと非定型カルチノイドに分類され、非定型カルチノイドの方がより悪性度が高い。定型カルチノイドが70~80%を占める。
            Ann Surg Oncol 2003 ; 10 : 697―704.
発生部位は教科書的に90%が中枢発生とされているが、末梢の肺野発生型は52%~63%という報告もあり、疫学的にはまだ不透明である。ただ、日本の報告では末梢型の方が多いようである。
            J Thorac Cardiovasc Surg.1985;89:8-17.
            J Thorac Cardiovasc Surg. 1994;107:1-7.

気管支カルチノイドはポリープ状に発育するものと、氷山状に発育するものがある。前者は大きな気管支に沿って発育する。
            Armed Forces Institute of Pathology; 1995:287-317.

●症状
中枢型は血痰や咳嗽、気管支狭窄による喘鳴などの症状があるが、末梢型では無症状なことが多く、健診の胸部X 線検査で偶然発見される。

●病理
・定型カルチノイド
organoid structure を示し、充実性、索状、リボン状、ロゼット、胞巣周囲の基底核配列等の構造がみられ、腫瘍細胞は多角または紡錘形。核異型は乏しく、核分裂像はほとんど認められない。
10視野中に細胞分裂像が2個より少ない
・非定型カルチノイド
細胞分裂像が2~10個または、少しでも壊死巣を認めるもの。鑑別として、神経大細胞内分泌癌や小細胞癌が挙げられるが、前者は細胞の大きさが小型で核異型も軽いものの、小細胞癌では核異型軽度で細胞質が明瞭であることである。
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●画像所見
無気肺、閉塞性肺炎、mucoid impactionなど。定型カルチノイドは無気肺や閉塞性肺炎あるいは肺門部腫瘤影が多いのに対して非定型カルチノイドは末梢の腫瘤影が特徴的であるとされている。

●治療
外科手術できるかどうかがポイントとなる。肺癌に準じた外科的切除が原則であるが、有症状の場合すでに手術ができない状態であることも少なくない。術前あるいは術中迅速組織診でリンパ節転移のない定型カルチノイドであることが確実な症例では、肺区域切除などの縮小手術が適応となる。
             J Thorac Cardiovasc Surg. 1985;89:8-17.
手術不能例では化学療法や放射線療法が選択されるが、有効性はかなり低いのが現状である。
             J Thorac Cardiovasc Surg. 1994;107:1-7.
小細胞癌に準じて、EPあるいはCAV療法などがおこなわれている。


文責:近畿中央胸部疾患センター 内科  倉原 優

by otowelt | 2010-07-03 08:42 | 肺癌・その他腫瘍

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