院内肺炎において、リネゾリドがグリコペプチドに勝るとは言えない
2010年 08月 09日
Crit Care MedのPublished Ahead-of-Print から。
リネゾリドとグリコペプチド系のメタアナリシス。非常に興味深い。
どうでもいいが、Crit Care Medの画像は、いつも画質が悪い。
拡大しても文字が見えないのはどうにかならないのか。
●MRSA肺炎の治療についての現段階でのエビデンス
グラム陽性菌による肺炎治療に対し、バンコマイシンとリネゾリドを
比較した二重盲検試験が二つ公表されおり、両試験のデザインは非劣性試験で、
2試験ともリネゾリドはバンコマイシンの有効性と劣らないことを証明している。
・linezolid (PNU-100766) VS vancomycin in the treatment of hospitalized patients with nosocomial pneumonia: a randomized, double-blind, multicenter study. Clin Infec Dis 2001;32: 401-412.
・Continuation of a randomized, double-blind, multicenter study of linezolid VS vancomycin in the treatment of patients with nosocomial pneumonia. Clin Ther 2003; 25: 980-982.
二つの臨床比較試験を混合した解析で、post-hoc 解析の結果
約120名のMRSA肺炎に感染した患者に限ってみると、リネゾリドは
バンコマイシンより優れているという内容がChestでなされた。
linezolid vs vancomycin: analysis of two double-blind studies of patients with MRSA nosocomial pneumonia. Chest 2003; 124: 1789-1797.
しかしKollefらが、グラム陽性菌によるVAPの疑いがある患者1019例において
バンコマイシンとリネゾリドを比較した研究の結果では、MRSA・VAP症例の治癒率は
リネゾリド群62.2%、バンコマイシン群21.2%であり、
リネゾリドに優越性があると考えられた。 今回Crit Care Medからグリコペプチド系というくくりを対照に
リネゾリドの優越性をメタアナリシスで証明しようとしたが
それが証明できなかったようだ。
Linezolid versus vancomycin or teicoplanin for nosocomial pneumonia: A systematic review and meta-analysis
Crit Care Med 2010;38:000–000
背景:
グリコペプチドとリネゾリドは肺胞上皮に高い組織濃度をもたらすが、
院内肺炎(特に院内MRSA肺炎)の治療においても効果があるかもしれない。
しかしながら、臨床的にグリコペプチドとリネゾリドのいずれが
効果があるかはわかっていない。
目的:
リネゾリドがグリコペプチドよりも効果が高いという仮説を証明する。
方法:
プロスペクティブランダム化試験のうち、肺炎に対して
リネゾリドVSバンコマイシンorテイコプラニンがおこなわれた
スタディのメタアナリシス。
アウトカムは臨床効果、微生物学的根絶、副作用とした。
結果:
9のリネゾリド試験(7:バンコマイシン、2:テイコプラニン)が登録(n=2329)。
リネゾリドのグリコペプチドに対する比較では、臨床的効果における
相対リスクは1.01 (95%CI0.93–1.10; p= .83; I2= 0%)であった。
微生物学的根絶における相対リスクは1.10 (95%CI 0.98 –1.22; p=.10;I2=0%)。
MRSAサブグループ解析では、上記根絶は相対リスク1.10 (95%CI,
0.87–1.38; p=.44; I2=16%)。
もしリネゾリドがバンコマイシンと直接的に臨床効果を比較されるのであれば
相対リスクは1.00 (95%CI 0.90 –1.12)で、微生物学的根絶および
MRSAにおけるそれの相対リスクはそれぞれ1.07 (95%CI, 0.90 –1.26;p=.45)
と1.05 (95%CI, 0.82–1.33; p= .71)であった。
血小板減少のリスクと消化器イベントはリネゾリドで高く、それぞれ
相対リスクは1.9 (95%CI1.30 –2.87; p= .001)、
2.02(95% CI 1.10 –3.70; p= .02)であった。腎不全に関しては
両群に差はみられなかった(0.89; 95%CI 0.56 –1.43; p=.64)。
また、全死亡率も差はみられなかった。(0.95; 95% CI0.76 –1.18; p=.63) 結論:
院内肺炎において、リネゾリドがグリコペプチドに勝るとは言えない。
しかも、リネゾリドは血小板減少や消化器イベントを増加させる。
リネゾリドとグリコペプチド系のメタアナリシス。非常に興味深い。
どうでもいいが、Crit Care Medの画像は、いつも画質が悪い。
拡大しても文字が見えないのはどうにかならないのか。
●MRSA肺炎の治療についての現段階でのエビデンス
グラム陽性菌による肺炎治療に対し、バンコマイシンとリネゾリドを
比較した二重盲検試験が二つ公表されおり、両試験のデザインは非劣性試験で、
2試験ともリネゾリドはバンコマイシンの有効性と劣らないことを証明している。
・linezolid (PNU-100766) VS vancomycin in the treatment of hospitalized patients with nosocomial pneumonia: a randomized, double-blind, multicenter study. Clin Infec Dis 2001;32: 401-412.
・Continuation of a randomized, double-blind, multicenter study of linezolid VS vancomycin in the treatment of patients with nosocomial pneumonia. Clin Ther 2003; 25: 980-982.
二つの臨床比較試験を混合した解析で、post-hoc 解析の結果
約120名のMRSA肺炎に感染した患者に限ってみると、リネゾリドは
バンコマイシンより優れているという内容がChestでなされた。
linezolid vs vancomycin: analysis of two double-blind studies of patients with MRSA nosocomial pneumonia. Chest 2003; 124: 1789-1797.
しかしKollefらが、グラム陽性菌によるVAPの疑いがある患者1019例において
バンコマイシンとリネゾリドを比較した研究の結果では、MRSA・VAP症例の治癒率は
リネゾリド群62.2%、バンコマイシン群21.2%であり、
リネゾリドに優越性があると考えられた。
リネゾリドの優越性をメタアナリシスで証明しようとしたが
それが証明できなかったようだ。
Linezolid versus vancomycin or teicoplanin for nosocomial pneumonia: A systematic review and meta-analysis
Crit Care Med 2010;38:000–000
背景:
グリコペプチドとリネゾリドは肺胞上皮に高い組織濃度をもたらすが、
院内肺炎(特に院内MRSA肺炎)の治療においても効果があるかもしれない。
しかしながら、臨床的にグリコペプチドとリネゾリドのいずれが
効果があるかはわかっていない。
目的:
リネゾリドがグリコペプチドよりも効果が高いという仮説を証明する。
方法:
プロスペクティブランダム化試験のうち、肺炎に対して
リネゾリドVSバンコマイシンorテイコプラニンがおこなわれた
スタディのメタアナリシス。
アウトカムは臨床効果、微生物学的根絶、副作用とした。
結果:
9のリネゾリド試験(7:バンコマイシン、2:テイコプラニン)が登録(n=2329)。
リネゾリドのグリコペプチドに対する比較では、臨床的効果における
相対リスクは1.01 (95%CI0.93–1.10; p= .83; I2= 0%)であった。
微生物学的根絶における相対リスクは1.10 (95%CI 0.98 –1.22; p=.10;I2=0%)。
MRSAサブグループ解析では、上記根絶は相対リスク1.10 (95%CI,
0.87–1.38; p=.44; I2=16%)。
もしリネゾリドがバンコマイシンと直接的に臨床効果を比較されるのであれば
相対リスクは1.00 (95%CI 0.90 –1.12)で、微生物学的根絶および
MRSAにおけるそれの相対リスクはそれぞれ1.07 (95%CI, 0.90 –1.26;p=.45)
と1.05 (95%CI, 0.82–1.33; p= .71)であった。
血小板減少のリスクと消化器イベントはリネゾリドで高く、それぞれ
相対リスクは1.9 (95%CI1.30 –2.87; p= .001)、
2.02(95% CI 1.10 –3.70; p= .02)であった。腎不全に関しては
両群に差はみられなかった(0.89; 95%CI 0.56 –1.43; p=.64)。
また、全死亡率も差はみられなかった。(0.95; 95% CI0.76 –1.18; p=.63)
院内肺炎において、リネゾリドがグリコペプチドに勝るとは言えない。
しかも、リネゾリドは血小板減少や消化器イベントを増加させる。
by otowelt
| 2010-08-09 07:09
| 感染症全般