プロカルシトニン

覚えられない自分への学習のため。

●プロカルシトニンとは
プロカルシトニン(PCT)はアミノ酸116個よりなる分子量約13kDaのペプチドで、
正常な人ではカルシトニンの前駆体として甲状腺C細胞で合成される。
        J Clin Endocrinol Metab 89 : 1512-1525, 2004.

重篤な感染症においては、菌体や毒素などの作用により、
TNF-αなどの炎症性サイトカインが産生され、その刺激を受けて
肺・腎臓・肝臓・脂肪細胞・筋肉といった全身の臓器で
PCTが産生され、血中に分泌される。

細菌感染時の血中PCT は、多くが全身の各種臓器に由来している。
しかし、白血球などの血球成分からはほとんど分泌されない。
        Endocrinology 144 : 5578-5584, 2003.

すなわちステロイドや抗癌剤など白血球の機能に影響を与えやすい薬剤を使用
しているような状況下であっても、細菌感染症の場合は血清PCT 濃度の上昇は
妨げられない

        J Leukoc Biol 72: 643-649, 2002.

●プロカルシトニンの臨床応用
成人血中PCT濃度<0.05ng/mlであり、
感染症、とくに細菌感染や敗血症の有無に関して有用とされている。
最近のメタアナリシスでは、敗血症と非敗血症の鑑別に対して
感度・特異度ともに71%であったとのネガティブな結果がある。

        Lancet Infect Dis 2007; 7:210.

よく引用される数字としては、以下のものがある。
細菌感染と非感染性疾患の鑑別では
 プロカルシトニン:感度88%、特異度81%
 CRP:感度67%、特異度67%
細菌感染とウイルス感染では、
 プロカルシトニン:感度92%、特異度73%
 CRP:感度86%、特異度70%
        Clin Infect Dis. 2004;39:206-17.

上昇は、菌血症では高値だが、真菌では中等度ぐらいであるとされている。
また、ウイルス感染でも上昇は軽度である。しかしながら、感染症において
PCTが上昇している期間が長いほど、死亡率が高いという報告がある。
        Crit Care Med 2006 ; 34 : 2596-602

また、抗菌薬の使用期間を3.5日短縮可能することが可能であるともされている。
        Am J Respir Crit Care Med 2008 ; 177 :498-505

最近のPRORATA試験では、PCT介入アルゴリズムによって
死亡率に差はないが、抗菌薬曝露期間を減少したという結果だった。
        Lancet 2010; 375: 463-74
e0156318_11551934.jpg
ちなみにPRORATA試験のアルゴリズムとしては、
 <0.25 µg/L: 抗生剤中止強く推奨
 ≧0.25 and <0.5 µg/L: 抗生剤中止推奨
 ≧0.5and <1µg/L: 抗生剤推奨
 ≧1 µg/L: 抗生剤強く推奨

ICUにおける死亡率は、PCTレベルが高い群の方が
当然ながら高い結果であった。
        Crit Care Med. 2006;34:2596-602.
e0156318_127699.jpg

現在までの臨床試験により、PCTが感染症において有用にあることは変わりないが
敗血症と非敗血症の区別ができない可能性がある。
また抗菌薬の曝露は減るものの、PCTで評価をしたところで
死亡率に差がでないというのが結論であろう。


●プロカルシトニンの偽陽性・偽陰性
●偽陽性
・生後間もない新生児
・急性呼吸促迫症候群(ARDS)
・急性熱帯熱マラリア
・全身性真菌感染症(カンジダ,アスペルギルス,他)
・重症外傷
・外科的侵襲
・重度熱傷
・熱中症
・化学性肺炎
・成人型スティル病
・ホルモン産生腫瘍(甲状腺髄様癌,肺小細胞癌,他)
・サイトカイン・ストーム状態

●偽陰性
・感染の急性期
・軽症感染
・局所感染
・亜急性心内膜炎
        Cardiovascular Engineering, 1(1), 67, 1996
        Swiss Med Wkly 135: 451-460, 2005.

by otowelt | 2010-08-13 11:35 | 感染症全般

<< NDM-1;ニューデリーメタロ... 院内肺炎において、リネゾリドが... >>