ハイリスク心臓外科手術においてゲンタマイシンスポンジはSSIを減らさない

今回のJAMAの論文の前に、知っておくべきスタディがある。

Local gentamicin reduces sternal wound infections after cardiac surgery: a randomized controlled trial. Ann Thorac Surg. 2005;79(1):153-162
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上記の論文に真っ向から対立する論文。このスウェーデンの論文は、
ゲンタマイシンスポンジは有用であるという結論を出していた。
しかしながら、今回のJAMAの論文はハイリスク患者に限定した1500人規模の
スタディであることは特筆すべきポイントであろう。

以下、今回のJAMAの論文。

Effect of an Implantable Gentamicin-Collagen Sponge on Sternal Wound Infections Following Cardiac Surgery:A Randomized Trial
JAMA. 2010;304(7):755-762. doi:10.1001/jama.2010.1152


背景:
 予防的全身抗菌薬投与はルーチンに投与されているにもかかわらず、
 いまだに心臓外科術後患者において5%以上の胸骨切開創感染がみられ、
 高い死亡率とコストを呈している。
 ゲンタマイシン-コラーゲンスポンジは、外科的に局所抗菌薬として埋め込まれ
 54ヶ国で承認されている。
 大規模2施設ランダム化試験が2005年スウェーデンにおいておこなわれ、
 心臓外科患者において50%のSSIを減らしたという報告がある。

目的:
 心臓外科手術においてこのスポンジが胸骨切開創部感染のSSIを減少させるという
 仮説を検証すること。

デザイン:
 第III相プロスペクティブランダム化比較試験。
 1502人の胸骨切開創部感染のリスクが高い心臓外科患者を登録。
 (糖尿病、肥満、あるいはその両方)
 2007年12月から2009年3月までの症例。

インターベンション:
 2つのゲンタマイシン-コラーゲンスポンジ(合計260mg)を胸骨閉創部に
 外科的に挿入(n = 753) した症例と、それらを行わない対照群(n = 749)で比較。
 全員が予防的抗菌薬を基本的に受けているものとする。

結果:
 プライマリエンドポイントは、90日後の創感染とした。(ITT解析)
 セカンダリエンドポイントは、(1)表在創感染、(2)深部創感染、
 (3)ASEPSISスコア、とした。
 1502患者のうち1006人(67%)が糖尿病、1137人(76%)が肥満であった。
 プライマリ解析で90日後胸骨創感染に差がみられなかった(8.4% VS 8.7%、P = .83)。
  セカンダリエンドポイントは以下の通りであった。
 表在感染(6.5% vs 6.1%; P = .77)、深部感染
 (1.9% vs 2.5%; P = .37)、ASEPSISスコア(P = .67)、胸骨創感染による
 再入院(3.1% vs 3.2%; P = .87)。
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結論:
 糖尿病や肥満のあるハイリスクの心臓外科手術後の
 SSIにおいてゲンタマイシン-コラーゲンスポンジは
 90日後の胸骨創部感染率を減らさない。

by otowelt | 2010-08-19 10:18 | 感染症全般

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