喫煙関連肺疾患(SR-ILD):DIP、RB-ILD、CPFE、AEF
2010年 08月 26日
●SRILD: smoking related interstitial lung disease(喫煙関連間質性肺疾患) 1.DIP:Desquamative Interstitial Pneumonia
・喫煙者は90%程度で、RB-ILDよりも少ない。
Katzenstein ALA. Surgical pathology of nonneoplastic lung disease. In : Katzenstein ALA, ed. Major Problem in Pathology vol 13. 4th ed. WB
Saunders Company, 2006 ; 61―66.
・好発年齢は40~50歳
・亜急性の咳嗽、呼吸困難がみられる。一般的にRB-ILDより症状は強いとされている。
・男女比は2:1
・半数にばち指がみられる。
※鑑別として以下の疾患が挙げられる
Subacute extrinsic allergic alveolitis、PCP、Sarcoidosis
Drug toxicity、Asbestosis、PLCH、UIP、NSIP
●DIPの画像所見
・びまん性GGO
・下葉優位でかつ胸膜直下の陰影
・胸部CT では全例にすりガラス影を認め、
下肺野優位73%,中肺野優位14%,上肺野優位14%以下
・末梢分布優位は59%
Radiology 1993 ; 187 :787―790.
・fibrosisはみられない ●DIPの病理所見(DIPパターン)
・肺実質一様におよぶ
・肺胞マクロファージの高度の肺胞腔内の集まり
・肺胞隔壁の軽~中等度の線維性肥厚
・間質への軽度の慢性炎症細胞浸潤
RB-ILDとDIPの違いは、病変が呼吸細気管支中心性分布かびまん性分布かである。
・末期になると線維化が進行し、DIP/Pの認識は困難となり、
国際分類ではf-NSIP patternと病理診断される。
Histopathology 2004; 45: 904-12 ●DIPの治療
・一般的に禁煙によって軽快。
・ステロイド治療に対する反応もUIP に比べて良好と言われている。
・実際には禁煙指導と同時にステロイド治療が行われることが多く、
DIP に対する禁煙単独の効果を評価することは困難である。
Chest 2005 ; 127 :178―184.
・10年生存率は70%
Mayo Clin Proc 1989 ; 64 : 1373―1380.
2.RB-ILD:Respiratory Bronchiolitis Associated Interstitial Lung Disease
●RB-ILDの概念
1989年、Yousemらが18例のRBに合併する間質性肺炎を
DIPとは別にRB-ILDとして概念を明確にした。
Mayo Clin Proc 1989; 64: 1373-80
現在、ATS/ERSコンセンサスに準じて、RB-ILDはIIPsの一臨床診断名と
されており、病理像はRBと認識されている。
●RB-ILDの臨床所見
・通常は無症状で、咳嗽や呼吸困難感がみられることもある。
・DIPよりも症状は軽度であることが多いとされている。
・近年の報告では、RB-ILD VS DIP で
呼吸困難感 75% VS 87%
咳嗽 50% VS 43%
胸痛 8% VS 17%
肺雑音 42% VS 57% と差がない。
・40~50歳が好発年齢
・男女比=1:1
・喫煙歴が必ずあり、ex-smokerでも禁煙後半年以内のことが多い。
また、他のILDよりもheavy smokerのことが多い。
Chest 2003; 124: 1199-1205
・両側性に吸気時後半のcrackleを聴取する
●RB-ILDの検査所見
・血液検査では特記すべき特徴はない。
・抗核抗体はDIPにおいて陽性例が散見される一方、RB-ILDでは全例陰性である。
J Bronchol 2004; 11: 160-4
・動脈血液ガス分析は、正常または軽度な低酸素血症
・呼吸機能検査では軽度の混合性換気障害を呈するのみ。
・BALでは肺胞マクロファージ増加が特徴であり、色素沈着をともなった
マクロファージが認識されることが多い。DIPではリンパ球・好中球・時に好酸球
上昇がみられるが、RB-ILDでは90%以上が肺胞マクロファージによって構成。
・胸部レントゲンでは以下の通り。
気管支壁の肥厚75%
スリガラス陰影57%
正常14%
・HRCTでは、
Ill-defined ground glass centrilobular nodules
斑状のGGO( ⇔ DIPはびまん性)
スリガラス影(50%)
気管支壁の肥厚(90%)
上葉優位の分布( ⇔ DIPは下葉優位)
LAA
fibrosisはみられない(honeycombing lungはない) といった特徴がある。 ●RB-ILDの病理学的所見
・RBの所見と同じである。
①(呼吸)細気管支中心性にみられること
②呼吸細気管支、肺胞管ならびに細気管支周囲に褐色調の豊富な細胞質を
有するマクロファージの集まり
③細気管支から連続する肺胞壁での軽度線維化と散在性リンパ球や組織球浸潤
④II型上皮や立方状の細気管支上皮の過形成
⑤しばしば混在する小葉中心性肺気腫
・基本的に細気管支中心性の病変分布である。
・膜性細気管支のリンパ球や組織球などの炎症細胞浸潤と
上皮剥離さらに褐色マクロファージ(炭粉貪食マクロファージpigmented
macrophages)が呼吸細気管支の内腔と周辺の肺胞道、肺胞内にみられる。
・fibrosisはみられない ●RB-ILDの病理と画像の対比
①スリガラス影:
air spaceのマクロファージと粘液の集積、軽度の間質の炎症
や線維化、alveolitisを伴う肺胞壁の肥厚に相当
Radiology 1993; 186: 643-51
②(小葉中心性)小葉中心性粒状影:
細気管支周囲の線維化を伴う細気管支拡張に相当
Radiology 1993; 186: 643-51
RBの可能性のほかに、喫煙者としての普遍的所見である
小葉中心性線維性変化の可能性も示唆されている。
気管支学 2000 ;22: 337-42
●RB-ILDの治療
・禁煙
・コルチコステロイドは反応性良好
・10年生存率は100%
3.CPFE(combined pulmonary fibrosis and emphysema)
AEF(airspace enlargement with fibrosis)
臨床医は、ときに肺気腫と間質性肺疾患の合併例に遭遇するが、
CHESTの報告によればIPF110例のうち31例に気腫を合併していた。
Chest 2009, doi:10.1378/chest.08-2306
2005年にCottinらが上肺野優位に肺気腫、下肺野にILDがみられる61症例を
取り上げ、combined pulmonary fibrosis and emphysema (CPFE)という
概念を提唱したのをきっかけに、この病態に注目が集まるようになった。
Eur Respir J 2005; 26: 586-593
<Cottinらの報告 Eur Respir J 2005; 26: 586-593>
画像上IPFあるいはfibrosing NSIPパターンが全体の84%を占め、
組織があった8例のうち5例はUIPで、その他DIP、OP、分類不能型IPが
それぞれ1例ずつであった。肺気腫病変については
centrilobular emphysema が95%、paraseptal emphysemaが93%だった。
全体の98%がDLCOの低下がみられた。しかし、1秒率が低下していたのは
49%、拘束性障害を呈していたのは21%であった。これは過去の他の報告でも同様。
Respir Med 2005; 99: 948-954
Respiration 2008; 75: 411-417
Respir Med 2009, doi:10.1016
終末細気管支より末梢の気腔が拡大している病態を
RAE:respiratory airspace enlargementと呼ぶが、
RAEは肺胞構造の破壊のないものと構造破壊を伴うものに分類される。
明らかな線維化がみられないものを気腫と定義し、線維化を伴うものを
airspace enlargement with fibrosis (AEF)と呼ばれる。
Am Rev Respir Dis 1985; 132: 182-185
文責"倉原優"
・喫煙者は90%程度で、RB-ILDよりも少ない。
Katzenstein ALA. Surgical pathology of nonneoplastic lung disease. In : Katzenstein ALA, ed. Major Problem in Pathology vol 13. 4th ed. WB
Saunders Company, 2006 ; 61―66.
・好発年齢は40~50歳
・亜急性の咳嗽、呼吸困難がみられる。一般的にRB-ILDより症状は強いとされている。
・男女比は2:1
・半数にばち指がみられる。
※鑑別として以下の疾患が挙げられる
Subacute extrinsic allergic alveolitis、PCP、Sarcoidosis
Drug toxicity、Asbestosis、PLCH、UIP、NSIP
●DIPの画像所見
・びまん性GGO
・下葉優位でかつ胸膜直下の陰影
・胸部CT では全例にすりガラス影を認め、
下肺野優位73%,中肺野優位14%,上肺野優位14%以下
・末梢分布優位は59%
Radiology 1993 ; 187 :787―790.
・fibrosisはみられない
・肺実質一様におよぶ
・肺胞マクロファージの高度の肺胞腔内の集まり
・肺胞隔壁の軽~中等度の線維性肥厚
・間質への軽度の慢性炎症細胞浸潤
RB-ILDとDIPの違いは、病変が呼吸細気管支中心性分布かびまん性分布かである。
・末期になると線維化が進行し、DIP/Pの認識は困難となり、
国際分類ではf-NSIP patternと病理診断される。
Histopathology 2004; 45: 904-12
・一般的に禁煙によって軽快。
・ステロイド治療に対する反応もUIP に比べて良好と言われている。
・実際には禁煙指導と同時にステロイド治療が行われることが多く、
DIP に対する禁煙単独の効果を評価することは困難である。
Chest 2005 ; 127 :178―184.
・10年生存率は70%
Mayo Clin Proc 1989 ; 64 : 1373―1380.
2.RB-ILD:Respiratory Bronchiolitis Associated Interstitial Lung Disease
●RB-ILDの概念
1989年、Yousemらが18例のRBに合併する間質性肺炎を
DIPとは別にRB-ILDとして概念を明確にした。
Mayo Clin Proc 1989; 64: 1373-80
現在、ATS/ERSコンセンサスに準じて、RB-ILDはIIPsの一臨床診断名と
されており、病理像はRBと認識されている。
●RB-ILDの臨床所見
・通常は無症状で、咳嗽や呼吸困難感がみられることもある。
・DIPよりも症状は軽度であることが多いとされている。
・近年の報告では、RB-ILD VS DIP で
呼吸困難感 75% VS 87%
咳嗽 50% VS 43%
胸痛 8% VS 17%
肺雑音 42% VS 57% と差がない。
・40~50歳が好発年齢
・男女比=1:1
・喫煙歴が必ずあり、ex-smokerでも禁煙後半年以内のことが多い。
また、他のILDよりもheavy smokerのことが多い。
Chest 2003; 124: 1199-1205
・両側性に吸気時後半のcrackleを聴取する
●RB-ILDの検査所見
・血液検査では特記すべき特徴はない。
・抗核抗体はDIPにおいて陽性例が散見される一方、RB-ILDでは全例陰性である。
J Bronchol 2004; 11: 160-4
・動脈血液ガス分析は、正常または軽度な低酸素血症
・呼吸機能検査では軽度の混合性換気障害を呈するのみ。
・BALでは肺胞マクロファージ増加が特徴であり、色素沈着をともなった
マクロファージが認識されることが多い。DIPではリンパ球・好中球・時に好酸球
上昇がみられるが、RB-ILDでは90%以上が肺胞マクロファージによって構成。
・胸部レントゲンでは以下の通り。
気管支壁の肥厚75%
スリガラス陰影57%
正常14%
・HRCTでは、
Ill-defined ground glass centrilobular nodules
斑状のGGO( ⇔ DIPはびまん性)
スリガラス影(50%)
気管支壁の肥厚(90%)
上葉優位の分布( ⇔ DIPは下葉優位)
LAA
fibrosisはみられない(honeycombing lungはない) といった特徴がある。
・RBの所見と同じである。
①(呼吸)細気管支中心性にみられること
②呼吸細気管支、肺胞管ならびに細気管支周囲に褐色調の豊富な細胞質を
有するマクロファージの集まり
③細気管支から連続する肺胞壁での軽度線維化と散在性リンパ球や組織球浸潤
④II型上皮や立方状の細気管支上皮の過形成
⑤しばしば混在する小葉中心性肺気腫
・基本的に細気管支中心性の病変分布である。
・膜性細気管支のリンパ球や組織球などの炎症細胞浸潤と
上皮剥離さらに褐色マクロファージ(炭粉貪食マクロファージpigmented
macrophages)が呼吸細気管支の内腔と周辺の肺胞道、肺胞内にみられる。
・fibrosisはみられない
①スリガラス影:
air spaceのマクロファージと粘液の集積、軽度の間質の炎症
や線維化、alveolitisを伴う肺胞壁の肥厚に相当
Radiology 1993; 186: 643-51
②(小葉中心性)小葉中心性粒状影:
細気管支周囲の線維化を伴う細気管支拡張に相当
Radiology 1993; 186: 643-51
RBの可能性のほかに、喫煙者としての普遍的所見である
小葉中心性線維性変化の可能性も示唆されている。
気管支学 2000 ;22: 337-42
●RB-ILDの治療
・禁煙
・コルチコステロイドは反応性良好
・10年生存率は100%
3.CPFE(combined pulmonary fibrosis and emphysema)
AEF(airspace enlargement with fibrosis)
臨床医は、ときに肺気腫と間質性肺疾患の合併例に遭遇するが、
CHESTの報告によればIPF110例のうち31例に気腫を合併していた。
Chest 2009, doi:10.1378/chest.08-2306
2005年にCottinらが上肺野優位に肺気腫、下肺野にILDがみられる61症例を
取り上げ、combined pulmonary fibrosis and emphysema (CPFE)という
概念を提唱したのをきっかけに、この病態に注目が集まるようになった。
Eur Respir J 2005; 26: 586-593
<Cottinらの報告 Eur Respir J 2005; 26: 586-593>
画像上IPFあるいはfibrosing NSIPパターンが全体の84%を占め、
組織があった8例のうち5例はUIPで、その他DIP、OP、分類不能型IPが
それぞれ1例ずつであった。肺気腫病変については
centrilobular emphysema が95%、paraseptal emphysemaが93%だった。
全体の98%がDLCOの低下がみられた。しかし、1秒率が低下していたのは
49%、拘束性障害を呈していたのは21%であった。これは過去の他の報告でも同様。
Respir Med 2005; 99: 948-954
Respiration 2008; 75: 411-417
Respir Med 2009, doi:10.1016
終末細気管支より末梢の気腔が拡大している病態を
RAE:respiratory airspace enlargementと呼ぶが、
RAEは肺胞構造の破壊のないものと構造破壊を伴うものに分類される。
明らかな線維化がみられないものを気腫と定義し、線維化を伴うものを
airspace enlargement with fibrosis (AEF)と呼ばれる。
Am Rev Respir Dis 1985; 132: 182-185
文責"倉原優"
by otowelt
| 2010-08-26 06:28
| びまん性肺疾患