ゲフィチニブとエルロチニブの違い

イレッサとタルセバは同じEGFR-TKIだが、一体何が違うのか、
イレッサでPDになったらタルセバは使えるのかどうなのか???
この疑問をずっと持っていたのだが、わかりうる範囲で勉強したい。

胃潰瘍に対してラベプラゾールとオメプラゾールは同じPPIなのに
何が違うかというのとなんだか似ているような気もするのだが、
エビデンスが集積されたオンコロジーという分野であるため
その差異にはオンコロジストは慎重にならないといけない。

●ゲフィチニブとエルロチニブの違い (↓クリックすると見やすく拡大)
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ゲフィチニブとエルロチニブを比較すると、HER1/EGFRに対する
IC50値ではゲフィチニブ23nM、エルロチニブは2nMである。
すなわち、よりエルロチニブの方が低用量でEGFRに対する阻害作用を有する
          Cancer Res 1997; 57: 4838-48
          Expert Opinion Drug Evaluation 2005; 6: 985-93

AUCの比較では、エルロチニブ標準用量150mg/日のCmaxと同等のAUCを
ゲフィチニブで達成するには、臨床用量の約3倍である700 mg/日の投与が必要。
          J Clin Oncol 2001; 19: 3267-79
          J Clin Oncol 2002; 20: 2240-50

EGFR遺伝子変異陰性の肺癌の増殖抑制において、ゲフィチニブ250mg/日投与
ではトラフ値が0.4μMと、増殖抑制に必要な2.0μMには到達しない。
          N Engl J Med 2004; 350: 2129-39
しかしながら、エルロチニブにおいては増殖抑制に必要である3μMに対して
150 mg/日投与のトラフ値が3.5μMと増殖抑制が期待できる。
          J Clin Oncol 2006; 66: 8163-71
また、EGFR遺伝子変異陰性ではエルロチニブの方がゲフィチニブよりKd値が
小さく、EGFRに結合しやすい可能性がある(解離しにくい)。
          Nat Biotechnol 2008; 26: 127-32
実際にBR.21試験とSATURN試験においてPFSとOSの延長が認められており、
エルロチニブはEGFR遺伝子変異陰性例に対しても有用であると考えられている。
          J Clin Oncol 2008; 26: 4268-75
          The Lancet Oncology. May 20, 2010.

ゲフィチニブ治療で奏効後耐性化してからエルロチニブに感受性を示した報告
では耐性となった時点でもともと有していたL858R の変異に加え
L747S変異が生じていた。
          J Clin Oncol. 2008;26:1182-1186.
逆にエルロチニブで耐性化後、ゲフィチニブ感受性を示した報告では
L858R に加えE884K変異が加わっていた。
          Nat Clin Pract Oncol. 2006;3:50-57.
ゆえに、EGFR遺伝子変異において
L858R+L747S:エルロチニブ>ゲフィチニブ
L858R+E884K:ゲフィチニブ>エルロチニブ
という可能性も考えられる。

ゲフィチニブで効果がみられない・耐性であった場合にもエルロチニブが
効果を発揮する報告もあるが、現段階ではエビデンスとしては不明である。
          J Clin Oncol. 2007;25:2528-2533.
          J Clin Oncol.2008;26:1184-1186.


勉強して感じたのは、基本的にはEGFR-TKIであるが違う構造物であることは
化学式から明らかである。そのため、エビデンスの集積は個々の薬剤別に行われ
用量設定も個々におこなわれている。ゆえに、イレッサが効かなかった場合に
タルセバが効くのか効かないのかという議論は、現段階ではエビデンス不足であると
考えられる。

by otowelt | 2011-06-24 17:13 | 肺癌・その他腫瘍

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