月経随伴性気胸

●月経随伴性気胸について
病態:異所性子宮内膜症による気胸で、90%以上は右側に起こる。
症状:月経開始3日前~5日後の胸痛、呼吸困難、血痰、喀血など
診断:組織学的診断が得られることは少なく、いまだ診断基準が一定していない。

●伴場の診断基準
 ①月経開始3日前から5日後ぐらいまでの間に気胸が発症
 ②2ヶ月に1回以上の間隔で、3回以上の気胸がみられる
 ③発症頻度が少ない場合には、術中に横隔膜欠損孔や胸腔内子宮内膜症が
  証明されることが必要であるが、横隔膜欠損孔や胸腔内子宮内膜症が
  両者とも証明されない場合、通常の気胸の原因であるブラ・ブレブが存在しない

●月経随伴性気胸の発生機序
1.血行性転移説・リンパ行性転移説
   子宮内膜組織が子宮から静脈系、あるいはリンパ行性に侵入し、
   胸腔内臓器に生着し増殖するという説。人工妊娠中絶、帝王切開などの子宮
   への手術操作や正常分娩での操作が誘因となる。
2.播種説・遊走説
   子宮内膜組織が卵管から腹腔内へと逆流して、腹膜・横隔膜を介し、
   遊走し播種するという説。
3.体腔上皮化生説
   胸膜中皮の化生により子宮内膜組織ができるという説。
4.誘導説
   未知の物質が子宮内膜から分泌されて、未分化の中胚葉から
   子宮内膜組織を形成させるという説。

●月経随伴性気胸の所見
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写真のような横隔膜にできることもあれば、肺内にできることもある。
(右は切除した横隔膜、欠損部分が異所性子宮内膜症である)
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異所性子宮内膜症であるため、プロゲステロン・エストロゲンの
免疫染色がともに陽性となることが多い。

●月経随伴性気胸の治療
1.外科的治療
・横隔膜病変の切除縫縮
・手術時期について、肉眼で同定不可能な病変の存在も予想されることから、
 同定しやすい月経時に手術を行うべきとの報告がある。
・卵巣摘出術または卵管結紮術などがあるが、挙児希望患者では選択できない。
・バイクリルメッシュとフィブリン糊を用いた横隔膜被覆の試みも報告されている。

2.内科的治療
・偽閉経療法・偽妊娠療法などのホルモン療法がある
①GnRHアナログ
 持続投与によりGn-RHに対する下垂体からのゴナドトロピン分泌反応が低下し、
 その結果、卵巣からのエストロゲン分泌が抑制されることにより内膜症病変が
 退縮するとされている。副作用として血栓症、骨塩量低下、更年期障害など。
②ダナゾール
 テストステロン誘導体であり、下垂体からのゴナドトロピン分泌を抑制する。
 副作用として男性化がみられる。
③低用量ピル
 消化器副作用が多いものの、比較的安全に長期投与が可能。

●再発予防に対する治療の考察
・Gn-RH療法単独では63%で有効であったが、副作用の問題から2年以上
 継続できたのは9%のみ。
伴場ら:月経随伴性気胸に対する治療法の検討:日胸臨;42:571-577, 1983
・外科治療後の再発率は高く、開胸横隔膜病変切除例で21%の再発率が報告。
    谷村ら:月経随伴性気胸に手術は必要か:
    自験および文献報告例の検討 日胸;57:979-984,1998

・手術症例の約3分の1の症例で再発がみられ、特に術後のホルモン療法を
 併用しなかった症例で多い傾向がみられた。
    大政ら:手術を施行した月経随伴性気胸5例の検討:
     日呼外会誌;14:846-849,2000

・外科的治療とホルモン療法を組み合わせた治療が望ましい。    
文責"倉原優"

by otowelt | 2012-03-02 07:24 | びまん性肺疾患

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