NEJMから発表:NSCLC患者におけるALK阻害剤

●今回のASCO2010を踏まえたNEJMの発表
ALK融合遺伝子のあるNSCLC患者を対象とした
ALK阻害剤PF-02341066(crizotinib)の結果が
2010年10月28日付のNEJMで発表された。
既にASCO2010で発表されており、全世界的に話題になったので
呼吸器内科の先生であれば、誰しもがこの結果をご存知だと思う。
first authorはEunice L. Kwak医師。

Anaplastic Lymphoma Kinase Inhibition in Non–Small-Cell Lung Cancer
N Engl J Med 2010;363:1693-703.


背景:
 NSCLC患者の2~7%にが存在し、EGFR-TKIに対する反応が乏しい
 ことが知られている。ALK阻害剤PF-02341066(crizotinib)は
 c-MET(HGFR)とALKの受容体チロシンキナーゼの双方を阻害する経口剤で、
 NSCLC細胞のアポトーシスを誘導する。
 phase I試験。

方法:
 約1500人のNSCLC患者をスクリーニングし、
 ALK融合遺伝子を有するNSCLC患者82人(平均年齢51歳)を対象とし、
 phase I試験で決定した推奨量による臨床試験を施行した。
 PF-02341066の推奨用量は250mgの1日2回投与とされた。

結果:
 2010年4月7日までに登録された82例について解析。平均年齢51歳、
 ECOG PSは0~2が81例(99%)、白人46例(56%)、
 アジア系29例(35%)、never smoker 62例(76%)、former smoker 19例
 (23%)、腺癌79例(96%)、前化学療法レジメン数は0が5例(6%)、
 1が27例(33%)、2が15例(18%)、3以上が34例(41%)。
 非喫煙者と前喫煙者を合わせると81人(99%)にのぼる。
 治療8週後に奏効を示した患者の割合に基づいて、DCRを算出した。
 RRは57%、SDは33%。PFSの中央値は未到達だが、
 Grade3有害事象は、ALT上昇4人(5%)、AST上昇5人(6%)、
 リンパ球減少症2人(2%)など。
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結論:
 ALK融合遺伝子を有するほとんどのNSCLC患者において、ALK阻害薬は
 腫瘍縮小あるいは不変(SD)をもたらす。


●復習:EML4-ALKとは
喫煙歴を持つ肺腺癌患者にEML4遺伝子の半分とALK遺伝子の半分が
融合する染色体異常で生じたEML4-ALK遺伝子によって、癌化が起こる
可能性があることがわかっている。
ALKはEGFRと同様にチロシンキナーゼを作る遺伝子の一種だが、
そのキナーゼ活性を司る領域がEML4と融合することで、
強い癌化能を有する活性型チロシンキナーゼになっている。
EML4遺伝子とALK遺伝子はどちらも2番染色体短腕上の近いところに、
互いに反対向きに存在している。従って上記のEML4-ALKが作られるためには、
2番染色体短腕上の短い領域が逆位になる必要がある。
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微小管会合蛋白echinoderm microtubule associated protein-like 4(EML4)と
受容体型チロシンキナーゼanaplastic lymphoma kinase(ALK)が融合した
新しい癌化キナーゼ、EML4-ALKが非小細胞肺癌(NSCLC)の約5%に発現している。
Identification of genotype-correlated sensitivity to selective kinase inhibitors by using high-throughput tumor cell line profiling.
Proc. Natl. Acad. Sci. U S A, 104: 19936-19941, 2007.


●復習:EML4-ALK陽性患者さんの特徴
現在のコンセンサスとしては、
1)若年発症の肺腺癌
2)非喫煙者
3)粘液産生を伴い、腺房状構造を示す低分化腺癌
4)BACパターンが見られない
5)EGFRおよびRAS変異陽性例にはほとんどみられない

以上の特徴をEML4-ALK-adenocarcinomaは有する。
ただ、BACパターンでもEML4-ALK positiveの症例も報告されている。
EML4-ALK lung cancers are characterized by rare other mutations, a TTF-1 cell lineage, an acinar histology, and young onset.
Mod Pathol 2009, 22: 508-515
The EML4-ALK fusion gene is involved in various histologic types of lung cancers from nonsmokers with wild-type EGFR and KRAS. Cancer. 2009 Apr 15;115(8):1723-33.

●メモ
NSCLCのセカンドラインとして、ペメトレキセド(アリムタ)あるいは
ドセタキセルとcrizotinibを比較する第III相試験(PROFILE 1007試験)と、
PROFILE 1007試験のペメトレキセド/ドセタキセル群の後治療を対象とする
crizotinib単アームの第Ⅱ相試験(PROFILE1005試験)が進行中。

by otowelt | 2010-10-28 11:45 | 肺癌・その他腫瘍

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