集中治療室における、電子デバイスを用いた非内視鏡的空腸チューブ留置は迅速かつ安全

ICUなどで胃ではなく空腸にチューブを留置することがあるが、これについては
「胃管に耐えうることができない症例においては推奨」とガイドラインに記載されている。
・ESPEN Guidelines on Enteral Nutrition: Intensive care. Clin Nutr 2006; 25:210–223
・Guidelines for the Provision and Assessment of Nutrition Support Therapy in the Adult Critically Ill Patient: Society of Critical Care Medicine (SCCM) and American Society for Parenteral and Enteral Nutrition (ASPEN).J Parenter Enteral Nutr 2009; 33:277–316
・Canadian clinical practice guidelines for nutrition support in mechanically ventilated, critically ill adult patients. J Parenter Enteral Nutr 2003; 27:355–373


全例ではないが、集中治療の現場では空腸チューブが選択されることにメリットが
あると考えられている流れがある。しかしながら、費用対効果の点からカメラを
つっこんでまで空腸にチューブを留置するメリットも多くないのではという意見もある。
Endoscopic placement of enteral feeding catheters. Curr Opin Gastroenterol 2006; 22:546–550

CORTRAK®という、空腸チューブ留置を容易にするデバイスがある。 これは、
デジタル画面でリアリタイムにチューブが挿入されているのを見ながら用手的に
入れることのできるものであり、侵襲的な内視鏡処置が不要である。
夢のような機械だが、空腸に限らず胃管もこれで挿入できそうだ。
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CORPAK MedSystems
URL: http://www.corpakmedsystems.com/Product_Main/cortrak.html

Crit Care Medから、CORTRAK®と通常内視鏡による栄養チューブの
空腸留置におけるガチンコ対決の論文が出た。どうでもいいが、
「head-to-head comparison」は「ガチンコ対決」という訳が個人的にしっくりくる。
選択基準は、ガイドライン通り”胃内チューブ栄養に耐えられない者”となっている。

Jejunal tube placement in critically ill patients: A prospective, randomized trial comparing the endoscopic technique with the electromagnetically visualized method
Crit Care Med 2011; 39:73–77


目的、デザイン、セッティング:
 新しい電子ビジュアル空腸チューブ留置(CORTRAK®)と、通常の
 内視鏡的空腸チューブ留置を直接比較(head-to-head comparison)した。
 これはプロスペクティブランダム化試験であり、大学病院ICU2施設でおこなわれた。

患者およびインターベンション:
 合計66人の重症患者で、胃内栄養に耐えられないものを対象とした。
 電子デバイス群と通常内視鏡群に2:1に割り付けた。
 正しく空腸に24時間後に留置されているかどうかで判断した。

結果:
 通常内視鏡方法22人の患者のうち、21人の患者が正しく空腸留置できた。
 電子デバイス群44人の患者のうち、40人の患者が正しく空腸留置できた。
 (95% vs. 91%; relative risk 0.9524, CI 0.804–1.127, p = .571)
 残りの4人はその後内視鏡で正しく留置できた。
 正しく留置するまでに要した時間は両群ともに差がみられず、鼻出血も同等であった。
 電子デバイスの場合、最初のトライで成功する傾向にあった。 
 この成功の原因として、BMIが高値であること、嘔気がないことが挙げられる。
 ※BMIが高値の場合内視鏡も容易になることはすでに知られている。
  Significance of colonoscope length in cecal insertion time. Gastrointest Endosc 2009; 69:503–508


結論:
 直接比較により、電子デバイスを用いた非内視鏡的空腸チューブ留置は
 通常の内視鏡処置と同様に、迅速かつ安全にICU患者において処置が可能である。
by otowelt | 2010-12-27 06:48 | 集中治療

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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