ハイチのコレラ集団発生は南アジア株由来の可能性がある

Vibrio cholerae O1には、古典型とEl Tor型がある。
由来は知らなかったのだが、エルトールというのは港町らしく
1906年発見されたコレラ株である。
El Tor cholera with severe disease: a new threat to Asia and beyond. Epidemiol Infect 2010;138:347-52.

The Origin of the Haitian Cholera Outbreak Strain
N Engl J Med 2011; 364:33-42


背景:
 コレラは1991年より中南米での発生が多いが、100年もの間ハイチでの流行は
 みられなかった。しかしながら最近、ハイチでコレラの深刻な集団感染がみられている。

方法:
 3世代単一分子RT-DNA解析を使用して、現在ハイチで集団感染がみられている
 Vibrio choleraeの臨床分離株2株、1991年中南米でコレラ発生を
 引き起こした1株、2002年、2008年に南アジアで分離された2 株のゲノム配列を
 調べた。1次配列データを使用し、上記の5 株のゲノムと、これまでに得られた
 合計23種類のV. cholerae株の部分的なゲノム配列を比較して、
 ハイチのコレラの由来と考えられる菌株を調べた。

結果:
 ハイチの分離株、2002年と2008年にバングラデシュで分離された
 V. cholerae El Tor O1 mutantとが非常に似通っていた。
 また、ハイチの分離株のゲノム変異解析から、南米でみられる分離株とは
 似通っていないことがわかった。

結論:
 ハイチでの流行は、地理的にかなり離れた場所から、人間的な活動により
 V. cholerae株がひろがった結果であると思われる。
by otowelt | 2011-01-11 06:04 | 感染症全般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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