イレッサ訴訟の和解勧告に異論


日経メディカルオンラインより

 回答期限が1月28日に迫っているイレッサ訴訟の和解勧告について、関係学会や医療機関は1月24日、国や製薬企業の責任を問うべきでないなどとする見解を相次いで発表した。
 日本臨床腫瘍学会は、「承認前に得られる情報には限りがあり、承認後に行われた医療行為の結果について、承認時の医学的・科学的判断がそのまま常に当てはまるわけではない」と主張。
 日本肺癌学会も、ゲフィチニブ(商品名イレッサ)の効果や副作用については承認後、多くの患者に使用された結果明らかになったものであり、「重篤な間質性肺炎発生の可能性を承認前や、承認後ごく早期に予見することは極めて困難であったと思われる」との見解を示した上で、承認後に蓄積された知見に基づいて、承認前や承認直後の国や製薬企業の判断や対応に責任を問うことについて、「極めて慎重であるべき」などとした。
 このほか、国立がん研究センターも同日、同様の見解を発表。理事長の嘉山孝正氏は緊急会見で、「イレッサ訴訟は過去の薬害などとは異なる。間質性肺炎はゲフィチニブの副作用であり、その副作用について誰かの責任を問うと、医療そのものが成り立たなくなる。また、和解勧告に応じることは、国や製薬企業の違法性を認めることであり、今後の薬事行政の萎縮をもたらす」などと訴えた。その上で、抗癌剤が現在、医薬品副作用被害救済制度の対象外となっていることに触れ、「不幸にも抗癌剤の副作用で死亡した患者などについては救済制度などで補償すべきであり、そのための国民的な議論を行うべきだ」と話した。
 イレッサ訴訟は、非小細胞肺癌治療薬であるゲフィチニブの副作用で間質性肺炎を発症して死亡したなどとして、遺族や患者が国と輸入販売元であるアストラゼネカに損害賠償を求めているもの。
 ゲフィチニブは2002年7月に世界に先駆けて日本で承認された。発売後、国内ではゲフィチニブを服用して、間質性肺炎などの肺障害を発症する患者が続出。04年には、肺癌治療のためにゲフィチニブを服用し、間質性肺炎などの副作用で死亡または増悪したなどとする患者6人の遺族と患者1人が、国とアストラゼネカを相手取り、合計1億8150万円の損害賠償を求めて大阪地裁と東京地裁に提訴した。
 間質性肺炎は、ゲフィチニブの承認前からアストラゼネカや医薬品医療機器総合機構(PMDA)が副作用の1つとして認識しており、承認時の添付文書でも「重大な副作用」欄の4番目に間質性肺炎を挙げていた。これについて原告は、間質性肺炎は致死性の副作用であり、承認時の添付文書では注意喚起が不十分だったなどと主張している。
 東京地裁と大阪地裁は1月7日、イレッサ訴訟で和解を勧告。これまでの新聞報道などによれば、両地裁は承認時点での添付文書で副作用の1つである間質性肺炎についての注意喚起が十分でなかったとの見解を示したとされている。1月12日には原告が和解勧告の受け入れを表明し、原告全員の救済と謝罪に加え、抗癌剤の副作用で死亡した患者を救済する公的制度の創設や、再発防止に向けた取り組みなどを求めている。

by otowelt | 2011-01-27 06:34 | 肺癌・その他腫瘍

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