オセルタミビル耐性インフルエンザ

個人的な勉強も含めての記事。

●現在のインフルエンザについて
 2010年11月の時点では、全体的にAH3亜型(A香港型)が中心であったが
 2010年12月以降は、徐々にAH1pdm(新型インフルエンザH1N1)が増加、
 現在はAH1pdmが半数以上と最多で、次いでAH3亜型(A香港型)、B型と
 なっている。全国的にこの傾向であると思われる。
 2011年の現在のシーズンの3価混合ワクチンには、
 AH1pdm(新型インフルエンザH1N1)、AH3亜型(A香港型)、B型
 が含まれている。現在流行中のAH1pdmについては、NA蛋白に特徴的な
 アミノ酸変異すなわちH275Yをもつようなオセルタミビル耐性株が
 しばしば検出されている。

●オセルタミビル耐性AH1pdm
 2009/10シーズンにおけるオセルタミビル耐性AH1pdmの出現頻度は
 1.13%と低かったが、けいゆう病院からの報告ではこのタミフルそのものが
 耐性をもちやすい傾向であることが示唆された(2011年下記論文)。いずれ、
 前シーズンのようにタミフル耐性率がかなりの頻度に陥る可能性が示唆される。
 H275Y耐性マーカーをもつオセルタミビル耐性株は、IC50値の上昇がみられる
 が、ただ成人では臨床効果の低下がさほどでもないとされている
 H275YだけでなくI223Rにアミノ酸置換をもったウイルスは、
 オセルタミビルないしはペラミビルに対して強い耐性がみられるとされており、
 ザナミビルに対しても耐性があると考えられている。構造の類似性から
 ペラミビルとオセルタミビルは交差耐性、交差感受性があると考えられ、
 ザナミビルとラニナミビルは交差耐性、交差感受性があると考えられている。
 ※N2表記法のため、論文によってはH275Y→H274Yとなっていることもある。
 機序としては、
 ・ノイラミニダーゼ活性部位のアミノ酸置換により立体構造が変化し、
  オセルタミビルが簡単にノイラミニダーゼに結合できなくなってしまう
 ・ヘマグルチニンにアミノ酸置換変異が生じた結果、感染細胞表面に存在する
  シアル酸との結合力が低下し、インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼ
  活性の依存度が低くなる
 という2点がよく教科書的に挙げられている。
Monitoring of viral susceptibility : new challenges with the development of influenza NA inhibitors. Rev. Med. Virol. 10: 45-55, 2000.
 オセルタミビル耐性ウイルスの多くはノイラミニダーゼの変異のみである。

●ICU入室例におけるAH1pdm肺炎
 ICU入室例における、AH1pdm症例において23%が他の細菌あるいは
 ウイルスと混合感染をしているとされている。
 また、148施設における前向き観察研究において、AH1pdm肺炎における
 ステロイド使用については、投与群と非投与群では
 全死亡については、投与群23.8%、非投与群18.3%で有意差はみられなかった
 (p=0.16)。人工呼吸器、ショックなどの状態で補正、Cox回帰分析を
 したところ、ステロイド投与と死亡率は相関していなかった。
 (2010 Interscience Conference on Antimicrobial Agents and Chemotherapy
 肺炎球菌とインフルエンザウイルスには
 ノイラミニダーゼ活性におけるシナジーがみられるため注意が必要である。
 すなわち、インフルエンザ肺炎においては混合感染を常に考慮すべきである。
Influenza virus neuraminidase contributes to secondary bacterial pneumonia. J Infect Dis 2005; 192:249.
 インフルエンザ全死亡のうち、25%が続発性細菌性肺炎である。
The global impact of influenza on morbidity and mortality. Vaccine 1999; 17 Suppl 1:S3.

●AH1pdm重症化予測因子
 16~49歳:オッズ比2.39(95%CI 1.05~5.47)
 合併症の存在:オッズ比2.93(95%CI 1.41~6.09)
 病的肥満:オッズ比6.74(95%CI 2.25~20.19)
 細菌重感染:オッズ比2.74(95%CI 1.11~7.00)
 72時間以内の抗ウイルス治療:オッズ比0.32(95%CI 0.16~0.6)
 男性:オッズ比0.74(95%CI 0.38~1.45)
 (2010 Interscience Conference on Antimicrobial Agents and Chemotherapy

Frequency of Drug-resistant Viruses and Virus Shedding in Pediatric Influenza Patients Treated With Neuraminidase Inhibitors
Clin Infect Dis. (2011) doi: 10.1093/cid/ciq183 First published online: January 19, 2011


方法:
 2005/06、2006/07、2007/08、2008/09の4シーズンに、
 日本のけいゆう病院をはじめとする4病院で迅速診断キットで陽性の
 患児144人を対象とした。発症から48時間以内に、オセルタミビル(タミフル)
 あるいはザナミビル(リレンザ)の投与を開始。タミフル投与患者は
 72人(タミフル群)、リレンザを投与した患者は72人(リレンザ群)。
 タミフル群が4mg/kg/日 分2を5日間、リレンザ群が20mg/日 分2を5日間。
 検体は、初回受診時の薬剤投与前、投与開始3~4日、投与開始5~7日に採取。

結果:
 2群間で、インフルエンザウイルスのタイプ、患者年齢、性別、ワクチン歴、
 臨床経過に差はなかった。タミフルで治療した患者の6人から
 耐性ウイルスが確認された。薬剤耐性発生頻度は8.3%。一方、
 リレンザで治療した患者からは耐性ウイルスは検出されなかった(p=0.03)。
 6人の検体から分離されたタミフル耐性ウイルスは、
 A香港型(Arg292Lys):3例
 Aソ連型(His274Tyr):2例
 A香港型(Glu119Val):1例
 ウイルスの排出期間についても、有意差なし。ただ、投与開始5~7日では、
 タミフル群が69%(33人中23人)に対し、リレンザ群39%(33人中13人)
 であった(p=0.008)。

結論:
 リレンザはタミフルよりウイルス排出を効率的に抑制可能である

by otowelt | 2011-02-04 23:01 | 感染症全般

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