エキノキャンディン系抗真菌薬

●キャンディン系抗真菌薬について
・概論
 1974年に環状ヘキサペプチドであるechinocandin B が
 Aspergillus nidulans var.echinatus から分離。
 これにより、新たな抗真菌薬の開発が進んだ。
Echinocandin B,ein neuartiges polipeptide–antibiotikum aus Aspergillus nidulans var.echinatus: Isolierung und Bausteine. Helvetica Chimica Acta 57: 2459~2477,1974
 ミカファンギンは福島県木戸川から分離された糸状菌Coleophoma empetri
 の培養液より単離されたリポペプチド抗真菌物質FR901379の側鎖変換により
 合成された化合物である。ミカファンギンをはじめとするエキノキャンディン系は、
 真菌細胞壁のβ-1-3グルカン合成酵素に作用し抗菌力を発揮する。
 きわめて分子量が大きく、腸管から吸収されないため経口薬がない。
 アメリカではFDA によって最初にカスポファンギン(2001年)、
 続いてミカファンギン(2005年)、アニデュラファンギン(2006年)
 が承認された。日本はミカファンギンが2002年に承認されている。
e0156318_2313740.jpg
・作用機序
 エキノキャンディン系抗真菌薬の標的は、β-1-3-グルカン合成酵素の
 触媒サブユニットと考えられている。
Identification of the FKS1 gene of Candida albicans as the essential target of 1,3-beta-D-glucan synthase inhibitors. Antimicrob Agents Chemother 41: 2471-2479, 1997.
 エキノキャンディンによって酵素活性が阻害されると、β-1,3-グルカン
 の合成がストップし、菌が正常形態を保持できなくなる。
 エキノキャンディン耐性株ではFksp の特定領域に単一アミノ酸置換が
 みられるため、この部位がエキノキャンディン結合部位である可能性がある。
e0156318_2375025.jpg
・スペクトラム
 抗真菌薬の中では、スペクトラムが広いのが特徴である。
 アゾール系に耐性の菌種や菌株(Candida glabrata,C. kruseiなど)に
 抗真菌活性を示す点で利点がある。
 エキノキャンディン系はカンジダ属の主要な菌種(C. albicans,C. glabrata,
 C. krusei)とアスペルギルス属に高い感受性がある。カンジダ属には殺菌的、
 アスペルギルス属には静菌的である。
 C. glabrata,C. kruseiは、第一選択として臨床的にはエキノキャンディン系
 あるいはポリエン系が選ばれる。C. parapsilosisではエキノキャンディン系
 が効きにくいため,フルコナゾールないしポリエン系を選択するべきである。
 また、エキノキャンディンは、他の薬剤が効きにくいバイオフィルム中の
 C. albicans に対しても抗菌活性を示すことが知られている。
In vitro susceptibility of invasive isolates of Candida spp. to anidulafungin, caspofungin, and micafungin: six years of global surveillance. J Clin Microbiol 46: 150-156, 2008.
In vitro activity of caspofungin against Candida albicans biofilms. Antimicrob Agents Chemother 46: 3591-3596, 2002.

 しかしながら、Cryptococcus neoformansやTrichosporon cutaneum
 のような担子菌類、糸状菌Fusarium、Mucor・Rhizopusなどの接合菌類
 は自然耐性である点は覚えておく必要がある。
Activities of antifungal agents against yeasts and filamentous fungi: assessment according to the methodology of the European Committee on Antimicrobial Susceptibility Testing. Antimicrob Agents Chemother 52: 3637-3641, 2008.

・代謝
 肝代謝であり、腎機能により投与量を調節する必要がない。
 また、CYP3A代謝活性には大きな影響をおよぼさないとされている。
 実際にCYP1A2、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、CYP2E1で代謝される
 7-エトキシレゾルフィン、トルブタミド、S-メフェニトイン、デブリソキン、クロルゾキサゾン
 の代謝をほとんど阻害しなかったとする報告もある。
In vitro におけるmicafungin の薬物相互作用.日化療会誌.2002;50(S-1):94-103.
 ラットに14C–MCFG を1 mg/kg 静脈内投与すると、アイソトープ標識
 薬剤は各組織に広く分布し、投与後5分で血漿中アイソトープ標識薬剤濃度
 より高値を示した組織は肺および腎臓。(それぞれ血漿中濃度の1.86・1.09 倍)
 脳にはほとんど移行しなかった(0.02倍)。
 また、尿路感染症にはエキノキャンディン系は実績がほとんどないため
 使わないほうが無難であろう。
 健康成人にミカファンギンの25、50、75mgを30分間、あるいは150mgを1時間で
 静脈内持続投与したときのT1/2、Vdss、CLtは投与量で差がみられず、
 T1/2が13.9±1.0時間、Vdss 0.228±0.016L/kg、
 CLt 0.197±0.018mL/min/kgであった。
Micafungin の高用量での薬物動態試験.日化療会誌.2002;50(S-1):155-184.

・副作用
 主なものは静脈炎や血管痛、あるいは発疹など軽度のアレルギー反応で、
 検査値異常では肝酵素の上昇、血清カリウム値の軽度の変動などが報告。
 ただ、ほかの抗真菌薬の副作用に比してかなり軽度と考えてよい。
 まれに好中球減少やアナフィラキシー様反応など重篤な副作用が出る。
 ガイドラインでは、肝障害時においてカスポファンギンだけは用量調節をすすめている。

・paradoxical effect
 感受性菌種がMIC以上の濃度で再び発育する現象である。
 in vitroでの報告が多い。まだ臨床では明らかになっていない。
 薬剤を除去すると菌は本来の感受性に戻るので、この現象はストレスに対する
 一時的な適応と考えられる。
 カスポファンギンの方がミカファンギンやアニデュラファンギンより
 paradoxical effectを起こしやすいといわれている。
Paradoxical effect of Echinocandins across Candida species in vitro: evidence for echinocandin-specific and candida species-related differences. Antimicrob Agents Chemother 51: 2257-2259, 2007.
 paradoxical effectは、菌種によって起こしやすいもの(C. albicans,
 C. tropicalis,C. krusei,C. parapsilosis)と起こしにくいもの
 (C. glabrata)がある。

・臨床使用
 カンジダ感染症においては、一般的にはalternativeの立場と覚えてよい。
 ただ、C. glabrata、C. krusei感染では推奨、C. parapsilosisでは非推奨。
 ただ、臨床的にparapsilosisでも効果ありと考える専門家もいる。
Echinocandins—an advance in the primary treatment of invasive candidiasis. N Engl J Med 2002; 347:2070–2.
Echinocandins for candidemia in adults without neutropenia. N Engl J Med 2006; 355:1154–9.

 新生児のカンジダ症では、耐性や副作用でフルコナゾールやAmB-dが使用できない
 場合可能としている。
 アスペルギルスにおいては、侵襲性アスペルギルス症での使用法がベースとなるが、
 ボリコナゾールより下位になるものの第二選択として位置づけられている。
Multicenter, noncomparative study of caspofungin in combination with other antifungals as salvage therapy in adults with invasive aspergillosis. Cancer
2006; 107:2888–97.
Micafungin (FK463), alone or in combination with other systemic antifungal agents, for the treatment of acute invasive aspergillosis. J Infect 2006; 53:337–49.

 少なくともポリエン系の抗真菌薬と同等であると考えられているのは
 以下の論文に基づくものと推察される。
Comparison of Caspofungin and Amphotericin B for Invasive Candidiasis. N Engl J Med 2002; 347:2020- 9

・使用量
 1例だが、
 カスポファンギン:loading dose of 70 mg → 50 mg daily
 アニデュラファンギン:loading dose of 200 mg →100 mg daily
 ミカファンギン:100 mg daily 最大量300mg/day

by otowelt | 2011-02-16 06:08 | 感染症全般

<< ペンタミジン 敗血症において、血清L-アルギ... >>