アストラゼネカ社へのイレッサの判決について

―――司法は製薬会社に責任ありとの判決を下した。
イレッサの判決については、おととい26日の一面トップ記事だったので
全国の呼吸器内科医が興味があるニュースだったと思う。

個人的には、読売新聞にも書いてあるように、
メディアが夢の薬と囃し立てたことも責任の一端を担っていると感じている。
また国家賠償法の違法性は認められなかったが、
行政面での責任は重いという意見は多い。

現在もイレッサの恩恵を受けながら服用している患者さんは多い。
今回の司法の決定に驚きと不安を隠せない患者さんも多数おられた。
今回の判決によって、患者さんたちの不安が助長されないようにと切に願う。
また、日経新聞はドラックラグの改善について触れているが、
今回の判決によりドラックラグが一層進むのではないかと、懸念している。


●イレッサ判決 国に責任はないのか(毎日新聞)
 肺がん治療薬イレッサの副作用で死亡した患者の遺族らが起こした損害賠償請求訴訟で、大阪地裁は販売元のアストラゼネカ社の責任を認め計6050万円の損害賠償を支払うよう命じた。どんなに画期的な薬でも、きちんと副作用情報を伝えなければならず、そのために多数の犠牲者を出した責任は取らなければならない、と判決は明確に示した。
 イレッサの添付文書には間質性肺炎という重大な副作用が記載されてはいたが、一番後ろの目立たない場所だった。それが十分な情報提供と言えるのかどうかが訴訟の焦点の一つだった。判決は「添付文書の重大な副作用欄の最初に間質性肺炎を記載すべきであり、そのような注意喚起が図られないまま販売されたイレッサは抗がん剤として通常有すべき安全性を欠いていたと言わざるを得ない」と指摘。同社に対して製造物責任法上の指示・警告上の欠陥があったことを認めた。
 イレッサは販売前から副作用の少ない「夢の新薬」と宣伝され、他に治療法のない肺がん患者らは期待を膨らませた。そうした状況も考えて副作用情報は提供されるべきだったのだ。販売後2年半で557人もの間質性肺炎による死者が出たのは、本来使用すべきでない患者にまで幅広く使われたためと言われる。「平均的な医師等が理解することができる程度に危険情報を提供しなければならない」と判決は指摘する。
 一方、国については「死亡を含む副作用の危険を高度の蓋然(がいぜん)性をもって認識することができなかった。国の措置は許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くとは認められない」として賠償請求を棄却した。行政指導に法的な拘束力はなく、同社が間質性肺炎を添付文書に記載することに消極的な態度を示していたため被害を防ぐことはできなかったというのだ。
 しかし、判決に先立って裁判所が出した和解所見では国の救済責任について認めていた。判決でも国の行った行政指導が「必ずしも万全な規制権限の行使であったとは言い難い」とも指摘している。国家賠償法の違法性を認めるまでには至らないが、国の行政指導に問題があったことを認めたと読み取るべきだろう。
 製薬会社が自社の製品にマイナスの情報を出したがらないのは過去の薬害でも繰り返されてきたことだ。だから国は適切な監督権限を行使するよう求められているのではないか。国がもっと踏み込んで指導していればイレッサの副作用被害はここまで広がらなかったに違いない。
 来月には東京地裁で判決が出る。国は重い教訓と受け止め、新薬の安全確保策を強化すべきである。

●イレッサ判決が求めるもの(日経新聞)
 肺がん治療薬「イレッサ」の副作用被害を巡る訴訟で、大阪地裁は、販売開始から3カ月の間に投与を始めたケースに限って、製薬会社に損害賠償を命じた。この期間に薬に添付した「使用上の注意」の副作用を警告する記載が不十分で、その結果、当時のイレッサには製造物責任法上の「製造物の欠陥」が生じていた、との判断だ。
 一方で、国の賠償責任は認めず、イレッサの新薬承認審査に安全性軽視の違法があったとの原告側の主張を退けた。不十分な注意文書を改めさせなかった、規制権限の不行使は「必ずしも万全な対応とは言い難い」と批判しつつも、賠償責任を負う違法はなかったとした。
 権限の不行使は「著しく合理性を欠く場合」にのみ違法になるとする最高裁判例に、国は救われた格好だ。判決は、製薬会社と国には、新薬の副作用情報を十分かつ理解しやすく処方医、患者に伝える責務があると指摘したといえる。
 欧米で高い評価を得ていても国内承認が遅いため治療に使えない薬がある。「ドラッグラグ」と呼ばれる問題だ。イレッサは申請から5カ月の迅速な審査で世界に先駆けて国内で販売が承認され、遅れの解消につながると期待された。製薬産業と国は今回の判決を教訓にドラッグラグ解消の努力を続けてほしい。
 抗がん剤は強い副作用を伴うことが多い「両刃の剣」だ。しかし、他に治療法がない患者にとり、新薬は危険を承知の上の「頼みの綱」でもある。副作用の心配を明記し慎重な使用を促したうえ承認すればよい。市販後も追跡・監視し問題が生じたら敏速に対応することだ。
 イレッサは「夢の新薬」と承認前に報道され、使いやすい錠剤でもあるため、最初の3カ月で約7千人が服用し問題を大きくした。抗がん剤の専門知識に乏しい医師が処方した例もあったとされる。医師の不勉強があったのなら、それは問題だ。
 副作用被害の救済制度に抗がん剤を含める改正案が民主党内で検討されている。死因が病気か副作用か、判断が難しいとの慎重論はあるが、抗がん剤をまったく対象外にするのは不合理ではないか。医学に基づき適正な制度を検討してもらいたい。

●イレッサ訴訟 副作用の警告を重んじた判決(読売新聞)
 致死的な肺炎を起こす副作用の可能性を製薬会社は警告し、注意喚起を図るべきだった。
 肺がんの治療薬「イレッサ」の副作用で死亡した患者の遺族らが損害賠償を求めた訴訟で、大阪地裁は製薬会社「アストラゼネカ」に賠償を命じる判決を言い渡した。その一方で、イレッサを承認した国の対応については、「著しく不合理とは言えない」として賠償責任を否定した。副作用死が相次ぐことを予想するのは難しく、対応に著しい誤りはなかったとの判断からだ。大阪地裁は、1月に示した和解勧告の所見で、国にも被害者の救済責任があるとしていた。それだけに、原告にとっては、今回の判決に納得できない部分もあるだろう。
 世界に先駆けてイレッサが日本で承認された2002年当時、ア社は、副作用が少ないことをホームページなどで強調する一方、間質性肺炎を発症する危険性は公表していなかった。発売時の添付文書でも、間質性肺炎は「重大な副作用」欄の4番目に記載されているだけで、「致死的」という説明もなかった。判決は、「注意喚起が図られないまま販売されたイレッサには、製造物責任法上の欠陥があった」と断じている。イレッサは、医師や患者の間では、副作用の少ない「夢の新薬」との期待が広がっていた。
 判決が指摘するように、イレッサは化学療法の知識・経験が乏しい医師も使用する可能性があった。しかも患者が自宅で服用できる飲み薬のため、副作用への警戒が薄いまま広く用いられた。そうした状況であったのなら、ア社はなおさら、詳しい副作用情報を提供すべきだったろう。抗がん剤の多くは、副作用を伴う。製薬会社には、新薬の長所ばかりでなく、負の情報である副作用についても、医師や患者に十分に開示する責任がある。そう指摘した判決は、製薬業界への重い警鐘となろう。判決は国の対応に“お墨付き”を与えたものではない。副作用情報の記載に関する厚生労働省の行政指導については、「必ずしも万全な規制権限を行使したとは言い難い」と批判している。重い病と闘う患者は最先端の薬の登場を待ち望んでいる。安全性をおろそかにすることなく、いかに迅速な新薬承認を実現するか。イレッサの教訓を生かさなくてはならない。

by otowelt | 2011-02-28 09:36 | 肺癌・その他腫瘍

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