NSCLCにおけるBRAF変異V600Eは予後不良因子

JCOからBRAF変異についての話題。
以前取り上げている。

肺腺癌においてBRAF変異は3%、喫煙例に多く、G469A、D594Gは比較的特異性が高い

上記の論文は、V600EよりもG469AとD594Gに重きを
置いた論文であったが、今回のJCOはV600Eとnon-V600Eをみたものである。

Clinical Features and Outcome of Patients With Non–Small-Cell Lung Cancer Harboring BRAF Mutations
JCO September 10, 2011 vol. 29 no. 26 3574-3579


目的:
 BRAF変異の頻度、分布、予後にもたらす役割を大規模コホート試験において
 白人のNSCLC患者で調べる。

患者および方法:
 レトロスペクティブにみた1046人のNSCLCでBRAF変異を調べた
 (739人の腺癌、307人の扁平上皮癌)。
 シークエンスとストリップハイブリダイゼーションに続いて
 High-resolution melting analysis(高解像度融解曲線解析)が用いられた。
 全ての患者においてKRASとEGFR変異が解析された。

結果:
 BRAF変異は、腺癌の36人(4.9%)、扁平上皮癌の1人(0.3%P<.001)で
 みられた。変異のあった21人(56.8%)がV600Eであり、16人(43.2%)が
 non-V600Eであった。V600E変異は男性(five of 552patients; 0.9%)
 よりも有意に女性(16 of 187 patients; 8.6%)に多かった。
 多変量ロジスティック回帰分析によるハザード比11.29;P<.001。
 V600E変異のある腫瘍は、micropapillaryな特徴を有する腫瘍細胞であり
 80%の患者は有意にDFSとOSの短さに関連していた
 単変量解析でそれぞれ、HR, 2.67; P<.001 、HR 2.97; P<.001。
 多変量解析ではそれぞれ、HR, 2.19; P=.011、HR, 2.18; P=.014。
 全てのnon-V600E変異は喫煙者で(P=.015)、臨床病理的パラメーターや
 予後とは関連していなかった。
NSCLCにおけるBRAF変異V600Eは予後不良因子_e0156318_9192440.jpg
結論:
 われわれは、NSCLCにおける
 V600Eとnon-V600EのBRAF変異の知見を最初に報告した。
 V600E変異は有意に女性に多く、予後不良因子であった。
by otowelt | 2011-09-13 06:01 | 肺癌・その他腫瘍

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
カレンダー