疥癬の治療

イベルメクチンについて勉強する機会があったため、
疥癬治療を復習する。
  疥癬診療ガイドライン(日皮会誌:117, 2007)

●疥癬について
 疥癬は、疥癬虫:ヒゼンダニがヒトの皮膚角層内に
 寄生することで発症する、激しい痒みが特徴の皮膚疾患。
 直接接触することによって、ヒトヒト感染する。

●皮膚疾患とイオウの歴史
 温泉の効能に皮膚病と書いてあるのは、
 硫黄成分に弱いヒゼンダニを退治する意味合いがある。
 江戸の皮膚病の半数は疥癬だったこともあり、
 その名残がいまだに温泉に残っているとされている。

●疥癬の好発部位
 顔・首以外の全身に発症する。しかしながら、手や陰部、臀部
 が好発部位であり、特に手の角層で疥癬トンネル(burrow)
 (直径0.4×5mm程度のトンネル)が観察されることがあり
 病理学的に成虫が観察可能である。
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 トンネル部位から強く検体を採取、KOHに溶かして鏡検すると
 成虫はメス0.4mm、オス0.3mm程度で観察可能。
 虫卵がみつかることもある。

●角化型(ノルウェー)疥癬の移行に注意
 疥癬の診断ができずにステロイド外用療法を行っていると、
 重症型の角化型疥癬(hyperkeratotic scabies)
 別名ノルウェー疥癬:Norwegian scabiesに移行する。
 牡蠣の殻の様に重積した角化増殖が、
 手足、臀部、肘など摩擦部位に生じ、
 紅皮症にいたる。通常の疥癬では、メス虫体が5匹程度だが、
 ノルウェー疥癬では100万匹単位である。

●治療
 イベルメクチン錠(ストロメクトール)200μg/kgを1回経口投与する。
 60kgなら4錠分1(1錠3mg)。
 重症型では初回投与後、1~2週間以内に鏡検を含めて
 効果を確認のうえ、2回目の投与を行うこともある。
 (1回目のイベルメクチン錠の投与で幼虫や成虫は死滅するが
  虫卵は生き残る。虫卵を最終的に駆除するべく、2回目の
  投与は卵が孵化して1週間後に行うものとされている)

 ※イベルメクチンは脂溶性薬物で、脂肪食によりAUCが
  空腹時の2.6倍に上昇するため、空腹時に服用するのが望ましい。

 日局イオウ・サリチル酸・チアントール軟膏がよく軟膏として
 使用されるが、クロタミトン(オイラックス)も使用される。
 安息香酸ベンジルとγ-BHCを使用することもある。
 γ-BHC軟膏は皮膚から吸収されるとα体となって肝蓄積による
 発癌性があるため、原則として6時間で洗い流すようにする。
 オイラックスは24 時間で洗い流し、5 日間繰り返せばよい
 とされているが、実際には10~14 日間程度の塗布が必要。

●イベルメクチンの作用機序
 筋細胞及び神経細胞に存在するグルタミン酸作動性
 クロライドチャンネルに選択的かつ高い親和性をもって結合し、
 細胞膜の透過性を上昇させ、神経・筋細胞の過分極が生じ
 その結果寄生虫が麻痺を起こす。
 バルビツール系やベンゾジアゼピン系、バルプロ酸ナトリウム
 などのGABA の作用を増強する薬剤との併用には
 その作用が増強する可能性があるため、注意が必要。

●感染制御
 感染制御で問題になるのは、角化型疥癬のときである
 通常型疥癬のときは標準予防策のみでよいとされている。
 角化型疥癬の介護、看護、診療にはディスポーザブル手袋
 ガウン、キャップを使用する。原則個室隔離とし、
 面会入室禁止とする。
 集団発生した場合は、第一に施設または病棟内の全患者と
 職員の皮膚科検診を行う。潜伏期間を考慮して
 皮膚科検診は繰り返し行う。発症者は病型に応じた治療を行う。
 感染後直ちに症状が出現するわけではなく、
 約1~ 2カ月間の潜伏期間(無症状期間)があるため
 集団発生の際には注意が必要である。

by otowelt | 2011-10-01 17:55 | 感染症全般

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