終末期癌患者へのimminent deathの告知は妥当か?

「先生、実のところワシの命はもう1ヶ月もないんやろ?」
と患者さんから言われることがあり、その返答に困ることがある。
適当にごまかして逃げたことも少なからずあるが、
まっすぐに私を見据えてくる患者さんへ
”逃げ口上”を述べることにずっと抵抗があった。
長い付き合いの癌患者さんには正直に伝えることもあるが、
逆に本当に伝えてよかったのかと自問自答することはよくある。
答えの無い悩みだが、この答えは一生出ないだろう。

スウェーデンからの終末期に関するスタディ。
1:1マッチの方法がよくわからなかった。

imminent deathの訳が難しいのだが、
緩和ケアで該当する用語はあるのだろうか?
差し迫ってくる死、と訳される。
もうそろそろそういう時期が近づいています、と
患者本人に伝えることなのだが、これを日本で実践している
病院はきわめて少ないだろうと思う。
スウェーデンとの文化社会的な背景の違いもあるだろう。

Gunilla Lundquist, et al.
Information of Imminent Death or Not: Does It Make a Difference?
JCO October 10, 2011 vol. 29 no. 29 3927-3931


目的:
 このスタディは、”差し迫る死(imminent death)"について
 告知されている終末期癌患者と
 されていない患者での違いを比較し評価したものである。

患者および方法:
 このスタディは、2006年から2008年までの間に
 全ての癌による死について、死亡する時間~日単位前において
 意思決定を喪失していない患者を対象におこなったものである
 (N=13,818)。患者の91%(n=12,609) は、
 ”差し迫る死(imminent death)"について告知されており、
 9%(n=1,209)は告知されていなかった。サンプルバイアス軽減の
 ため、1191人ずつの比較をおこなえるように1:1 マッチで配慮。 
 ノンパラメトリック法が解析に用いられた。

結果:
 告知された患者は、有意に必要時薬剤処方が可能であり
 (例:PRN)、家族への説明、望む場所での死亡、死別に対する家族サポート
 が可能であった。しかし、症状コントロールについては両群とも
 差はみられなかった(例:疼痛、不安、混迷、悪心、気道分泌物)。
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結論:
 ”差し迫る死(imminent death)”を終末期癌患者に
 告知することは、症状の増悪をきたすことはないが
 ケアの質を向上させ、よりよい死の理念を満たすことが
 できるかもしれない。

by otowelt | 2011-10-10 22:08 | 肺癌・その他腫瘍

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