NSAIDsによる胃潰瘍の予防

NSAIDs潰瘍の個人的な勉強です。
あくまでH.pylori陰性を前提にした場合の記載。

●プロスタグランジンEアナログ
 ミソプロストール(サイトテック)を
 関節リウマチでNSAIDsを使用している8843人に
 予防投与(1回200μgを1日4回)したスタディがある。
 重大な上部消化管合併症を
 0.95%から0.38%へ減少させた(相対リスクで40%減少)。
 このスタディでは初期にミソプロストールによる下痢のため
 脱落者が多かった。こういった場合には100μg1日3回など
 のように減量することで対応が可能である。
Silverstein FE, et al. Misoprostol reduces serious gastrointestinal complications in patients with rheumatoid arthritis receiving nonsteroidal anti-inflammatory drugs. A randomized, double-blind, placebo-controlled trial. Ann Intern Med 1995; 123:241.

 ミソプロストールを用量別に分けた試験もある。プラセボで
 NSAIDsによる上部消化管合併症が15.7%であったのに対して、
 200µg1日2回で8.1%、1日3回で3.9%、1日4回で4%だった。
 1日4回では20%が副作用のため離脱したが、1日2回ないし3回では
 12%と有意に副作用がすくなかった。
Raskin JB, et al. Misoprostol dosage in the prevention of nonsteroidal anti-inflammatory drug-induced gastric and duodenal ulcers: a comparison of three regimens. Ann Intern Med 1995; 123:344.


●プロトンポンプ阻害薬
 PPIは、オッズ比0.35(95%CI 0.17-0.75, P=0.007)で
 NSAIDs胃潰瘍の減少。標準用量PPIのほうが、低用量PPIよりも
 胃粘膜びらんの頻度は少なかった(0% vs. 28.6%, P=0.052)。
Tamura A, et al. Prevalence and independent factors for gastroduodenal ulcers/erosions in asymptomatic patients taking low-dose aspirin and gastroprotective agents: the OITA-GF study. QJM 2011; 104:133.

 ミソプロストールとの比較試験として、ランソプラゾールと
 比べたものがある。537人の長期NSAIDs使用患者において
 プラセボ、ランソプラゾール(15 or 30mg/日)、
 ミソプロストール(200μg1日4回)を比較。
 プラセボにおいて49%に潰瘍性病変が確認されたが、
 ミソプロストールは7%、ランソプラゾールではそれぞれの
 用量で20%、18%であった。ミソプロストールはやはり副作用
 による離脱が多かった。
Graham DY, et al. Ulcer prevention in long-term users of nonsteroidal anti-inflammatory drugs: results of a double-blind, randomized, multicenter, active- and placebo-controlled study of misoprostol vs lansoprazole. Arch Intern Med 2002; 162:169.

 NSAIDs側をCOX2阻害薬に変更した場合はどうなるのか、という
 観点からの試験として、4484人の患者に対して2238人がセレコキシブ群、
 2246人がジクロフェナク+オメプラゾールに割りつけられたものがある。
 セレコキシブ群は有意に上部消化管合併症が少なかった
 (1% vss 4%、HR 4.3)。
Chan FK, et al. Celecoxib versus omeprazole and diclofenac in patients with osteoarthritis and rheumatoid arthritis (CONDOR): a randomised trial. Lancet 2010; 376:173.

 COX2阻害薬とPPIの併用は、従来のNSAIDsとPPIの併用よりも
 胃潰瘍のリスクを減らすという報告もある
 (OR 0.36 (95% CI 0.28-0.47) vs OR 0.67 (95% CI 0.48-0.95)).
Targownik LE, et al. The relative efficacies of gastroprotective strategies in chronic users of nonsteroidal anti-inflammatory drugs. Gastroenterology 2008; 134:937.

 しかしCOX2阻害薬は心血管イベントの増加と関与している可能性も
 あるため、一概に利益があるかどうかはまだ結論が出ていない。


●H2ブロッカー
 NSAIDsによる胃潰瘍に効果があったという報告は少ない。
 しかしながら、十二指腸潰瘍に効果があったという報告はある。
Koch M, et al. Prevention of nonsteroidal anti-inflammatory drug-induced gastrointestinal mucosal injury. A meta-analysis of randomized controlled clinical trials. Arch Intern Med 1996; 156:2321.

 高用量H2ブロッカーが効果があったとの報告はちらほらあるが
 現時点では臨床的にNSAIDs潰瘍をH2ブロッカーで予防できる
 とは考えられていない。


※H.pyloriなどの事情を除いた場合、
 ガイドライン上は以下の様な考えが主流。
・NSAIDs潰瘍発症後、NSAIDs中止が困難なときは
 プロスタグランジン(PG)製剤かPPIが有効だが、
 PG製剤は下痢や腹痛を起こしやすく、また妊婦には不可。
・NSAIDsを中止できない場合は、潰瘍治癒後のPPI、PG製剤、
 倍量のH2 RAが潰瘍予防に有効であることが示されている。
・NSAIDsを選択的COX-2阻害薬に変更するとNSAIDs潰瘍の
 再発を減らすことができるが、この薬剤は心血管イベントの
 リスクを増やす可能性があり、慎重を要する。

by otowelt | 2012-01-07 22:59 | 内科一般

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