嚢胞性胸腺腫(cystic thymoma)

・嚢胞性胸腺腫(cystic thymoma)
 上前縦隔の嚢胞性病変では、胸腺嚢胞、心膜嚢胞、嚢胞性奇形腫などが
 鑑別疾患に入るが、嚢胞性胸腺腫(cystic thymoma)も
 呼吸器科医としては知っておきたい鑑別である。
 この疾患はしばしば増大する傾向にある。

 胸腺腫で嚢胞性変化があるものは全体の40%にみられるが、
 腫瘍全体が嚢胞状形態をきたすcysticthymomaはきわめてまれ。
 cystic thymomaの基準として、以下のものがある。
 ①嚢胞壁内に未熟小型リンパ球と網目状上皮細胞が混在増殖
  しており、嚢胞壁の肥厚がみられること
 ②小血管周囲にリンパ球を含むperivascular spaceがあり
  リンパ球成分が豊富な腫瘍内に、リンパ球がまばらで
  正常胸腺髄質に似た領域がみられる(foci of medullary
  differentiation)こと
 ③嚢胞壁に上皮形成を欠くこと
Suster S,Rosai J.Cysticthymomas.A clinicopathologic study of ten cases. Cancer 1992; 69: 92-7.

 嚢胞内容物は、ほとんど血液成分を混じた出血巣や壊死物質。
 内部に出血壊死がみられており、これが嚢胞性変化をきたして
 いるものと考えられている。
 内部には漿液性の液体がみられるという報告もあり
 症例が少ないため、現時点では内容物に関するコンセンサスは
 得られていない。
Rieker JR, et al. Cystic thymoma.Pathol Oncol Res 2005;11:57-60.

 もともと存在していた胸腺嚢胞の嚢胞壁に胸腺腫が発生した後、
 嚢胞壁をあたかも置き換えるように増殖すると、cystic thymomaのように
 急速に増大する説明になるのではないかとも考えられている。
川口庸ら. 嚢胞状形態を呈した胸腺腫(いわゆるcysticthymoma)の1切除例. 日呼外会誌, 2011; 25: 79-83.

文責"倉原優"

by otowelt | 2012-01-21 23:34 | レクチャー

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