癌化学療法を受けている患者へのセムロパリンは静脈血栓塞栓発生率を減少させる

癌患者さんに対する静脈血栓予防については、現時点では
3つのガイドラインが存在するが、手術等の際の基準が
定められているのみで、ルーチンの抗癌剤投与時への
ヘパリン投与については特に推奨していない。
・Lyman GH, et al. American Society of Clinical Oncology guideline: recommendations for venous thromboembolism prophylaxis and treatment in patients with cancer. J Clin Oncol 2007;25:5490-505.
・Mandalà M, et al. Venous thromboembolism in cancer patients: ESMO Clinical Practice Guidelines for the management. Ann Oncol 2010;21: Suppl 5:v274-v276.
・Antithrombotic Therapy and Prevention of Thrombosis, 9th ed: American College of Chest Physicians Evidence-Based Clinical Practice Guidelines. CHEST 2012; 141: 2 suppl

↑ACCPから最近第9版のガイドラインが出版された。
※ACCP9版の主な変更点
 ・整形外科領域における静脈血栓塞栓症予防に
  新規の経口Xa阻害薬やダビガトランが推奨
 ・ロングフライト血栓症(エコノミークラス症候群)のリスクとしての
  脱水や飲酒などは明らかなエビデンスがないとする

化学療法時におけるヘパリン投与についてのNEJMからの論文。
しかし、全世界的にもケモだけでヘパリンを投与している医師は少ない。

G. Agnelli, et al.
Semuloparin for Thromboprophylaxis in Patients Receiving Chemotherapy for Cancer
N Engl J Med 2012;366:601-9.


背景:
 化学療法を受けている癌患者は静脈血栓塞栓症のリスクが高い。
 これまでのデータから、抗血栓薬予防の有益性が示唆されている。

方法:
 二重盲検試験で、化学療法を受けている癌患者の
 静脈血栓塞栓症予防する上で超低分子ヘパリンの
 セムロパリン(semuloparin)の有効性・安全性を評価。
 転移性または局所進行性の固形癌があり、
 化学療法が変更されるまでセムロパリン20mg1日1回皮下投与群と、
 プラセボ群にランダムに割り付け。プライマリアウトカムは、
 深部静脈血栓症、非致死的肺塞栓症、静脈血栓塞栓症関連死亡複合。
 臨床的な出血事象を主な安全性アウトカムとした。

結果:
 薬剤投与期間中央値は3.5ヶ月。静脈血栓塞栓症は、
 セムロパリン群で1608人中20人(1.2%)で発生、
 プラセボ群では1604人中55人(3.4%)で発生
 (HR 0.36,95%CI 0.21~0.60,P<0.001)。
 原発部位、病期、ベースライン静脈血栓塞栓症リスクでの
 サブグループ解析でも有効性が確認された。
 出血事象の発生率は、セムロパリン群2.8%、プラセボ群2.0%
 (HR 1.40,95% CI 0.89~2.21)。重大な出血は
 セムロパリン群で1.2%、プラセボ群で1.1%
 (HR 1.05,95% CI 0.55~1.99)。

結論:
 セムロパリンにより、癌化学療法を受けている患者の
 静脈血栓塞栓発生率を低下させることができる。
 また、出血合併症の明らかな増加はなかった。

by otowelt | 2012-02-17 12:14 | 肺癌・その他腫瘍

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