ICUにおけるせん妄予防のためのハロペリドール予防投与

全例に予防的セレネース投与に踏み切ってもよいのではないか
というアグレッシブな意見が見え隠れする論文。

Wang, Wei, et al.
Haloperidol prophylaxis decreases delirium incidence in elderly patients after noncardiac surgery: A randomized controlled trial
Critical Care Medicine: March 2012 - Volume 40 - Issue 3 - p 731–739


目的:
 短期的な低用量ハロペリドール静注を非心臓外科的な手術後の
 重症高齢者患者に投与することで、せん妄予防に対する
 同薬の効果と安全性を評価する。

デザイン・セッティング:
 2施設におけるプロスペクティブランダム化二重盲検プラセボ対照化試験。
 上記施設におけるICU。

患者:
 457人の65歳以上のICUに非心臓外科の手術後にICUに入室した患者

介入:
 ハロペリドールを0.5mgIVし、その後0.1 mg/hで12時間持続投与する
 (n = 229)あるいはプラセボを投与する(n = 228)。
 ランダムに割付をおこなった。

アウトカム:
 プライマリアウトカムは術後初期7日間でのせん妄発症とした。
 セカンダリアウトカムはせん妄発症時期、非せん妄日数、
 ICU在室日数、全死因28日死亡率、副反応。
 せん妄はICUにおいてthe confusion assessment methodを
 用いて評価された。

結果:
 術後初期7日間におけるせん妄発症は、ハロペリドール群で
 15.3%(35/229)、プラセボ群で23.2% (53/228)(p = .031)。
 せん妄発症までの平均期間および平均非せん妄日数は有意に
 ハロペリドール群で長く(6.2 days [95%CI 5.9−6.4] vs.
 5.7 days [95%CI 5.4−6.0]; p = .021; and
 6.8 ± 0.5 days vs. 6.7 ± 0.8 days; p = .027)、それゆえ
 ICU在室日数はハロペリドール群で有意に短かった(21.3 hrs
 [95%CI 20.3−22.2] vs 23.0 hrs[95%CI 20.9–25.1];p=.024)。
 全死因による28日死亡率には群間差はみられなかった
 (0.9% [2/229] vs. 2.6% [6/228]; p = .175)。
 薬剤による副反応は観察されなかった。

結論:
 高齢者における非心臓外科手術後のICU入室において
 短期的な低用量のハロペリドール静注は有意に術後せん妄発症を
 減らすものである。
by otowelt | 2012-03-12 23:14 | 集中治療

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
カレンダー