医学論文を継続的に読む方法

「どうやったら医学論文を継続して読めるのですか」と
たまに研修医の先生から相談を受けることがある。
本ブログとは趣向が異なるが、個人的な方法を記載してみたい。

・なぜ医学論文を読むのか
 医学論文を読むことは”勉強”とは異なる。
 というのも、医学的知識を効率的に集積して患者さんに還元するには
 母国語の本から学ぶ方が圧倒的に早いからである。
 そのため、医学的知識を得るために医学論文を読む必要はないし
 私はそれは時間の無駄遣いだと思っている。
 個人的には、医学雑誌の記事を読むことは週刊雑誌のそれを
 読むのと同様、娯楽の一つとしてとらえている。
 「勉強のために読む」というモチベーションで医学論文を
 継続的に読むことは至難の業と思うのであまりおすすめしない。
 そのため、論文を印刷して医師同士で抄読会を行うと、継続しにくい。
 要は、医学論文を読むことが自分にとって”合う”か”合わない”か、
 それだけだと思うので、読まない、読めないからといって
 格別悲観する必要もないと思う。


・医学論文を効率的に読む方法
 どうすれば医学論文を効率的に読むことができるかご紹介したい。
 あくまで個人的な一案であるので、参考程度にして頂きたい。
 継続的に雑誌を読むということは連載を読むということなので
 基本的に最新号を読むよう心がけた方がいい。
 (過去文献を1日1編読もうとすると、次何を読めばいいか目安がなくなる)
 ほとんどの雑誌はその月の第1週に出版されるが、
 NEJMやAJRCCMなどのように刊行頻度が月に1回ではないものもある。
 in pressも楽しみに読めるようになれば、おそらく
 「論文マラソン」ができるようになる。この「論文マラソン」を
 継続的に続けることが、医学論文を効率的に読む方法である。

 私が言う「論文マラソン」とは、定期的にお気に入りに登録してある
 医学雑誌のCurrent issues(±in press)を上から下まで
 閲覧する作業のことである。多いものでは1雑誌あたり20論文くらい
 掲載されているが、別にタイトルだけで選り好みしてもよい。 
 そもそも論文のタイトルは、興味を惹くようつけられているものだ。

 呼吸器内科医なら、AJRCCM、CHEST、ERJ、Thoraxは必須である。
 基本的にはインパクトファクターやアイゲンファクターを参考にして
 登録している。これらの数値はJCR webで検索できるのでどうぞ。
 (URL:http://admin-apps.isiknowledge.com/JCR/JCR?SID=Z2G59pa8FlD%40cIO2BcE
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 感染症領域でも上位をお気に入りに登録している。
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 こういった雑誌を自分のマラソンルートに組み込むよう決めておけばいい。
 毎回全文を定期的に読むのは不可能なので、最初はAbstractだけでいい。
 論文を読む際に、PECOなどで論文の妥当性を吟味するよう
 研修医時代にまず教えられると思うが、これは論文マラソンする上では
 非常に足かせとなるので、娯楽程度に読むのであればPECOは
 吟味する必要はない。さすがに、A: n=3, placebo: n=4で
 プラセボ対照ランダム化試験と豪語するのは
 明らかに質の悪い論文だと誰でもわかるだろうし、
 簡潔的なPECOは無意識にしているものなので意識しなくてよい。
 ただし、1つ1つの論文をしっかり読むのであればスタディの質を
 吟味すべきである。あるいは、患者さんに還元したり
 自分の知識として会得するような場合には
 それなりに信憑性を吟味する必要があるかもしれない。
 論文を読む意義としては、費やす時間と効果のバランスが重要なので
 質をとるか量をとるか、自分なりに決めておけばいい。

 (注釈)PECO
 Patient - どんな患者に/誰のために
 Exposure - 何をすると(介入・評価・測定)
 Comparison - 何と比べて
 Outcome - どのような結果を得るか


 1日1論文ペースであれば、英語辞書を開きながらであっても
 Abstractだけなら5分か10分もあれば読めるはずである。
 そして慣れてくれば、Abstractに加えてDiscussionを読むようにする。
 Discussionはそれなりに最新の知見がちりばめられているので
 勉強になる上、筆者が何を言いたいのか明確に記載されている。
 MethodsやResultsについては、Discussionに論じられている部分を
 その都度参考にすればいい。Abstract-Discussionを軸にして
 読むようこころがければ、その論文の言いたいことを知るに事足りる。
 知見をさらに深めたいときは、全文読んだり、UpToDateや成書を
 開くようにする。論文の統計学的な検定については、
 特に研修医の先生はアレルギーを持っている人も多いだろうし、
 これが原因で論文離れが進んでいるのではないかとも思っている。
 Abstract-Discussionを軸にして読む方法では、あまり検定が
 どうのこうので悩むこともないと思うので、いつかまた別の機会で
 気合いを入れて勉強すればいい。私個人も統計学には
 あまり詳しくないが、詳しくなくても今まで問題なく過ごしている。

 他にもPubMedにキーワードを入れて、新しい順にAbstractを
 読んでいくという方法もあるが、購読していない雑誌だと
 全文が読めない上に、雑誌の質が無視されてしまうので
 あまりおすすめしない。

 継続するには何かしらの形で記録をつける方法がよいと
 考えているが、私はブログという形で読んだ論文を記録している。
 さすがに何年間も継続的に英語を読んでいれば、
 私みたいな記憶力が乏しい人間であっても英単語が覚えられるし、
 英語の速読もできるようになる。
 
 以上が、私個人が行っている”論文の読み方”である。

by otowelt | 2012-05-10 06:20 | レクチャー

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