結核性胸膜炎における液体培地の胸水培養陽性率は想定よりも高いかもしれない

本スタディで最も重要と考えられる、結核性胸膜炎の診断基準のうち”臨床的に疑わしい”という項目に、胸水中リンパ球比率を見た臨床医の選択バイアスが絡んでいるかもしれない。

Revisiting tuberculous pleurisy: pleural fluid characteristics and diagnostic yield of mycobacterial culture in an endemic area
Thorax 2012, in press.


背景:
 結核性胸膜炎は、リンパ球優位であり胸水培養では生えにくいという特徴があるが、それに基づくデータは古い文献でしかない上、最近使用されている液体培地でのデータは乏しい。データとしては、おおよそ以下のように記載されている。
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 そのため、できるだけ最新の結核性胸膜炎のデータを得るべく、本スタディを組んだ。

方法:
 台湾におけるプロスペクティブコホート試験で、TB registration database、Mycobacteriology laboratory database、Pathology database with pleural specimensの3データベースを使用。患者は2004年1月から2009年6月までの結核性胸膜炎あるいは他の結核性病変に胸水貯留を伴うものを登録した。本試験登録患者は以下の診断基準をみたすことを必須とした。すなわち、1.胸水あるいは胸膜生検において結核菌培養陽性、2.胸膜生検による肉芽腫性病変が検出、3.結核治療により胸水減少がみられた、結核菌喀痰培養陽性患者、4.臨床的に結核性胸膜炎が疑わしく、胸水が結核治療によって減少したもののいずれかを満たすものとした。液体培地はBACTEC MGIT 960 を使用した(サブカルチャーはMiddlebrook 7H11 selective agarによる)。

結果:
 3263人の患者が結核が確定的あるいは疑わしいと判断された。そのうち382人が結核性胸膜炎として本試験に組み込まれた。241人が胸水培養陽性であり、141人が胸水培養陰性であった。また、382人のうち149人が胸水穿刺後に胸膜生検を施行されていた。癌の存在、透析患者、心不全、肝不全は胸水培養陽性が有意に多かった(それぞれP<0.001, 0.007, 0.05, 0.04)。血液検査では白血球上昇はなかったものの、胸水培養陽性陰性群いずれにおいても血清LDHが高かった。胸水培養陽性群の方が、胸水中LDHが高く(849 vs 550, p<0.001)、またリンパ球比率が陰性群と比べると低い(78% vs 92%, p<0.001)傾向にあった。
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 また、胸水中リンパ球比率が50%以下のものが17%の患者にみられた。胸水中リンパ球が80%を超えた場合、結核菌の胸水培養陽性率は低い傾向がみられた。胸水培養陽性に対するオッズ比は、基礎疾患の存在OR 2.66; 95% CI 1.14-6.19、胸水中LDHレベルOR 1.001;95% CI 1.00-1.002、胸水中リンパ球比率(%)OR 0.97; 95% CI 0.96-0.99、胸水中タンパクレベルOR 0.6; 95% CI 0.45-0.79であった。
 結核菌の胸水培養陽性率は382人中63%で、喀痰培養陽性と胸水培養陽性を合わせると診断的感度は79%にまで上昇した。これは病理学的に肉芽腫を胸膜生検で確認した場合の74%よりも高値であった。
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結論:
 液体培地において、結核菌の胸水培養の感度は過去に報告されていたよりもかなり高い数値かもしれない。胸水培養と喀痰培養を組み合わせることで、胸膜生検を上回る診断感度が得られた。胸水中の高いリンパ球比率と低いLDHは結核菌の胸水培養陰性と関連していた。

by otowelt | 2012-05-14 14:06 | 抗酸菌感染症

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