悪性胸水の管理:胸腔カテーテル vs タルク胸膜癒着 のランダム化試験

日本ではあまり普及していない”胸腔カテーテル”による悪性胸水管理についての論文がJAMAから出た。

Helen E. Davies, et al.
Effect of an Indwelling Pleural Catheter vs Chest Tube and Talc Pleurodesis for Relieving Dyspnea in Patients With Malignant Pleural Effusion
The TIME2 Randomized Controlled Trial
JAMA. 2012;307(22):doi:10.1001/jama.2012.5535


背景:
 悪性胸水は、予後不良患者における呼吸困難を助長する。胸水をドレナージすることで症状緩和がはかれるが、最も効果的なファーストライン治療が何なのかはわかっていない。

目的:
 呼吸困難改善を目的とした胸腔カテーテル留置(Indwelling pleural catheter:IPC)が胸水ドレーン+タルク胸膜癒着よりも効果的かどうかを検証する。

デザイン:
 非盲検化ランダム化対象試験(Second Therapeutic Intervention in Malignant Effusion Trial [TIME2])。IPCとタルク癒着に1:1に割り付けた。7のイギリスの病院においておこなわれた、2007年4月から2011年2月までスクリーニングされた。

介入:
 IPC留置を外来でおこない、初期に大量ドレナージと患者教育をおこない、在宅ドレナージができるようにした。目安として1週間に3回程度のドレナージをおこなうよう指導し、呼吸困難時にもおこなってよいように患者に伝えた。あまりにも排液がすくないような場合には、IPCは抜去をしてもよいこととした。タルク群に割りつけられた場合、ドレーン挿入のため入院となり、その後タルク4g(Novatech)による胸膜癒着を施行した。この場合12Fのドレーンを用いることとした。

アウトカム:
 日々の呼吸困難100mm-VASで判断した(0mm:呼吸困難がない、100mm:最大呼吸困難)。10mmを最小有意差とした。平均差は、線形混合効果回帰モデルを用いて補正をおこなった(Stata version 12.1)。QOLはThe European Organisation for Research and Treatment of Cancer Quality of Life Questionnaire (EORTC QLQ-30)を用いた。
 
結果:
 52人がIPC群、54人がタルク群に割りつけられた。呼吸困難は両群ともに改善がみられ、初期42日間において有意差はみられなかった。乳癌、肺癌、悪性胸膜中皮腫による胸水貯留が両群とも多かった。
 VASスコアはIPC留置24.7mm(95% CI, 19.3-30.1 mm)、タルク群24.4 mm (95% CI, 19.4-29.4 mm)であり、差は0.16 mm(95% CI, −6.82 to 7.15; P=.96)であった。6ヶ月目においてIPC留置群において統計学的に有意差がみられ、そのVAS差は14.0 mm (95% CI, −25.2 to −2.8 mm; P=.01)であった。
e0156318_14251739.jpg

 胸痛については両群とも差はみられなかった。また、初期入院期間はIPC群において短く、中央値0日(IQR 0-1 day)で、タルク群の4日(IQR, 2-6 days)より短かった。差は−3.5 日(95% CI, −4.8 to −1.5 days; P<.001)であった。QOLにおいて両群とも差はみられなかった。タルク群の12人(22%)がさらなる胸腔処置を必要としたが、IPC群では3 人(6%)のみであった(OR, 0.21;95%CI, 0.04-0.86; P=.03)。IPC群の52人中21人が有害事象がみられ、タルク群54人中7人よりも多かった(OR, 4.70; 95% CI, 1.75-12.60; P=.002)。しかしながら、重篤なイベントについては有意差はみられなかった(有害事象基準をみたしたpleural infectionがIPC群で有意に多いことは表からも明白である)。

結論:
 過去に胸膜癒着歴のない悪性胸水の貯留した患者において、IPCによる排液管理とタルクによる胸膜癒着は呼吸困難を改善させる上で有意差はみられなかった。

コメント:
 このスタディは、IPCとタルクによる胸膜癒着を比較した初めての試験である。ガイドライン上、悪性胸水の管理はタルクによる胸膜癒着が推奨されているが、このスタディにおいてはIPCもその初期治療において妥当性があると考えられる。
 しかしながら、感染についてはIPCの方が多い。重篤でないものの中にはコロナイゼーションの患者もいるため、一概にそのリスクが高いとは言えないものの、臨床医は注意が必要である。

by otowelt | 2012-05-21 05:56 | 肺癌・その他腫瘍

<< IPFにおけるプレドニゾン、ア... 急性好酸球性肺炎の臨床的特徴と... >>