COPDの呼吸困難に対して鍼治療が有効

 先週からかなり議論を呼んでいるが、サンフランシスコのATSの速報ばかり気になって読めていなかった論文。メジャー医学雑誌であるArch Intern Medに掲載された。もっと大規模であれば説得力があるのだが、なぜ68人しか登録できなかったのだろうか。
 科学者の目でこの論文を読むと、鍼の医学的メカニズムについての記載が不足していると思うが、非常に興味深い。

Masao Suzuki, et al.
A Randomized, Placebo-Controlled Trial of Acupuncture in Patients With Chronic Obstructive Pulmonary Disease (COPD)The COPD-Acupuncture Trial (CAT)
Arch Intern Med. 2012;online first:1-9. doi:10.1001/archinternmed.2012.1233


背景:
 労作時呼吸困難(DOE)は、COPDにおける主症状であり、コントロールは難しい。このスタディは標準治療を受けているCOPD患者に対して鍼治療がプラセボに上回るかどうか検証したものである。

方法:
 2006年7月1日から2009年3月31日までの間、68人の関西COPD患者が標準治療に鍼治療を加える群(鍼治療群)と標準治療にプラセボ(偽鍼)鍼治療を加える群にランダムに割り付けられた(それぞれ34人ずつ)。1週間に1度の鍼治療を受けるように両群とも設定され、12週間継続された。プライマリエンドポイントは、6分間歩行試験後の改訂Borgスケールである。
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 偽鍼は、実際には背中の皮膚を通したあと鍼をtelescopedしたものである(いわゆる浅い鍼で非経穴部への鍼ではない)。また、治療者が本物の鍼かプラセボの鍼かが分かった上で治療を行っている。

結果:
 12週間後、6分間歩行試験後のBorgスケールは有意に鍼治療群において改善がみられた(mean [SD] difference from baseline by analysis of covariance, −3.6 [1.9] vs 0.4 [1.2]; mean difference between groups by analysis of covariance, −3.58; 95% CI, −4.27 to −2.90)。COPD患者で鍼治療を受けた患者は6分間歩行距離の改善も確認された。
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 QOLについては、SGRQが鍼治療群で-16U減少(Jonesらの4pointsを上回るCOPD.2005;2(1):75-79.)。
 BMIと血清プレアルブミンが測定されたが、12週間の鍼治療期間後では、BMIとプレアルブミンはともにプラセボ群と比較して鍼治療群では有意に改善が確認された。呼吸機能検査においても差がみられた。

呼吸困難を軽減させるメカニズム:
 COPDにおける労作時の呼吸困難は筋疲労などが関与しているが、潜在的に虚血性が関与している可能性がある。Kawakitaらは、鍼治療が筋肉の電気的活性を抑制することを報告しており(Kawakita K, et al.Experimental model of trigger points using eccentric exercise. J Musculoskeletal Pain. 2008;16:29-35.)、筋緊張度を軽減することが今回の結果につながった可能性がある。

limitatsion:
 ・試験期間が短い。アウトカムを評価するには早い可能性がある。
 ・すでに治療を受けているCOPD患者を対象にしたことから、鍼治療のみによる改善効果とは言い切れない。
 ・治療者が本当の意味でmaskされていたのかどうか、確実性はない(治療者が本物の鍼かプラセボの鍼かが分かった上で治療を行っているため)。

結論:
 このスタディにより、COPD患者における呼吸困難感の改善に針治療が有用であることが示された。

by otowelt | 2012-05-26 09:53 | 気管支喘息・COPD

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