イレッサ高等裁判所判決について

 分子標的薬は現在の癌治療に欠かせない薬剤ではあるが、イレッサの問題は根深い。
 ゲフィチニブ(イレッサ)の副作用をめぐって、2011年2月に大阪地裁はアストラゼネカに「製造物責任法上の指示・警告上の欠陥」があったとして,同社に対し賠償責任を認めた。
 大阪地裁の言い渡しを不服とした同社は控訴し、大阪高裁での争いとなった。
 しかし2012年5月25日、大阪高裁は大阪地裁の判決を取り消し原告団の請求を棄却した。アストラゼネカ社に対し「間質性肺炎に関する注意喚起について欠陥はない」との判決を下した。また,国に対しても責任を認めなかった。なお東京高裁においても2011年11月に患者遺族らの請求を棄却し「国と企業に全く責任ない」との判決を言い渡している。

●イレッサ訴訟、大阪も原告全面敗訴…高裁判決(読売新聞:)
http://osaka.yomiuri.co.jp/e-news/20120526-OYO1T00231.htm?from=top
 肺がん治療薬「イレッサ」(一般名・ゲフィチニブ)服用後に副作用の間質性肺炎で死亡した患者の遺族ら11人が、国と輸入販売元の製薬会社「アストラゼネカ」(大阪市)に計約1億円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁は25日、ア社のみに賠償を命じた1審・大阪地裁判決を取り消し、原告側の請求を全面的に退けた。原告側は「副作用の注意喚起が不十分だった」と主張したが、渡辺安一裁判長は「注意喚起に関する添付文書の記載に欠陥はなかった」と述べた。
 イレッサの副作用を巡る訴訟では東京高裁に続く2例目の高裁判断で、いずれも国とア社の責任を否定した。東京訴訟の原告側は上告しており、大阪訴訟の原告側も上告する方針。
 大阪訴訟の原告は、死亡した患者3人の遺族計10人と、同肺炎を発症した男性。
 判決で渡辺裁判長は、イレッサの有効性・有用性を認めたうえで、臨床試験段階で副作用として報告された同肺炎の死亡例11件のうち、服用との因果関係が比較的明確なのは1件だったとし、「従来の抗がん剤より副作用が重篤だと予測するのは困難だった」と述べた。
 その上で争点とされた「ア社がイレッサ販売開始時の添付文書で同肺炎を『重大な副作用』欄の4番目に記載したことが注意喚起の方法として適切だったか」について、「肺がん治療医が読めば同肺炎が死亡につながる可能性を認識できる」と指摘し、問題はなかったとの判断を示した。
 輸入・販売を承認した国についても、イレッサ自体に問題がない以上、責任はないと結論付けた。
 昨年2月の大阪地裁判決は、添付文書で同肺炎の記載位置に問題があったとし、ア社に対し、原告のうち9人に計約6000万円を賠償するよう命じていた。(2012年5月26日 読売新聞)

●イレッサ訴訟原告「結論ありきの内容」 逆転敗訴判決に怒り(日本経済新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG25057_V20C12A5CR8000/?at=DGXZZO0195583008122009000000
 25日のイレッサ訴訟の大阪高裁判決後、原告側は記者会見し、原告で唯一の患者、清水英喜さん(56)は「『起きてしまったものは仕方がない』と言っているようにしか聞こえない」と声を荒らげた。
 判決の瞬間は失望のあまり脱力したといい、「イレッサに何も問題がないというなら、亡くなった人々の苦しみは(副作用被害をなくすための)教訓にならない」と怒りをあらわにした。
 原告側弁護団の永井弘二弁護士は、判決について「副作用発生の要因を医療現場に押しつけるもの。結論ありきの内容だ」と批判。支援者らは判決直後に開いた報告集会で「最高裁に向けてもう一度がんばろう」と上告の決意を表明した。
 アストラゼネカの代理人弁護士は同日、別の会見で「我々の主張が受け入れられ、公正で妥当な判決」と評価した。「今後の新薬開発の現場で不必要な萎縮効果が出ることを避けられた」と語った。(2012年5月26日 日本経済新聞)

●イレッサ訴訟:原告側が逆転敗訴 大阪高裁判決(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/news/20120525k0000e040271000c.html
 肺がん治療薬「イレッサ」に重大な副作用の危険があるのを知りながら適切な対応を怠ったとして、遺族や患者ら11人が国と輸入販売元のアストラゼネカ(大阪市)に賠償を求めた訴訟で、大阪高裁は25日、ア社に賠償を命じた1審・大阪地裁判決を取り消し、原告逆転敗訴を言い渡した。渡辺安一裁判長は「イレッサには有用性があり、副作用の警告方法にも欠陥はない」と述べた。原告側は上告する。同種訴訟の東京高裁判決も原告の請求を退けており、高裁段階ではいずれも原告側が全面敗訴した。
 イレッサは02年7月の輸入販売承認後、間質性肺炎を発症する患者が多発し、遺族らは東京、大阪両地裁に提訴した。訴訟では、承認当時の初版添付文書(医師向け説明文書)の副作用に関する記載は適切だったか▽輸入販売を承認した国に違法性はなかったか−−が主な争点となった。(2012年5月25日 毎日新聞)

by otowelt | 2012-05-27 20:55 | 呼吸器その他

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