IPF急性増悪においてPMX-DHPは有用
2012年 06月 19日
今回のIntern Medから、日本医科大学の論文。PMX-DHPは血液中よりエンドトキシンを除去する治療法であり、敗血症やARDSへの有効性が示されている(JAMA 2009 ; 301 : 2445―2452.)。IPFの急性増悪におけるPMX-DHPの試験が組みにくい理由として、その増悪原因がはっきりしないだけでなく、症例ごとに原因がまちまちだからであるとされている。感染・非感染をひっくるめて試験するには、相当数の患者でプロスペクティブにデータを集積する必要がある。
Shinji Abe, et al.
Polymyxin B-immobilized Fiber Column (PMX) Treatment for Idiopathic Pulmonary Fibrosis with Acute Exacerbation: A Multicenter Retrospective Analysis
Intern Med 51: 1487-1491, 2012
目的:
特発性肺線維症(IPF)の急性増悪の予後は、きわめて不良であると報告されている。いくつかの臨床試験において、ポリミキシンB 固定化線維カラムを用いた直接血液灌流法(direct hemoperfusion using a polymyxin B immobilized fiber column;PMX)は、間質性肺炎の患者において効果があるかもしれないとされている。この多施設共同レトロスペクティブスタディの目的は、PMX治療がIPF急性増悪患者において酸素化と生存的な利益をもたらすかどうか検証したものである。
方法:
2004年から2008年において日本の18施設において、急性増悪時にPMX治療をされた160人の間質性肺炎(73人:IPF)の患者においてレトロスペクティブ試験を実施。IPF以外の症例は、CVD-IP (n=30), drug-induced IP (n=7), rapidly progressive interstitial pneumonia (RPIP) of unknown etiology (19) (n=5), chronic hypersensitivity pneumonia (n=5)。
IPFはATS/ERS基準を用いて、診断した。PMX(Toraymyxin 20R, Toray Medical Co., Tokyo, Japan)は2度実施された(2日間、flow rateは80-100 mL/min)。血液灌流時間は平均で12時間であった。PMX時の酸素化に関連したデータと急性増悪後の生存データを収集し、解析した。
結果:
急性増悪をきたしたIPF患者において、P/F比は2回目のPMX施行終了時には有意に改善がみられた(173.9±105.4 to 195.2±106.8 Torr,p=0.003)。白血球数についても2回目のPMX施行終了時に有意な減少がみられた(13,330±7,002 to9,426±5,188/mm3, p<0.001)。これらの差については160人全員の間質性肺炎の解析においても認められた。PaCO2については差はみられなかった。
急性増悪後の1ヶ月および3ヶ月生存率は、70.1%、34.4%であった。
PMX後に12人が軽度の血小板減少をきたした。
limitation:
・レトロスペクティブ試験であること
・施設間によってPMX導入基準が異なる点
・PMXに併用した治療マネジメントや戦略がバイアスを孕む点
結論:
IPF急性増悪においてPMX治療は酸素化と生存を改善するかもしれない。この潜在的な利益を検証すべくプロスペクティブ試験の実施が望まれる。
Shinji Abe, et al.
Polymyxin B-immobilized Fiber Column (PMX) Treatment for Idiopathic Pulmonary Fibrosis with Acute Exacerbation: A Multicenter Retrospective Analysis
Intern Med 51: 1487-1491, 2012
目的:
特発性肺線維症(IPF)の急性増悪の予後は、きわめて不良であると報告されている。いくつかの臨床試験において、ポリミキシンB 固定化線維カラムを用いた直接血液灌流法(direct hemoperfusion using a polymyxin B immobilized fiber column;PMX)は、間質性肺炎の患者において効果があるかもしれないとされている。この多施設共同レトロスペクティブスタディの目的は、PMX治療がIPF急性増悪患者において酸素化と生存的な利益をもたらすかどうか検証したものである。
方法:
2004年から2008年において日本の18施設において、急性増悪時にPMX治療をされた160人の間質性肺炎(73人:IPF)の患者においてレトロスペクティブ試験を実施。IPF以外の症例は、CVD-IP (n=30), drug-induced IP (n=7), rapidly progressive interstitial pneumonia (RPIP) of unknown etiology (19) (n=5), chronic hypersensitivity pneumonia (n=5)。
IPFはATS/ERS基準を用いて、診断した。PMX(Toraymyxin 20R, Toray Medical Co., Tokyo, Japan)は2度実施された(2日間、flow rateは80-100 mL/min)。血液灌流時間は平均で12時間であった。PMX時の酸素化に関連したデータと急性増悪後の生存データを収集し、解析した。
結果:
急性増悪をきたしたIPF患者において、P/F比は2回目のPMX施行終了時には有意に改善がみられた(173.9±105.4 to 195.2±106.8 Torr,p=0.003)。白血球数についても2回目のPMX施行終了時に有意な減少がみられた(13,330±7,002 to9,426±5,188/mm3, p<0.001)。これらの差については160人全員の間質性肺炎の解析においても認められた。PaCO2については差はみられなかった。
急性増悪後の1ヶ月および3ヶ月生存率は、70.1%、34.4%であった。
PMX後に12人が軽度の血小板減少をきたした。
limitation:
・レトロスペクティブ試験であること
・施設間によってPMX導入基準が異なる点
・PMXに併用した治療マネジメントや戦略がバイアスを孕む点
結論:
IPF急性増悪においてPMX治療は酸素化と生存を改善するかもしれない。この潜在的な利益を検証すべくプロスペクティブ試験の実施が望まれる。
by otowelt
| 2012-06-19 05:31
| びまん性肺疾患