中国黒龍江省における多剤耐性結核

Libo Liang, et al.
Factors contributing to the high prevalence of multidrug-resistant tuberculosis: a study from China
Thorax 2012;67:632-638


背景:
 多剤耐性結核(MDR-TB)の拡大は、世界的な関心を集めてきた。2007年の時点では、MDR-TBの頻度は同定された結核のうち8.32%とされているが、中国ではこれよりも多いと考えられている。黒龍江省(Heilongjiang )は3800万人の人口と113の郡を有する都市であり、このスタディの目的として、この黒龍江省における高いMDR-TBに寄与する因子を同定するものである。 

方法:
 WHO/International Union Against Tuberculosis and Lung Diseaseガイドラインに続くクロスセクショナルサーベイが2004年に黒龍江省30の郡からランダムに選ばれた連続患者に対しておこなわれた。合計1995人がMDR-TBを検査された。MDR-TBに関連した因子は、マルチレベルモデルと古典的ロジスティック回帰分析によって同定された。

結果:
 2114人の培養陽性患者のうち、薬剤感受性試験のデータが有効であった1995人を試験に組み込んだ。そのうち、241人(12.1%, 95% CI10.7% to 13.5%)がMDR-TBと同定された。37.7%が少なくとも1つの空洞病変を有しており、1.7%は肺以外にも結核病変が同定された。4.0%に糖尿病合併、0.1%に塵肺合併がみられた。
 再治療を受けた患者は421人おり、このスタディにおいて21.1%の頻度であった。再治療患者は、新規患者に比べて5.48倍(95% CI4.04 to 7.44)MDR-TBの罹患リスクが高かった。180日を超えてイソニアジドとリファンピンで治療された患者は、180日未満の患者と比べて4.82倍のMDR-TBリスクを孕んでいた。年齢と結核治療の遅れはMDR-TBに関連していた。経済的負担、知識不足、結核治療の副作用がMDR-TBに影響を与える因子として認識された。提携サービスの欠如、治療統轄や感染制御の不満足さは、MDR-TBのコントロールを危険にさらしていた。

ディスカッション:
 再治療例においては30%を超える患者がMDR-TBであった。中国は、結核再発率がとても高い。たとえば上海においては再発率は61.5%とされている(Emerg Infect Dis 2006;12:1776-8.)。
 中国の結核治療は、ほかの発展途上国と同じように薬剤感受性試験をおこなわず経験的に治療をおこなっているのが現状である。すなわち、治療に失敗してはじめて臨床的にMDR-TBであると気づくことになる。そのため、MDR-TBと判明するまでの時間が非常に長い。
 中国においてDOTSの実施はほぼ100%であると報告されているが、実状としては公衆衛生の”穴”は多く、MDR-TBの頻度の高さや再治療例のそれをみても確実にWHOガイドラインに基づいた結核治療が遂行されているとは言いがたいのが現状である。

結論:
 不適切な治療がMDR-TBに最も影響を与える因子であると考えられる。結核について人々は知識を深め、早期発見と適切な治療が優先されるべきである。

by otowelt | 2012-06-21 16:35 | 抗酸菌感染症

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