喫煙は急性高山病の頻度を減らすかもしれない

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最近巷では登山が流行しているらしい。高山病のスタディはきわめて少ないので、貴重な報告だと思う。ちなみに、慢性高山病については最近CHESTから面白いスタディが出ており、以前ご紹介した。

慢性高山病における運動耐容能低下は肺間質への水分集積が関与

それにしてもこのスタディ、試験の内容も知らされずに電車に2日間揺られて移動という行程は精神的にもキツそうだ。

Tian-Yi Wu, et al.
Smoking, acute mountain sickness and altitude acclimatisation: a cohort study
Thorax Online First, published on June 14, 2012


背景:
 1970年代に喫煙が高山病のリスクを軽減させるのではないかという報告はあるものの(MacLean N. Smoking and acclimatisation to altitude. Br Med J 1979;2:799.)、実際のところ喫煙と急性高山病:acute mountain sickness (AMS)の関連についてはよくわかっていない。

目的:
 AMSのリスクと高度順応が喫煙とどう関連しているか検証する。

方法:
 200人の健康な非喫煙者と182人の喫煙者がハン族の低地労働者から選ばれた。被験者は高地曝露のない男性とし、年齢、健康状態、職業によってマッチされ、海抜4525メートルに運ばれた。2261メートルまで2日間かけて電車で移動しそこで2日間駐在、その後12時間かけて2808メートルまで移動し3日間駐在、最終的な目標値までバスで6時間~8時間かけて移動した。何の目的の試験かは告げられていない。
 AMS,喫煙習慣、SpO2、ヘモグロビン、呼吸機能、平均肺動脈圧(PAPm)が到着時、3か月後、6か月後に解析された。
 AMSはLake Louise Scoring (LLS)を使用した。

結果:
 非喫煙者に比べて喫煙者はAMSの頻度はひくく(LLS≧3: 45% vs 56%, χ2=4.57, p=0.039; LLS≧4: 39% vs 51%, χ2=5.53, p=0.013;LLS≧5: 3.4% vs 8.5%, χ2=4.56, p=0.038)、AMSスコアも到着時には低かった((1.6±0.6 vs 1.8±0.7, p=0.004).)。1週間時点においてもこのスコアは低いままであった(1.4±0.8 vs 1.6±0.5, p=0.005)。
 肺活量は4525メートル到着時、いずれの群もVCはやや低い傾向があった。非喫煙者群は3か月後、6か月後にこれがもとに戻ったが、喫煙者では戻らなかった。
 SpO2は到着時、いずれも低かった(非喫煙者:83±6%, 喫煙者: 83±5%, p=0.001 vs low altitude, no difference between groups, p=0.164)。高地で生活するうちに、喫煙者は非喫煙者よりも低いSpO2を記録するようになった(3 months: 85±5% vs86±6%, p=0.004; 6 months: 85±6% vs 86±6%, p=0.002)。
 高いヘモグロビン、平均肺動脈圧は、3か月後、6か月後のSpO2低下と関連していた。

limitations:
 ・呼気CO、NOの測定ができていないこと
 ・血液ガス分析やCOHb濃度計測ができていないこと
 ・喫煙そのものがAMS症状を軽減することもありうるため、一概に喫煙がAMSの頻度を減らしたかどうかまでは検証できていないこと

結論:
 喫煙は急性高山病のリスクをやや低下させるが、長期の高地順応と呼吸機能を障害する。このスタディは、高山病予防のために喫煙を推奨するものではない。

by otowelt | 2012-06-21 17:24 | 呼吸器その他

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