研修医は、インフルエンザ様症状があっても病院へ出勤する

e0156318_16105326.jpg 日米における”研修医”の意味は少々異なるが、この論文は医療界に大きな警鐘を鳴らしている。実のところ、たとえ高熱でインフルエンザ様症状があっても、日本の多くの研修医も出勤しているのが現状である。この51%というアメリカの報告、果たして日本では一体どのくらいだろうか?
 これは研修医に限ったことではなく、多くの医師は熱があっても出勤した経験があるだろう。出勤する理由は、バックアップ体制が不足していたり、あるいはバックアップを他の医師に頼めるような簡単な患者さんではないことがあるからだ。そのため、患者さんに感染させるリスクを承知の上で、医師は体にムチを打って出勤する。極度に人手不足の過疎地では、物理的に休むことが許されない病院もありうる。

Anupam B. Jena, et al.
Why Physicians Work When Sick
Arch Intern Med. 2012 ONLINE FIRST


方法:
 2010年のアメリカ内科学会イリノイ地方会に出席した研修医150人を対象に、無記名による紙ベースのアンケートを実施した。「前年度の研修中にインフルエンザ様症状がある状態で勤務したかどうか」を質問し、またその勤務した理由についても回答を求めた。

結果:
 アンケートに答えた150人のうち77人(51%)が、1回以上勤務、3回以上勤務した研修医は全体の16%だった。1年目研修医と比較して、2年目研修医でその割合が高く(51% vs. 58%)、また男性に比べ女性の研修医で割合は高かった(48% vs. 56%)。統計学的に有意差はみられなかった。
 そのインフルエンザ様症状がある状態で、それを患者に感染させてしまったと思うかを質問すると、14人(9%)がその可能性があると回答した。
 なぜそのような状態で勤務したのかどうか理由を聞くと、
 1.同僚へ負担をかけたくなかった:44人(57%)
 2.患者に対する責任感:43人(56%)
 3.同僚に負い目を感じ、それがプレッシャーになる:6人(8%)
 4.同僚から病弱と思われることへの不安:9人(12%)
 特に、4番目の病弱と思われることを不安に思うという理由は、女性の研修医で高い傾向にあった(7% vs. 18%)。
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コメント:
 研修医のこういった病気時に出勤する習慣は、若手医師のプロフェッショナルとしての自覚の形成に大きな疑問を投げかけるものである。患者や同僚に対する責任感や重圧のため、やむなく出勤せざるを得ない可能性があるだけでなく、患者や同僚に感染させるのではないかという懸念との葛藤も浮き彫りとなった。病気になったときの欠勤が、患者に安全な医療を提供するために必要なものであることを指導する必要性がある。

by otowelt | 2012-06-24 16:16 | 内科一般

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