タンザニアにおいて結核菌血症の死亡率は50%

タンザニアにおいて結核菌血症の死亡率は50%_e0156318_15495565.jpg 粟粒結核の症例などの重症結核では抗酸菌専用の血液培養ボトルを使用することがしばしばあるが、結核を診療しない病院では抗酸菌の血液培養自体があまり知られていない。
 AIDSの蔓延する地域では、リンパ球が少ないため重症結核患者も非常に多い。


 
John A. Crump, et al.
Bacteremic Disseminated Tuberculosis in Sub-Saharan Africa: A Prospective Cohort Study
Clin Infect Dis. (2012) 55 (2): 242-250.


背景:
 播種性結核は、結核発症率の高いHIVが蔓延する地域において主要な健康的問題である。タンザニアなどのサハラ以南のアフリカにおいて、播種性結核患者のアウトカムについてはほとんどわかっていない。

方法:
 われわれは、2006年3月10日から2010年8月28日までの間、タンザニアのモシ(キリマンジャロ地方)において連続した13歳以上の発熱(口腔温38℃以上)入院患者を登録し、Mycobacterium tuberculosis菌血症(bioMérieux, Durham, North Carolina)の患者を12か月までフォローアップした。生存、菌血症化した播種性結核、死亡予測因子が解析された。患者には、抗レトロウイルス治療(ART)と結核治療がほどこされた。

結果:
 508人の登録患者のうち、29人(5.7%)においてM. tuberculosisが血液培養で陽性となった。25人が臨床データがすべて参照可能であった。すべての参加者の年齢中央値は37.4歳(range, 13.6–104.8 years)であった。1ヶ月を超えて咳が続くこと(OR, 13.5; P < .001), 1ヶ月を超えて発熱が続くこと(OR, 7.8; P = .001)、10%を超える体重減少(OR, 10.0; P = .001), リンパ節腫大(OR 6.8; P = .002), HIV感染(OR, undefined; P < .001), CD4数および総リンパ球の減少は、播種性結核に有意に関連していた。播種性結核患者の50%が登録36日以内に死亡した。
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 CD4数の減少(OR, 0.88; P = .049)と総リンパ球数の減少(OR, 0.76; P = .050)は死亡に関連していた。抗酸菌血症のmagnitudeは、CD4が少ない患者においてよくみられたが、死亡を予測するものではなかった。

limitations:
 ・血液培養陽性の播種性結核患者の絶対数が少ないため、解析の信頼性が落ちる
 ・肺結核患者との比較や薬剤耐性結核などの考察ができなかったため、スタディを再度考案中である

結論:
 タンザニアにおいて播種性結核患者の半数が入院1ヶ月で死亡している。免疫抑制状態は死亡と有意に相関していた。HIVおよび結核、播種性疾患の早期診断と治療が重要である。
by otowelt | 2012-07-04 15:51 | 抗酸菌感染症

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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