エホバの証人に対する心臓外科手術に不利益はみられず

 医師をやっていると必ず一度はエホバの証人の患者さんに出会うことがあると思う。ものみの塔協会が無輸血治療に言及する際に、引用する文献は1993年の論文であるが、
Kitchens CS. Are transfusions overrated? Surgical outcome of Jehovah's Witnesses. Am J Med 1993;94:117-119
 時間の都合で論文全文を詳しく読んではいないが、おそらく今後は今回のデータを引用していくことになると思われる。ただ、これはいわゆる予定手術での解析結果であるので、よくニュースで問題になる緊急手術や交通外傷などとは異なる。

Gregory Pattakos, et al.
Outcome of Patients Who Refuse Transfusion After Cardiac SurgeryA Natural Experiment With Severe Blood Conservation
Arch Intern Med. 2012;():1-7. doi:10.1001/archinternmed.2012.2449


目的:
 Cleveland Clinicにおいて心臓手術を受けたエホバの証人信者Jehovah’s Witness patients (Witnesses)の心筋梗塞や出血による再手術などの術後合併症を検証する。

方法:
 1983年1月1日から2011年1月1日までの間、非エホバの証人である87453人、エホバの証人である322人の心臓外科手術を受けた患者を本試験に登録。propensity scoreマッチング法によって、心臓手術を受けたエホバの信者群と輸血が行われた非エホバの信者群の術後合併症および長期予後を検討した。
 年齢、BMI、NYHA重症度、心機能、高血圧・糖尿病既往歴とマッチングし、解析をおこなった。

結果:
 解析の結果、入院中の死亡、脳卒中、心房細動、腎障害発現率は両患者群で差はみられなかった。
 術後の心筋梗塞、人工呼吸器装着期間の長期化、出血による再手術はエホバの信者群で有意に低い結果であった[myocardial infarction, 0.31% vs 2.8%(P=.01); additional operation for bleeding, 3.7% vs 7.1%(P=.03); prolonged ventilation, 6% vs 16% (P<.001);intensive care unit length of stay (15th, 50th, and 85th percentiles)]。
 また、1年生存率はエホバの証人群で有意に高く(95%; 95%CI, 93%-96%; vs 89%; 95% CI, 87%-90%; P=.007)、20年生存率は同等であった(34%; 95% CI, 31%-38%; vs 32% 95% CI, 28%-35%; P=.90)。

結論:
 心臓外科手術においてエホバの証人は、輸血をおこなう通常の患者と比べて術後合併症や生存に差はみられない。

by otowelt | 2012-07-06 11:18 | 内科一般

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