血清クレアチニンとシスタチンCによる複合GFR推定式は、より正確である

血清クレアチニンとシスタチンCによる複合GFR推定式は、より正確である_e0156318_17231312.jpg先日の腎臓学会においてCKD重症度分類が改訂されたことは周知のこと(実臨床やマネジメントにおいて大きな改訂ではなかった)だが、GFRの推定にCre-シスタチンC複合推定のほうが妥当性が増すという報告がNEJMよりなされた。
 シスタチンCはCreに比べて腎機能低下の影響を早期から受けやすい。そのため、抗菌薬や抗癌剤でも有益に使用できる可能性があるのだが、呼吸器内科医という診療特性上、個人的にはコントロール不良の糖尿病患者でたまに測定するくらいしか使用したことがない。

Lesley A. Inker, et al.
Estimating Glomerular Filtration Rate from Serum Creatinine and Cystatin C
N Engl J Med 2012; 367:20-29


背景:
 血清Creによる糸球体濾過量(GFR)の推定は、日常診療においてよく用いられている。しかしながら、この推定は実際には不正確であり、慢性腎臓疾患の過剰な診断をきたすおそれがあるとされている。
 Cystatin C(シスタチン C)は、GFRの予測において血清Creに代替可能なマーカーである。

方法:
 合計13研究の5352人から構成される患者集団で横断的解析によってシスタチンCに基づく推定式およびシスタチン Cと血清Creを組み合わせた推定式を作成。その後、GFRが測定されていた5研究1119人で、これらの予測推定式の妥当性を検証。
 シスタチンCと血清Cre測定法は、一次標準物質にトレース可能であった。

結果:
 実際に測定されたGFR 平均値は、development data setsで68 mL/min/1.73 m2、validation data setsで70 mL/min/1.73 m2だった。validation data setsにおいて、Cre-シスタチンC推定式は、Cre推定式およびシスタチンC推定式よりも有意に優れていた。3推定式におけるそれぞれの偏りは同程度であり、実際のGFRと推定GFRの差の中央値は、Cre-シスタチンCの複合推定式で3.9 mL/min/1.73 m2であったのに対して、Cre推定式では 3.7 mL/min/1.73 m2(P=0.07)、シスタチンC推定式で3.4 mL/min/1.73 m2(P=0.05)だった。
 Cre-シスタチン複合推定式において、推定精度が向上した(interquartile range of the difference, 13.4 vs. 15.4 and 16.4 ml per minute per 1.73 m2, respectively [P=0.001 and P<0.001])。Cre推定GFRが45~74 mL/min/1.73 m2であった被験者で、複合推定式によって実際のGFRの<60 mL/min/1.73 m2 または≧60 mL/min/1.73 m2の分類が改善(net reclassification index, 19.4% [P<0.001])。推定GFRが 45~59 mL/min/1.73 m2の被験者の16.9%が、GFR≧60mL/min/1.73m2に正確に再度分類されることとなった。

結論:
 血清Cre-シスタチンC複合のGFR推定式は、これら単独によるGFR推定式よりも優れていた。
by otowelt | 2012-07-08 17:41 | 内科一般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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