犬との接触は、赤ちゃんにとってむしろ健康的である可能性
2012年 07月 10日
海外の呼吸器内科のツイッターで話題になっていたので少し読んでみた。
エコアンやカーペットなどの広告をみていると、今の風潮は無菌的な環境が子供に望ましいという感じだが、何でもかんでもクリーンにすればいいというものではなさそうだ。
Eija Bergroth, et al.
Respiratory Tract Illnesses During the First Year of Life: Effect of Dog and Cat Contacts
Pediatrics, Published online July 9, 2012(doi: 10.1542/peds.2011-2825)
目的:
生まれた赤ん坊の最初の年に、犬や猫に接触することと気道症状や感染との関連性・効果を検証するものである。
方法:
フィンランドにおいて2002年9月から2005年5月まで397人の小児を妊娠期から出生1年目まで観察した研究で、呼吸器症状や感染の情報に加えて猫や犬との接触についてウィークリーダイアリーと1年時のアンケートに答えてもらい関連性を調査した。
結果:
多変量解析において、犬を自宅で飼っている場合は犬を飼っていない場合と比較してより健康的な赤ん坊であった(気道症症状や感染症)(補正OR 1.31; 95%CI: 1.13–1.52)。さらに、犬を飼っている場合には耳感染症(中耳炎のことだろう)が少なく(補正OR: 0.56; 95% CI: 0.38–0.81)、抗菌薬投与必要性も少ない傾向にあった(補正OR: 0.71; 95% CI: 0.52–0.96)。
単変量解析においては、犬と猫との接触の1週あたりの時間および年間平均の接触時間は、気道感染合併を減少させた。犬、猫ともに1日6時間未満のリビング駐留が最も気道症状を軽減させるものであった。
ディスカッション:
この試験においては、犬と猫の接触と比較して、犬単独の接触は有意な呼吸器症状軽減をもたらした。これはHatakkaらの研究(Scand J Infect Dis. 2010;42(9):704–711)結果を支持するものであり、hatakkaらは1~6歳児童において、急性気道症状の再発を動物が防いだという結果を報告している。また、Grüberらは2歳になるまでの赤ん坊と一緒に犬を飼うことで風邪(common cold)を減少させたと報告している(Pediatr Allergy Immunol. 2008;19(6):505–512)。一方で、動物との接触は有意な気道症状の利益をもたらさないという否定的な報告もある(Arch Environ Health. 2000;55(5):300–303)。
本試験結果では、6時間未満の短時間家にあがる犬がいる場合にもっとも気道症状の軽減に効果的であったが、この理由として以下のように考えられる。短い時間家にあがるということは、多くは外で過ごす犬である。そういった犬が家にあがることで、外のよごれが家の中に持ち込まれる。このよごれの量が今回の結果につながったのではないか。すなわち、赤ちゃんの時期によごれに曝露されることが、免疫を助長させる上でよい結果につながったのかもしれない。しかしながら、赤ちゃんの免疫そのものを客観的に観察したわけではないため、これはあくまで一仮説にすぎない。
結論:
これらの結果は、出生1年までの間に犬との接触することが気道感染に予防的にはたらくことが示唆される。
エコアンやカーペットなどの広告をみていると、今の風潮は無菌的な環境が子供に望ましいという感じだが、何でもかんでもクリーンにすればいいというものではなさそうだ。
Eija Bergroth, et al.
Respiratory Tract Illnesses During the First Year of Life: Effect of Dog and Cat Contacts
Pediatrics, Published online July 9, 2012(doi: 10.1542/peds.2011-2825)
目的:
生まれた赤ん坊の最初の年に、犬や猫に接触することと気道症状や感染との関連性・効果を検証するものである。
方法:
フィンランドにおいて2002年9月から2005年5月まで397人の小児を妊娠期から出生1年目まで観察した研究で、呼吸器症状や感染の情報に加えて猫や犬との接触についてウィークリーダイアリーと1年時のアンケートに答えてもらい関連性を調査した。
結果:
多変量解析において、犬を自宅で飼っている場合は犬を飼っていない場合と比較してより健康的な赤ん坊であった(気道症症状や感染症)(補正OR 1.31; 95%CI: 1.13–1.52)。さらに、犬を飼っている場合には耳感染症(中耳炎のことだろう)が少なく(補正OR: 0.56; 95% CI: 0.38–0.81)、抗菌薬投与必要性も少ない傾向にあった(補正OR: 0.71; 95% CI: 0.52–0.96)。
単変量解析においては、犬と猫との接触の1週あたりの時間および年間平均の接触時間は、気道感染合併を減少させた。犬、猫ともに1日6時間未満のリビング駐留が最も気道症状を軽減させるものであった。
ディスカッション:
この試験においては、犬と猫の接触と比較して、犬単独の接触は有意な呼吸器症状軽減をもたらした。これはHatakkaらの研究(Scand J Infect Dis. 2010;42(9):704–711)結果を支持するものであり、hatakkaらは1~6歳児童において、急性気道症状の再発を動物が防いだという結果を報告している。また、Grüberらは2歳になるまでの赤ん坊と一緒に犬を飼うことで風邪(common cold)を減少させたと報告している(Pediatr Allergy Immunol. 2008;19(6):505–512)。一方で、動物との接触は有意な気道症状の利益をもたらさないという否定的な報告もある(Arch Environ Health. 2000;55(5):300–303)。
本試験結果では、6時間未満の短時間家にあがる犬がいる場合にもっとも気道症状の軽減に効果的であったが、この理由として以下のように考えられる。短い時間家にあがるということは、多くは外で過ごす犬である。そういった犬が家にあがることで、外のよごれが家の中に持ち込まれる。このよごれの量が今回の結果につながったのではないか。すなわち、赤ちゃんの時期によごれに曝露されることが、免疫を助長させる上でよい結果につながったのかもしれない。しかしながら、赤ちゃんの免疫そのものを客観的に観察したわけではないため、これはあくまで一仮説にすぎない。
結論:
これらの結果は、出生1年までの間に犬との接触することが気道感染に予防的にはたらくことが示唆される。
by otowelt
| 2012-07-10 05:22
| 感染症全般