肺炎球菌性化膿性筋炎

e0156318_11284958.jpg肺炎球菌性化膿性筋炎の話題。

Rebecca J. Zadroga, et al.
Pneumococcal Pyomyositis: Report of 2 Cases and Review of the Literature
Clin Infect Dis. (2012) doi: 10.1093/cid/cis424


背景:
 Staphylococcus aureus, Streptococcus pyogenesなどは化膿性筋炎の最たる病原微生物であるが、Streptococcus pneumoniaeは、pyomyositis:化膿性筋炎の原因としてはまれである。1972年に報告されてから(Journal of neurosurgery 1977; 47:755–60.)、いくつか成人および小児での報告はみられるものの、この肺炎球菌性化膿性筋炎が、宿主の免疫ステータスによって臨床的表現型が異なるのかどうか定かではない。

方法:
 われわれは2人の肺炎球菌性化膿性筋炎患者を報告し、これまでの全症例のレビューをおこなうことで、健常者とリスク宿主との間の臨床的特性を比較した。

症例1
 47歳のAfrican Americanの男性は、4週間続く左肩の鈍痛を自覚していた。彼は20年前にHodgkin lymphomaと診断され、マントル照射と脾摘を受けている。入院4か月前に肺炎球菌ワクチンを接種していたものの、S. pneumoniae type 19Aの菌血症を伴う肺炎と診断された。抗菌薬治療によって軽快したものの、悪性リンパ腫が再発した。その後R-CHOPを施行し、化学療法中に自己免疫性溶血性貧血を発症。化学療法は断念し、高用量のステロイド治療に切り替えられた。入院4週間前に左肩の疼痛が悪化、この前に何度か同様の主訴で診察されているものの、発熱もなく身体所見も特に異常はみられなかった。CTガイド下生検によって、筋肉内にS. pneumoniae type 19Aの膿瘍が同定された。診断後、cephalexin 1g1日3回経口投与を6週間続けた。その後再発なく経過している。

症例2
 妄想型統合失調症、アルコール依存症、HCV感染症(未治療:HCV load, 3780000copies/mL)のある52歳のホームレス男性が発熱と右膝の腫脹を主訴に来院。彼は11日前に膝に鈍的外傷を受けており、その頃から膝が腫れているとのことであった。38.8℃で白血球は17800/mm3であった。膝関節液からS. pneumoniaeが検出された。血液培養は陰性であった。右膝周囲から皮下組織・筋肉にかけて広範囲に膿瘍がみられ、これらからもS. pneumoniaeが検出された。彼は外科的ドレナージを要し、ceftriaxone 1g1日1回点滴静注を2週間続け、その後1週間のモキシフロキサシン経口投与をおこなった。治療後、コンタクトがとれなくなった。

結果:
 合計35症例の肺炎球菌性化膿性筋炎が報告されており、11人は生来健康であった患者、24人がリスク因子を持つ患者であった。リスクは、Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP)に基づいて以下の因子を含むものとした:65歳以上あるいは2歳未満、慢性心疾患、慢性肺疾患、糖尿病、髄液ろう、人工内耳、アルコール依存、慢性肝疾患、喫煙者、鎌状赤血球症およびヘモグロビン症、無脾、HIV感染症、慢性腎疾患、白血病、悪性リンパ腫、悪性疾患、免疫抑制剤使用(ステロイド含)、臓器移植患者、多発性骨髄腫。
 患者の3分の2が、先行する気道症状あるいは髄膜炎を有していた。リスク宿主は、筋感染症状の発生とその診断に長いインターバルをもつ傾向にあり、症状顕在化時に播種性であるリスクが有意に高かった。リスク因子のある患者のうち79%がドレナージを受けていたが、これは生来健康であった患者でも同等の比率であった。病態が複雑となった患者の頻度は有意にリスクのある患者群で多かった(p=0.04)(これは、死亡、臓器不全、続発性感染症、複数のデブリードマン、遷延するdeformity(機能不全、変形)と定義)。
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結論:
 1人の死亡を除くと、抗菌薬および外科的治療によって総じて生存予後は良好であった。しかしながら、リスクのある患者においては症状が複雑になることを予測しておく必要がある。

by otowelt | 2012-07-17 06:58 | 感染症全般

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