肺結節影についての医師の説明が患者に与えるストレス

e0156318_17553353.jpg論文としては非常に珍しいタイプのものである。
研修医時代、私が恩師から学んだことがある。「患者さんはそのとき分かっているような素振りだったとしても、説明が終わればほとんど頭に残っていないことが多い。だから、何度も何度も説明するか、わかりやすい手紙を書いてあげるかして差し上げなさい。
たしかに患者さんに平易な言語で書いた手紙を渡すと、ラポールの構築にもすごく良い。

Renda Soylemez Wiener, et al.
“What do you mean, a spot?”: A qualitative analysis of patients’ reactions to discussions with their doctors about pulmonary nodules
CHEST. 2012 doi: 10.1378/chest.12-1095


背景:
 実に15万人以上のアメリカ人が1年間に肺結節影を指摘されている。肺結節影についての患者-医師間のコミュニケーションというテーマは実に興味深い。ほとんどが良性で時に悪性のものもあるが、癌を確実に否定するには2-3年は要するかもしれない。われわれは、肺結節影の説明者とのコミュニケーションによる患者認知の特徴を検証した。

方法:
 われわれは不確定的な肺結節影を有する2施設(Boston Medical Center、Dartmouth-Hitchcock Medical Center)4グループ22人の成人において本試験をおこなった。交信記録はgrounded theoryの原則によって解析された。
 参加者には2時間のディスカッションの場に来ていただいており、40ドルのギフトカードを進呈している。

結果:
 患者は53人の異なる説明者と肺結節影について会話をおこなった。ほとんどすべての患者が即座に結節影が癌について言及しているものだと感じた。幾人かの患者は、説明者が実際の癌リスクや結節影をどのように評価するかについて議論していないと感じており、それが混乱や苦悩を何ヶ月にもわたって与えていた。
 ”――私の腎臓内科の主治医は私に「ああ、ところであなたの肺に腫瘍がみつかったんだ」といいました。彼らでさえまだそれが何なのかはわかっていないようでしたが、ただそう言い放っただけで私は非常にショックでした。クリスマスの間ずっと大泣きしていましたよ。(患者13)”

 多くの患者が、癌のリスクについてある程度定量的に言及してほしいと考えており(たとえば5~10%程度とか)、定量的でなくても”らしいか”、”らしくないか”を評価してほしいと感じていた。
 “――何も隠さないでほしい。・・・真実を伝えてほしいし、何を話しているのか私に分かるように説明してほしい。(患者9)”

 患者が、癌やサーベイランスの潜在的な副反応効果について心配していることについて説明者が関心を寄せない場合には非常に不満を覚えた(すなわち、長期間にわたって癌かどうかはっきりしないという時期が続くことや、何度も検査をすることによる被曝などについて)。それがひいてはアドヒアランス低下を招いていた。
 医師が一般用語を用いたり、CT写真を見せたり、癌のリスクについて推し量ってくれるような場合には、患者はそれが自分にとって助けになると感じていたが、その一方で医学専門用語や否定的な言葉を用いられることを腹立たしく思っていた。”結節影”のような専門用語や”カゲがある”、”斑状のものがある”といった遠まわしな言い方で混乱を招くこともあるし、議論を避けるような行為は好ましくない。
 ”――本当に何も説明してくれなかったです、全然。ただ、”肺のここに結節影がある、ということがわかりました。6ヶ月後にまた来てもらえればいいですよ”とだけ。そこで私が、”この結節影について私は何を想定すればようのでしょう?息ができなくなったりとか、痛みが出たりとか、身体に不具合が出たりとか、そういうことも想定しておく必要があるのでしょうか?”と聞いてみましたが、答えは返ってきませんでした。(患者12)”

 癌について全く言及しなかったという患者も複数いたが、それを望ましいと思っていたのは1人のみであった。

 どういう風に検査を進めていくのかを具体的に説明してくれる場合には、患者には好ましい態度としてうつったようだ。
 “――わたしは、こう言われました。肺にあるこの結節影がもし癌だとしても、検査するには小さすぎるし・・・・、だから6ヵ月後に再度来院してほしい。もしそこで大きくなっていれば、検査をすすめたり切除したりという方法がとれる。もし大きくなっていなかったら、セカンドオピニオンをすすめることができるし、あるいは6ヶ月後に同じようにまた来院してもらうという形でもいい、と。(患者7)”

結論:
 患者は肺結節について説明を受けたとき、癌だと想定することが多い。癌のリスクや、結節影をどう評価していくかという計画について言及することが、患者の認知にやストレスに強く影響するものと考えられる。

by otowelt | 2012-08-12 18:03 | 肺癌・その他腫瘍

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