Cryptococcus gattii感染症の臨床的特徴

C.gattiiは主に温暖な樹木から感染すると考えられている。以前、アメリカからの報告を紹介した。
Cryptococcus gattiiのアウトブレイク株における臨床的特徴

Sharon C-A. Chen, et al.
Clinical Manifestations of Cryptococcus gattii Infection: Determinants of Neurological Sequelae and Death
Clin Infect Dis. (2012) 55 (6): 789-798.


背景:
 Cryptococcus gattii感染症の長期的な罹患率やアウトカムについてはわかっていない。われわれは、オーストラリア人患者における12ヶ月の臨床的データ、微生物学的データ、アウトカムデータを予後規定因子を同定するために収集した。

方法:
 培養で同定されたC. gattiiの症例を2000年から2007年までレトロスペクティブに評価した。臨床的データ、微生物学的データ、放射線学的データ、アウトカムデータが診断時、6週後、6ヵ月後、12ヶ月後に記録された。死亡率および死亡転帰、あるいは神経学的後遺症に関連する臨床的および検査数値も同定した。

結果:
 年間のC. gattii感染は、100万人人口あたり0.61 であった。86人中62人(72%)の患者は免疫抑制状態ではなかった。24人の免疫抑制宿主のうち6人に特発性CD4リンパ球減少があり、1人はHIV感染症/AIDSであった。同感染症における臨床的および微生物学的特性は、免疫抑制の有無に関わらず同等であった。肺から同定されたもの、肺および中枢神経系から同定されたもの、中枢神経系のみから同定されたものは、それぞれ12%、51%、34%であった。中枢神経系の合併症としては、頭蓋内圧亢進(42%)、水頭症(30%)、神経障害(27%; 6%は治療中に発症)、免疫再構築様症候群(11%)であった。
 血清クリプトコッカス抗原の相乗平均(CRAG)価は、中枢神経系に病変が及んだ患者において563.9であり、肺から感染が同定された患者の149.3よりも高かった。免疫抑制宿主であった患者は、死亡リスクが高かった。初期の髄液CRAGタイター256以上は、死亡あるいは神経学的後遺症を予測した。

結論:
 神経系のC. gattii感染は、髄液中クリプトコッカス抗原タイターの上昇が顕著であり、512以上の場合には注意すべきである。後期の神経学的合併症を同定するためには、長期間のフォローアップが必要である。免疫抑制患者では生存の可能性が低くなるため、免疫システムの評価が肝要である。
by otowelt | 2012-08-27 00:56 | 感染症全般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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