ラクナ梗塞の二次予防に対して、アスピリンにクロピドグレルを併用すると出血と死亡リスクが上昇

The SPS3 Investigators
Effects of Clopidogrel Added to Aspirin in Patients with Recent Lacunar Stroke
N Engl J Med 2012; 367:817-825


背景:
 ラクナ梗塞は、主に脳小血管病変に由来する頻度の高い脳卒中の一つである。ラクナ梗塞の二次予防のための、抗血小板療法の有効性については明らかになっていない。

方法:
 頭部MRIで、症候性ラクナ梗塞を最近(180日以内)発症したことが確認された30歳以上の患者3020人を対象にして、二重盲検多施設共同試験を施行した。北米、南米、スペインにおける82施設で実施した(2003年から2011年まで)。
 患者は、クロピドグレル75mg/day投与群とプラセボ投与群にランダムに割り付けられた。両群にアスピリン325mg/dayも投与した。プライマリアウトカムは、脳梗塞と頭蓋内出血を含んだすべての脳卒中の再発とした。

結果:
 北米からの参加者は全体のうち1960人(65%)で、南米は694人(23%)、スペインは366人(12%)であった。全体の平均年齢は63歳で、63%が男性であった。75%の患者に高血圧の既往があり、37%に糖尿病の既往があった。20%が喫煙者であった。3.4年の平均追跡期間ののち、脳卒中の再発リスクは、アスピリンとクロピドグレルの併用群で125件(年間発生率2.5%)、アスピリン単独群で138件(年間発生率 2.7%)と有意な差はみられなかった(HR0.92,95%CI 0.72~1.16)。脳梗塞の再発リスク(HR0.82,95% CI 0.63~1.09)および、後遺症を残す脳卒中または致死的脳卒中(HR1.06,95% CI 0.69~1.64)にも有意な差はなかった。 重篤な出血リスクは、2剤併用群で105件(年間発生率 2.1%)、アスピリン単独群で56件(年間発生率 1.1%)と大きく差が出た(ほぼ2倍)(HR1.97,95% CI 1.41~2.71,P<0.001)。全死因死亡は、2剤併用群の患者で増加した(アスピリン単独群77人 vs 2剤併用群113人)(HR1.52,95% CI 1.14~2.04,P=0.004)。ただ、この差は致死的な出血では説明されない増加であった。結論:
 直近にラクナ梗塞を発症した患者で、アスピリンにクロピドグレルを併用した場合、脳卒中の再発リスクを減少させることができないだけでなく、出血と死亡のリスクが有意に増加した。
by otowelt | 2012-08-30 15:58 | 内科一般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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