診断時に悪性胸水を合併した肺腺癌は予後不良

 初期から悪性胸水がある患者の方が予後が悪いというデータです。多変量解析的な結論も交わっておりますので、胸水合併が多いと生存予後が不良なのにも関わらず、胸水貯留例ではEGFR遺伝子変異が陽性になりやすい(予後良好因子)という交錯的な内容になっています。
 胸水合併例の肺癌では予後不良であることは知られていましたが(Anticancer Res 1997; 17: 4743-4746.、Clin Cancer Res 1997;3: 47-50.)、それがいつ貯留したものかというスタディはこれが初めてです。

Shang-Gin Wu, et al.
Survival of lung adenocarcinoma patients with malignant pleural effusion
ERJ, 2012 erj00698-2012, Published online before print


背景:
 標的治療が進んだ昨今、肺腺癌患者の生存と悪性胸水の合併との関連についてはよくわかっていない。

目的:
 この試験は、悪性胸水のある肺腺癌患者における臨床的特徴、生存期間、EGFR遺伝子変異を調べたものである。

方法:
 2005年6月から2010年12月までの間、National Taiwan University Hospitalにおいて連続した胸水患者をレトロスペクティブに集めた。患者の臨床的特徴、EGFR遺伝子変異、全生存期間(OS)が解析された。

結果:
 合計1400人の胸水患者のうち、890人が悪性胸水と診断された。我々は、全データが集められた448人のstage IVの肺腺癌患者を登録した。365人(81.5%)が初期診断時に悪性胸水を指摘され、83人(18.5%)がのちに胸水増悪をきたした。全体のうち、224人(59.8%)が女性で、329人(73.4%)が非喫煙者であった。悪性胸水が初期に診断された患者は高齢で(p= 0.002)、PSが不良の傾向にあった(p< 0.001)。OS中央値は、初回診断時に悪性胸水のある患者では14.3ヶ月、のちに増悪出現した患者では21.4ヶ月であった(p=0.001)。
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 EGFR遺伝子変異は296人の患者(66.1%)で確認された。初期診断時に悪性胸水のある患者間でのEGFR遺伝子変異率はのちに増悪出現した患者よりも高かった(68.2% vs 56.6%, p=0.044)。L858R変異が、前者において有意に多かった(32.6% vs. 18.1%; p=0.009)。多変量解析では、のちに悪性胸水が増悪出現した患者、EGFR遺伝子変異陽性患者、EGFR-TKI治療を受けた患者はOSを延長した。

limitations:
 ・台湾人しか登録されていないこと
 ・EGFR遺伝子変異がルーチンに測定されているわけではなく、また陽性であるからといってEGFR-TKIを使用していないこと

結論:
 初期診断時に悪性胸水を合併したstage IVの肺腺癌患者は、のちに悪性胸水が増悪出現した患者と比較すると、生存期間が短く、EGFR遺伝子変異、特にL858Rが陽性となりやすかった。

by otowelt | 2012-10-11 10:26 | 肺癌・その他腫瘍

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