転移性心臓腫瘍

昨日、転移性心臓腫瘍の患者さんがおられたので、少し調べてメモ書きにしてみました。心嚢水貯留があったり、心膜肥厚のある心外膜転移の患者さんは何人か診察したことがありますが、内側の転移性心臓腫瘍の患者さんは2人しか診たことがありません。

●概要
転移性心臓腫瘍は、癌患者の剖検例で7.1%(2.7-14%)、全剖検例の2.3%(0.7-3.5%)で発見されると報告されている。
Al-Mamgani A, et al. Cardiac metastases. Int J Clin Oncol 13: 369-372, 2008.
1960年の古い報告では、癌患者さんの18.3%にみられるという報告もある。
Hanfling SM. Metastatic cancer to the heart. Review of the literature and report of 127 cases. Circulation 1960;22:474–83.
転移性心臓腫瘍の原発巣として頻度が高い腫瘍は、肺癌、血液悪性腫瘍、乳癌、悪性黒色腫とされている。直接浸潤、リンパ行性転移、血行性転移のいずれもが心臓転移の経路として考えられている。原発性心臓腫瘍は男性のほうが多いとされているが、転移性心臓腫瘍は性差がみられない。また、64歳未満と85歳以上で分けた場合、若年のほうが心臓転移が多いとされている。
Bussani R, et al. Cardiac metastases. J Clin Pathol 60: 27-34, 2007.
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●症状
転移性心臓腫瘍の多くは無症状であり、生存中に診断されることは少ない。心臓の転移部位は、心外膜、心筋への転移が多く心内膜側への転移は少ないとされている。1998年の報告では、心膜19%、心外膜33%、心筋42%、心内膜6%という報告がある。基本的には心室に多く、右側に多い傾向がある。
Mukai K, et al. The incidence of secondary tuors of the heart and pericardium. Jpn J Clin Oncol 18: 195-201, 1998.
もっとも多くみられる症状は、心嚢水貯留による症状である。心嚢水は血性であることが一般的である。心室頻拍や心房細動・粗動が起こりうるが、刺激伝導系を障害した場合除脈性不整脈も起こりうるとされている。これらの早期発見には心電図の変化が最も重要である。
・Wolver S, Franklin RW, Abbate A. ST-segment elevation and new right-bundle
branch block: broadening the differential diagnosis. Int J Cardiol. 2007 Jan 8;114(2):247-8

・Cates CU, Virmani R, Vaughn WK, et al. Electrocardiographic markers of cardiac metastasis. Am Heart J 1986;112:1297–303.
まれではあるが、心筋梗塞で発症することもある。これは腫瘍塞栓であることもあれば、冠動脈に腫瘍が浸潤して物理的に閉塞することもある。

●治療
転移性心臓腫瘍は、どの癌であってもおそらく進行期であるため外科的な処置は困難である。心臓単独の転移であったとしてもこの病巣を外科的に切除することはきわめて困難であり心内膜側のみに転移した場合だけが手術適応になる。
Koizumi J, et al. Solitary cardiac metastasis of rectal adenocarcinoma. Jpn J Thorac Cardiovasc Surg 51:330-332, 2003.

by otowelt | 2012-10-17 11:28 | 肺癌・その他腫瘍

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