XDR-TBへの追加耐性はアウトカム不良と関連

 呼吸器内科医や感染症科医の若い先生は、結核症例をたくさん経験することが必要です。しかし、結核病棟がない病院で治療できるのは結核性胸膜炎の患者さんばかりですので、どうしても他の呼吸器内科医や感染症科医におくれをとってしまいます。若い時期は、頑張って結核患者さんを何人も経験しておくことをおすすめします。将来どこの病院に行っても、結核診療が役に立つことは間違いありません。
 耐性結核の論文を読むとき、セカンドラインとかグループ3とかいろいろなカテゴリーが出てくるので、ややこしいなぁと思ったことは結核診療をしている医師の誰しもが経験したことがあるかと思います。少しおさらいをしてみます。WHOが定めている結核薬のグループは以下の通りです。

●ファーストライン抗結核薬
 グループ1 – イソニアジド、リファンピシン、エサンブトール、ピラジナミド
 ※ストレプトマイシンはファーストラインから外されました。
●セカンドライン抗結核薬
 グループ2 - 注射製剤:カナマイシン、アミカシン、カプレオマイシン、ストレプトマイシン、エンビオマイシン
 グループ3 - フルオロキノロン:シプロフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、オフロキサシン
 グループ4 - 経口静菌性抗菌薬:エチオナミド、サイクロセリン、パラアミノサリチル酸(PAS)、プロチオナミド、テリザドン
●サードライン抗結核薬
 グループ5 – クロファジミン、リネゾリド、アモキシシリン/クラブラン酸、イミペネム/シラスタチン、チオアセタゾン、高用量イソニアジド、クラリスロマイシン
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 耐性結核は人が作り出したものです(man-made disease)。患者が服薬を忘れたり、不適切な結核治療を医師がおこなったか、のいずれかの産物であると言われています。XDR-TBの上にXXDR-TBなんて言葉も最近は出てきています。XXDR-TBは、ファーストラインとセカンドラインすべてに耐性の結核のことを指しますが、もうここまで来ると専門家に関係なく医学的に手出ししにくいのが現状です。
Migliori GB, et al.First tuberculosis cases in Italy resistant to all tested drugs. Euro Surveill 2007;12(5):E070517.1.

 前置きが長くなりましたが、ERJからXDR-TBの論文です。

G.B. Migliori, et al.
Drug resistance beyond XDR-TB: results from a large individual patient data meta-analysis
ERJ Published online before print October 11, 2012


背景:
 WHOのStop TB Partnershipは、多剤耐性結核(MDR-TB)に対して、セカンドライン抗結核薬であるカナマイシン、カプレオマイシン、フルオロキノロン、エチオナミド、サイクロセリン、PASなどの抗結核薬を使用してきた。MDR-TBのうち、主要セカンドライン6剤中3剤以上に耐性を示す結核を超多剤耐性結核(XDR-TB)と定義した。
 XDR-TBにさらなる耐性がみられる場合、患者アウトカムを悪化させるかどうかわかっていない。このスタディはXDR-TB患者の治療アウトカムを追加的耐性の有無によって比較することとした。

方法:
 XDR-TB患者アウトカムがメタアナリシスに組み込まれた。XDR-TB単独の場合、XDR+注射セカンドライン薬(カプレオマイシン、カナマイシン/アミカシン)2種類に耐性(XDR+2sli)、XDR+注射セカンドライン耐性(sli)+group 4(G4)が1剤以上耐性(たとえば、エチオナミド、サイクロセリン、PAS)(XDR+sliG4)、XDR+sli+G4+EBあるいはPZA耐性の群(XDR+sliG4EZ)に分けた。

結果:
 9898人のMDR-TB患者コホートのうち、405人がXDR-TBであった。そのうち、301人がXDR単独、68人がXDR+2sli、48人がXDR+sliG4、42人がXDR+sliG4EZであった。HIV共感染は多くなかった。
 治療成功率はXDR単独(43%)、他のXDR-TBではXDR+2sliが30%, XDR+sliG4が34%,XDR+sliG4EZが14%であった。
 多変量解析において、治療成功のオッズ比はXDR単独と比較するとXDR+2sliで有意に低かった(補正OR: 0.4; 95%CI 0.2-0.8)。一方で治療失敗+死亡のオッズ比はXDR患者すべてにおいて高く、追加的耐性はそのリスクを上昇させた(補正OR range: 2.6-2.8)。
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結論:
 XDR-TBに追加的耐性のある患者はよりアウトカム不良と関連していた。


 私もMDR-TBを豊富に経験しているわけではありませんが、MDR-TB治療の根幹は、ファーストライン、フルオロキノロン、注射製剤(アミカシン、ストレプトマイシン、カナマイシン)の3種類がまず使えることが重要になります。XDR-TBなどの場合や、これらが医学的理由で全てが使用できない場合、経口セカンドラインであるサイクロセリン、エチオナミド、PASが追加候補として選ばれます。この段階で合計4剤以上導入されていることが望ましいとされています。プロチオナミドやテリザドンといったセカンドラインは日本では使用されていません。これらではレジメン構築ができない場合、サードライン治療薬が導入されます。すなわち、クロファジミン、リネゾリド、アモキシシリン/クラブラン酸、イミペネム、クラリスロマイシンといった薬剤です。サードラインの中では結核に対してはリネゾリドが世界的にも使用頻度が多いと思います。
 International Standards for Tuberculosis Care (ISTC)が教育しているものが若手医師にはわかりやすい戦略だと思います。
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by otowelt | 2012-10-23 06:52 | 抗酸菌感染症

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